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中村留、自社展に881人

 中村留精密工業は8月23日からの3日間、本社でプライベートショー「負担を削る展」を開催した。ユーザーの負荷軽減につながる複合加工機やソフトウェアのほか、7月に竣工した第13工場「MAGI」を披露。想定していた600人を大きく上回る881人が来場した。 MAGIの由来は新約聖書に登場する東方の3賢者で、名前の通り既設の11・12工場と三位一体で連携する。建屋は2階建てで、内部で11・12工場とつながっている。この3棟で、工作機械のユニット製作から最終組み立てまでを一気通貫で行う。生産能力は従来比35%向上し、月100台強の生産台数は200台へ高まる見込みだ。 同社では従来、主軸やタレットなどの各ユニットを7・8工場で組み、11.12工場へ運んでベッドに組み付けていた。しかし組み付け後の調整が長引き、ベッドはスペースも取るため生産のボトルネックになっていたという。新工場の完成を機に、ユニット同士を組み合わせて精度を出した後、ベッドへ組み付ける生産方式に変更する。ある機種では最終組み立てが3日から1日に縮まる効果が出ている。1・2階を貫く自動倉庫やAGVも導入し、完成したユニットの搬送や部品供給を夜間に無人で行うことで作業者が動き回る必要のない仕組みも構築する。 製品ではATC型複合加工機「JX-200」が注目を集めた。全長349.1?_と世界最小クラスのATC工具主軸を搭載しており、下タレットとの組み合わせで上下同時加工など様々な加工に柔軟に対応する。L/R主軸での左右同時加工時にも工具主軸の干渉リスクを抑え、生産性を妨げない。「工具主軸が小さいため加工に使える領域が広い。心間1250?_と聞いて皆さんが思い浮かべるより、長く大きなワークが加工できる」という。 工具主軸は小さいが、加工能力への不安は重切削デモで取り払った。切込み量5?_(周速160?b/分・送り0.3?_)の旋削加工や、φ50フライスカッタを使った切込み量10?_のミーリング加工(周速190?b/分・送り0.3?_)など工具主軸を使った3種類の加工を実演。ビビりを抑えて加工をこなす力強さを見せた。「コンセプトは『できない』を『できる』に変える。この機械でできない加工はほとんどないと考えている」(同社) ほか、3DCADモデルをもとにプログラムを自動作成する「3D Smart Pro AI」も展示。「事前設定を行っておけば5分以内にプログラムを作れる。難しいものはCAMで、簡単な加工は3D Smart Pro AIで行うことで現場負担を削れる」という。 (2023年9月10日号掲載)

中村留精密工業(株)

2023年09月11日

岡?ア精工、超硬エンドミルSPシリーズを値下げ

 岡?ア精工は9月1日出荷分から、超硬エンドミルSPシリーズの10製品39アイテムの値下げに踏み切った。価格改定率は最大で35%の引き下げとなり、高品質のメイドインジャパン製品の市場プレゼンスを守り、海外の安価な商品に対抗する狙いがある。 超硬ソリッドエンドミルSPシリーズは、独自の耐熱性に優れたOK-Aコーティングを施し、さまざまな用途に応じた形状・仕様の製品をラインアップする。現在13製品を展開しており、従来から寸法バリエーションを限定することで、リーズナブルな価格を実現してきた。 また全国15カ所の営業所で、全種類全サイズの在庫を完備し、すぐに必要な製品を提供できる体制を整えるなどサービス面の強化にも努めている。 使用するユーザーからは「SPSEE5GA(剛力5枚刃)を使用すると加工スピードが上がって、なおかつ面も綺麗だ」、「SPSEE3ZA(縦送り強化型)で工具数が減った」、「SPSEE4GA(剛力4枚刃)は切れ味が良い。また粗と仕上げどちらにも使えて万能だ」などの喜びの声が届いているという。 原材料高騰、石油価格などの高騰による副資材価格の上昇が続いており同社のみならず生産は厳しい状態となっているが今回、生産工程の見直しと合理化でコストダウンを図った。値下げは13製品のうちSPSED2A、同4A、SPSBD2Aを除く10製品となる。 岡?ア華社長は「物価が高騰しているが、当社は少しでもユーザー様のコストダウンのお手伝いをしたいと考え、値下げに踏み切った。また安い外国製品が入ってきているので価格で対抗ができ、かつ高品質なメイドインジャパンの製品を提供していく」と話した。 (2023年9月10日号掲載)

岡﨑精工(株)

2023年09月11日

東日製作所、最新カタログを発行

 東日製作所は8月21日、最新カタログ「東日トルク機器総合製品案内 2023.08」の無料配布とPDFダウンロード、電子カタログの閲覧を開始した。同日受注開始分からの価格改定を反映するだけでなく、狭隘部の締付けでも干渉しにくく、締め付け不良をトルクと角度で検出も可能な、小容量のヘッド交換式デジタルトルクレンチ「CESシリーズ」といった新製品の情報も掲載する。加えて、業務で直ぐに役立つと好評な「東日トルク講習会」の2024年5月までのスケジュールと申込書や、締め付けの信頼性向上に役立つ技術資料も掲載する。ダウンロードページからPDFのダウンロードや電子ブックの閲覧、無料発送の依頼が行なえる。 (2023年8月25日号掲載)

(株)東日製作所

2023年09月08日

北川鉄工所、コンパクトながら強力クランプ

 ??数多くのNC円テーブルを揃えている貴社ですが、近年「MK200」のセールスが好調と聞きます。 「MK200は従来のベストセラー製品『MR200』を大幅に性能向上させた製品になります。コンパクトながらクラス最高レベルのクランプトルク570Nmを実現し、従来製品より163%クランプ力を向上させています。MK200と当社のテールスピンドル『TSRC140』を組み合わせることで、合計970Nmのクランプトルクを得られます」 北川鉄工所・藤原康正氏  ??クランプ力の向上で加工時のビビリや歪み、ワークの誤脱をしっかり防げますね。 「MK200はマルチディスクブレーキ方式を採用し、多面で摩擦させることにより、エア供給のみで油圧クランプに相当する高クランプトルクを実現しました。さらに大径ピストンの採用により、効率の良いクランプ機能も有しています。また、当社のウォームホイールには一般的なNC円テーブルに採用されているものより、高歯かつ大径のものを採用していますので、歯にかかる面圧を低減し、加工負荷の低減や精度維持を実現します。ウォームホイール本体には、素材に硬質の金属間化合物を含む特殊合金を使用していますので、従来製品に比べ耐摩耗性も大幅に向上させています」 ??通常のNC円テーブルに比べてもかなりコンパクトなサイズですね。 「奥行きは従来品のMR200に比べ18?_小さくなりました。テールスピンドルのTSRC140も従来のTSR142に比べ、45?_薄型化しています。MK200との組み合わせで計63?_、加工エリアの拡大を図っていますので、これまで載せられなかったワークも削れるようになります」 ■メンテナンス性にも高評価  ??クランプ力の向上にダウンサイジング、加工エリアの拡大と従来品より大きな進化を遂げたMK200ですが、実際に導入されたユーザーからの反応は。 「性能面に高評価を頂くことが多いのですが、最近では取り付けやすく、外しやすいというお声も頂いています。MK200はクランプ器具無しでそのままボルトでの取り付けを可能にしています。またロケータやライザーブロックとの併用で位置決めが簡単に行えるようになった、メンテナンスしやすくなったというお声も頂戴しています」 ??内蔵ロータリジョイントも3タイプあり、様々な加工に対応できそうですね。 「内蔵ロータリジョイントは4ポート、5ポート、6+1ポートから選択できます。 6+1ポートのセンターポートはφ12.5?_のマルチパーパスホールとなっており、高圧クーラント用、着座確認センサー取付け用などご自由にお使いいただけます。また25MPaの高圧用ロータリジョイントにも対応し、治具の小型化や動作の高速化も可能です」 ??MK200と組み合わせることで加工に威力を発揮する貴社製品があれば教えて下さい。 「5軸MCでの荒加工に最適なセンタリングバイス『V75V』ですね。ボディには焼き入れを施してあり、耐久性を高めています。最大20kNの締め付け力に、最小3.5?_の掴みしろでワークを把握できますので5面加工に対応しやすくなっています。また低床ボディですので、広い加工範囲と良好な刃物の寄り付きを可能にします。さらにオプションのコンビネーションジョーの仕上用面を使用すれば、±0.01?_の繰り返し精度を実現できます」 5軸センタリングバイス「V75V」 (2023年8月25日号掲載)

(株)北川鉄工所

2023年09月08日

ミツトヨ、インラインレーザー測定システム

 ミツトヨ(神奈川県川崎市高津区坂戸1-20-1、TEL.044-813-8201)はインライン測定に特化したレーザースキャンマイクロメーター「LSM-02-A」「同30-A」を8月2日に発売した。非接触で円筒形状の外径・振れなどを高精度に測定できる。 医療、機器・医薬品、電気・電子・半導体、自動車、食品分野など向けの全数検査に貢献する。コントローラ部を小型化し、外部機器との通信のための多彩なインターフェースユニットを用意。「制御装置への組み込みが簡素化し、測定データを生産現場から管理サーバへ容易に繋げることが可能になった」と言う。繰返し精度(2σ)はLSM-02-Aで±0.015μm(直径1mm)、同30-Aで±0.06μm(直径10mm)を保証。保護等級IP67を実現。 (2023年8月25日号掲載)

(株)ミツトヨ

2023年09月06日

日本ホイスト・おどろきの工場、一貫生産、自動化、DX化で驚きの工場実現

 ホイストクレーンの国内最大手・日本ホイストは、ホイストの製造だけでなく、クレーン設置の現場確認から企画提案、販売、据付、引渡、アウターサービスまで総合的なフォロー体制に大きな特長を持つ。同社は2015年から関東、中部、九州に出先工場を建設するなど、国内の製造体制の確立を進めてきた。21年には静岡県にロボットなどを採用した「おどろきの工場」を新設。工場に訪問しおどろきの理由を探った。 日本ホイスト・おどろきの工場の藤原正夫工場長。藤原工場長が送った一通のメールから「おどろきの」という名前が付けられた。「初めてこの工場を見る方は驚いてくださいます。今振り返ると名前通りの工場になっていると思います」  静岡県焼津市、大井川港の突端に日本ホイストの「おどろきの工場」はある。同社にとって4つ目となる出先工場だが、名称を含め様々な点で他の工場とは異なる。同工場の藤原正夫工場長がその特長を「規模」「一貫生産体制」「自動化・DX化」とするように、独自かつ最新の設備導入や取り組みが目立つ。その特異性を端的に示すのが、工場の稼働開始直後から1物件260基もの超大口案件を単独で完遂したことだろう。クレーン業界で4割超のシェアを持つ同社であってもこれだけの規模の案件は初めて。通常、1物件あたりの受注基数は多くても十数基程度であり、従来であれば他工場と連携しながら1年かけて製造を行う規模の案件であった。 「人員の応援は送ってもらったが、この仕事を本工場内だけでやり切れたことが大きな自信になっている。この案件を完遂できたことで、他の工場ではこなすことができない大口の案件を担当する工場として、当社内でも独自のポジションを築くことにもなった」(藤原工場長) 川崎油工製の専用プレス機。「少なくとも国内最大級のマシンです。従来は桁長12?b超の製品は継がないといけませんでしたが、19?bまでプレスできるようになり、歩留まりが向上しました」 ■独自・最新設備がムダ・ムリ削減  大口案件の製造を支えるのが独自かつ最新の設備群だ。従来から同社はクレーンを製造する際、協力工場で加工した部材を仕入れ製品に仕上げてきた。それに対し、おどろきの工場ではその敷地面積を生かし、コイルレベラーや大型プレスマシンを導入。コイル状の鋼材の切断やプレス機による成形も工場内で一貫して行うことで、無駄の削減・歩留まり向上に役立っている。 他工場よりも敷地面積が広く製造エリアも多い一方で、従業員数は20人弱と変わらない。いかに効率よく人員を配置するかが重要となる。同社クレーンの特長でもある桁は、U字に曲げた鋼材の内側に鋼鈑を竹の節のように入れる。従来、この鋼板を差し込み溶接する作業は人が行っていたが、おどろきの工場はロボットで自動化した。 「独自・最新の生産設備の導入に加えて、鋼材を2次元バーコードで管理するDX化の取り組みも進めている。クレーンは一品一様であることが多く、製品管理が煩雑になりがち。進捗管理や行政への提出書類の作成などを簡便にすることで、製造において重要な部分に注力できるようになっている」(藤原工場長) プレス加工した桁の内部加工後、蓋の外周溶接及び付属品取付の溶接をほぼ自動化した ■人材獲得・育成が鍵  工場の外に出ると空地が目立つ。現在は敷地の3分の1程度しか使用しておらず、藤原工場長は当然工場拡張の可能性を視野に入れているが、そのためには従業員の確保と能力向上が鍵になるとみる。 「『企業は人なり』とも言う。行っている作業は昔ながらの鉄工所と一緒のため、普通にやったら3Kのイメージそのままの人員が確保しづらい現場になる。自動化などのハードによる現場環境の改善に加え、汚れて当たり前の製造現場を汚くはしないような仕組みなど、働きやすい現場づくりを心掛けている」 藤原工場長は工場だけでなく業務の拡大も狙う。「現在、30?dクラス以上の超大型クレーンは基本的に中国で前加工を行っている。しかし、地政学的なリスクなども鑑み、おどろきの工場でも製造できるようにしたいと考えている。そのためには人材育成が鍵となる。現在の従業員はもともと小型クレーンの量産のために現地で採用した人材。未経験者も多い中、大口案件の製造などを経験し、大型クレーンの製造にも対応できるようになってきている。今後、10?dクラスのクレーン製造で経験を積んでもらい、大型、超大型・特殊クレーン製造にも携われる人材の育成をしていきたい」と先を見据える。 (2023年8月25日号掲載)

2023年09月06日

ノーリツ、入浴施設向けのろ過昇温ポンプユニット

ノーリツは9月1日に、容量2千~8千?gの浴槽に対応するろ過ユニット(ろ過能力毎時7~16立法?b)と連動する業務用「ろ過昇温ポンプユニット(PSU-400ST)」を発売する。 熱源機でつくったお湯をろ過ユニットに循環するポンプと周辺部材をユニット化した。熱源機、ろ過ユニット、ろ過昇温ポンプユニット、のすべてをノーリツブランドでラインアップし、入浴施設など向けの「ろ過システム」として提供する。 「システム化」により煩雑な部材選定やポンプ周りの図面の作成が不要で、浴槽容量の確認のみで浴場用ろ過設備のプランをカンタンに作成可能。従来の設計工数を削減する。 また循環ポンプなどの部材類をユニット化することで、昇温熱源機と並べて設置でき、美観向上だけでなく、設置面積が0.3平方?bと省スペースになった。導入時に2人がかりで1日以上必要としていた煩雑な循環ポンプと周辺部材の工事も不要で、施工もマルチ給湯器と同様の設置のみ。「『省施工』と『省人化』により施工現場の負担軽減を実現する」(同社)という。 ろ過ユニットとろ過昇温ポンプ双方の循環ポンプ部に漏水検知器を設置し、リモコンにお知らせする機能を新たに導入した。   「ろ過ユニット」の販売台数は2026年までに160%(22年比)を目指す。 (2023年8月25日号掲載)

2023年09月06日

Green×Digitalコンソーシアム、サプライチェーン上のCO2データ連携に成功

 Green×Digitalコンソーシアムは8月4日、サプライチェーン上でCO2データ連携を行う実証実験に成功したと発表した。「共通の方法」と「フォーマット」を用いサプライチェーンの上流から下流までCO2データを算出(見える化)する試みだ。 現在、主流のScope3算定方法では活動量(金額、重量、数量など)と二次データ排出原単位を掛け合わせて排出量を算定する。稲垣孝一氏(日本電気)は「この方法だと企業がサプライチェーンのCO2を減らそうとすると金額を減らさないといけない。またサプライヤーが努力してCO2を削減しても努力が反映されない」と指摘する。そこで「サプライヤーがCO2を減らした分を顧客に引継ぎ集計していけないか? サプライチェーンでモノのやり取りのように企業間でCO2のデータをグローバルにやり取り」できれば課題が解決できるとみる。 今回、32社参加という大規模な実証実験を行い「CO2可視化フレームワーク」でのCO2データの算定と、データ連携のための技術仕様に基づくCO2データのソリューション間連携を実現。素材から製品に至るまでのCO2データを算定し、異なる企業・異なるソリューション間で受け渡すことで、サプライチェーン上の全ての企業の共通認識のもと、最終製品のCO2データを算出(見える化)することに成功した。 稲垣氏は「実証で成果が出たので今年度はフレームワークや技術仕様をワーキンググループだけでなくいろいろな業界で活用できるように広めていきたい。PACTなども含めバージョンが変わったり、世の中の動きやルールも変わるのでタイムリーに対応していく。変化を適切に反映させて常に最新のものにしていく」とし、今後は社会実装フェーズへ移行していく認識を示した。 (2023年8月25日号掲載)

2023年09月04日

オークラグループ3社、ワン・オークラ体現する新社屋

 オークラグループ3社(オークラ輸送機・オークラサービス・上野電気工業)が入居する「オークラ大阪ビル」が7月に稼働をはじめた。梅田にも近い阪急三国駅から徒歩圏内にあり、ここを本社とする上野電気工業は「採用の中核拠点としたい」と意気込む。EC需要の高まりで好景気が続くマテハン業界だが、旺盛な需要に応えるためにも優秀な人材の確保は必要不可欠。フリーアドレスを徹底した働きやすい新オフィスでグループの魅力を伝え、採用競争に勝ち抜く構えだ。オフィスのこだわりからグループの連携戦略まで、上野電気工業の倉松幸司社長に詳しく話を聞いた。 上野電気工業の倉松幸司社長  広々とした執務フロアには2台のモニタを配したデスクがゆったりと並ぶ。フリーアドレス制のため、ノートPCがあればどこでも3画面で仕事ができる贅沢な環境だ。実際に従業員は各階にあるカフェスペースや5階のラウンジも含め、思い思いの場所で自由に働いているという。  「あまりに快適すぎて以前とは業務効率が段違いです」。上野電気工業・倉松幸司社長の笑顔が満足感を物語っていた。 今年7月に稼働をはじめた「オークラ大阪ビル」はオークラグループ3社が集う関西の中核拠点だ。4・5階はオークラ輸送機が営業・技術拠点として利用。物流機器の据付とメンテナンスを担うオークラサービスは3階に入り、2階はオークラサービスの子会社で電気関連の設計・製造・調整を手がける上野電気工業が本社として使う。1階では上野電気工業が制御盤製作や試験を行うほか、エアーレスで動くパレタイズロボットなどを展示するショールームもある。こうして並べるだけでもこのビルの多機能さは充分伝わるだろう。 5階のラウンジはグループの交流拠点としても機能する  もともとこの地は上野電気工業の本社だったが、同社は2020年にオークラグループに参画。21年にオークラサービスと上野電気工業の創業50周年が重なり、周年記念事業のひとつとして手狭だった拠点の建て替えが持ち上がった。経営の効率化や連携強化の観点で、近隣に営業拠点があったオークラ輸送機もそこへ合流。こうして約12億円を投じたオークラ大阪ビルが完成した。 拠点を刷新した狙いのひとつはグループシナジーの強化だ。そもそも上野電気工業はグループに参画して約3年で、オークラ輸送機の孫会社にあたる。コロナ禍もあってシナジー効果を生むのに時間がかかっていたが、今や状況は一新されたという。「移転して1カ月で予想以上の効果が出ています。上野電気工業へのオークラグループからの受注が加速度的に増え、仕事の流れがずいぶん変わってきました。カフェエリアでも自然と交流が生まれます。長い目で見たシナジーは計り知れません」(倉松社長) 上野電気工業は自動車メーカーなど大手の生産ラインで知見を積んできた専門家集団。電気関連の設計・製作・調整を行う一気通貫体制が強みで、今まで外注していた仕事を同社が担えば対応速度を早めるメリットがある。制御盤製作の進捗確認やテストも階段を下りるだけで済むため、調整前にシステムの完成度を高めることもできる。もちろん、グループ外へのキャッシュアウトが減る点も大きな効果だろう。 1階のショールームでは2つのロボットシステムを展示する。画像はエアーレスのパレタイズロボット。SDGsの観点からエアーレスを求める現場が増えており、それに応えて開発したという ■EC関連需要は高原状態  オークラ大阪ビルには働きやすさに通ずる仕掛けが多い。イラストレーターによるポップな絵が壁を彩り、執務エリアは開放的かつゆったりしたレイアウトで、WEB会議スペースとフリーアドレスデスクが社員の自由な働き方を後押しする。オークラグループではコロナ禍前から働き方改革を推進しており、同ビルもその流れに沿ったものだ。 オークラサービス・経営企画部の伊角賢一部長は「自分たちで言うのもはばかられますが」と前置きし、こう語る。「我々のグループは非常に良い会社だと自負しています。しかし、BtoB企業であるがゆえに一般消費者の方々にはその良さがなかなか伝えられない。そこで、我々オークラグループの良さが少しでも具現化できれば、と考えたのが、自社ビル『オークラ大阪ビル』の建設です」 新たなビルに力を入れる狙いは人材採用にもある。近年は物流センターの新設案件の増加を背景にオークラグループの売上高も好調に推移し、オークラサービスも多忙な状況が続く。上野電気工業が求める電気系人材も九州の半導体工場新設などに引く手あまたで、優秀な人材の確保は3社ともに急務だった。「すでに複数の面接を行いましたが、いずれも新社屋を気に入っていただき採用にもつながっています。今後もリクルート拠点として最大限活用する方針です」(倉松社長) オークラグループでは「ワン・オークラ」を掲げ、グループシナジーの強化を打ち出している。「営業、設計、製造をオークラ輸送機が、上野電気工業が電気系の設計や製造を担い、オークラサービスが工事とサービスを行う。サービスが良ければ次なる引き合いにもつながるため、この良いサイクルを我々がワンチームとなって回すことが重要です。まだまだ道半ばですが、オークラ大阪ビルを軸にサイクルを強力に推し進めます」(倉松社長) (2023年8月25日号掲載)

オークラ輸送機(株)

2023年09月04日

永大産業、安全性に配慮した製品ラインナップ拡充

 永大産業はこのほど、子どもからシニア世代に向けて安心・安全性と快適性に配慮した「セーフケアプラス」製品のラインナップを拡充した。追加したのは「店舗・事務所向け室内ドア」や「ビニル床タイル」、「キッズ洗面」など。アフターコロナで変化した非住宅分野のニーズに応えて、シェア拡大を狙う。 店舗・事務所向け室内ドアは新デザインLD・8Vを含む9種類のドアデザインをラインナップ。開口部を広くとれる親親ドアを始め、片引き吊り戸、片開きドアなど7種類に対応し、開きドアは従来のレバーハンドルだけでなく、ステンレス製などの握りバーの設置が可能。カラーバリエーションは15柄を揃えた。 視認性の高いピクトグラムと明瞭なカラーが特長の「ユニバーサルデザインドア」は、公共性の高い多機能化粧室に使えるユニバーサルトイレデザインを追加。片引き吊り戸と片引き込み吊り戸(どちらも自閉タイプ)を用意する。 メンテナンスが容易で帯電を防止する「ビニル床タイル」は、木目柄(7種類)、石目柄(3種類)、単色(7種類)の計17種類を揃えた。壁面保護できる「腰壁用パネル」や「軟質ビニル幅木」なども選べる。 園舎向けの製品として「キッズ洗面」もラインナップ。「シンクの外側コーナーをR形状にしたり、キャビネットの奥行をシンクより小さくして躓きにくい設計にするなど、安全性にこだわった」(同社)。シンクやキャビネット、扉など色柄の組みあわせは約2500通りで、オリジナル感を出せる。体形に合わせて高さは3タイプ、1人用から3人用までのプランを用意した。 (2023年8月25日号掲載)

2023年09月04日

山善「タイパ」優れるオーブンレンジ

 山善(大阪市西区立売堀2-3-16、TEL.06-6534-3095)はオーブン予熱にかかる時間を短縮した「高効率オーブンレンジYRZ-WF150TV/NERZ-WF150TV」を、同社が運営するインターネット通販サイト「山善ビズコム」やECモールの店舗「くらしのeショップ」、全国のホームセンターで8月中旬から、全国の家電量販店では10月上旬から順次発売する。 庫内の高さを同社従来品よりも40mm低い135?oに抑えたことで食品とヒーターの距離を近づけ、熱を伝わりやすくした。200℃のオーブン予熱にかかる時間は約5分50秒と従来品から約50%短縮。「スポンジケーキやクッキーなどのスイーツを『タイパ』良く調理することが可能」と言う。付属の角皿に熱伝導率の高いアルミ素材を採用したことで、トーストを裏返すことなく両面を約6分で焼き上げる。これらにより2008年度基準に対する省エネ達成率108%を実現。価格はオープン。 (2023年8月25日号掲載)

2023年09月04日

ブラザー工業、SPEEDIO Uシリーズ

 ブラザー工業はユニバーサルコンパクトマシニングセンタ「SPEEDIO(スピーディオ) U500Xd1」に同時5軸制御機能を搭載した「SPEEDIO U500Xd1-5AX」を8月7日に発売した。 SPEEDIO「U」シリーズは、EVなどに使用される大型アルミワーク加工向けに広い加工エリアを確保したモデル。コンパクトな本体サイズのまま、治具エリアを最大限に広くなるよう設計した傾斜ロータリーテーブルを標準搭載。従来の一般的な主軸30番のマシニングセンタより大幅に加工エリアを拡大しており、従来モデルや、小型複合加工機より大きなワーク加工を実現する。 また一度のセットで、さまざまな角度での割り出し加工が行えるので、治具の製作も必要最小限で済み、ハンドリングの工程も減ることで、生産工程の集約化と、加工精度の向上を実現する。さらに、昨今のワーク形状の複雑化に伴い、従来のATC搭載本数14本、21本に加え、28本を搭載できる仕様を用意した。 新機種は、大型の傾斜ロータリーテーブルの採用で、多面加工を可能にした「U500Xd1」の機能追加モデル。「U500Xd1」は、テーブル移動による前後、左右、工具が垂直に移動する上下の3軸に加え、テーブルが回転と傾斜する2軸が加わる5軸加工を可能にしたモデル。新機種は、それらの加工を同時に行うことができる同時5軸制御機能を搭載した。 「同時5軸加工により、立体的で複雑な形状の部品加工ができるため、ポンプや発電機、自動車のターボチャージャーなどで使用されるインペラや、人工骨など、滑らかな曲線形状が要求される部品の加工も可能にします」(同社) 標準価格は1355万円(税抜)。 (2023年8月25日号掲載)

ブラザー工業(株)

2023年09月01日

山善・ロジス新東京、人機一体の改革で常に変われる倉庫実現

1月、山善の12カ所目の物流拠点「ロジス新東京」が本格稼働した。2月には住建事業部の物流拠点として運用してきた岡山の拠点をツール&エンジニアリング事業部の小規模配送拠点(デポ)としても活用すると発表し、5月には「新ロジス大阪」の設置を発表するなど、2024年を前に物流拠点の強靭化を加速させている。最新の物流ソリューションで効率的な商品配送を実現したロジス新東京の特長と「物流CROSSING」戦略について、同社・ツール&エンジニアリング事業部戦略企画部の橋本睦副部長に聞いた。 橋本副部長とダイフクのシャトルラック  「もしもの時でもモノづくりを止めないための半自動倉庫をめざした」 橋本副部長はロジス新東京を設計する際にこだわったポイントについてそう述べ、「人材不足や人件費が高騰している今、自動化を強力に押し進めたほうがランニングコスト低減・生産性向上とメリットは大きい。しかし、停電などで物流が止まった時でも、モノづくりの現場は稼働している。配達できませんでは済まされない」と、ユーザー視点に立つことがアナログな部分を残す一因となったと振り返る。 一方で、人材に関する問題は深刻でもあり、従来の人海戦術式の物流システム運用も見直しを進めた。ハード面ではダイフクのマルチシャトルシステム「シャトルラックM」などを導入。シャトルラックMは一時保管や仕分け、順列出庫機能を備えた空間効率の高い名寄せ(荷揃え)システムであり、配送先別の保管・仕分けが人手を極力使わずに迅速に行える。 ソフトでは統合物流管理システム(LMS)と倉庫管理システム(WMS)、倉庫制御システム(WCS)をセイノー情報サービスと共同で開発。従来は拠点や事業部ごとに物流システムが異なっていたが、システムを統合することで物流データを一律で管理・取得できるようにし、より正確な分析ができるようになった。今後、自前のシステムを他拠点にも順次展開していくことで、全社での物流関連の分析や物流資産の適切なシェア体制を整えていく。 物流倉庫だけで終わりではないのが山善らしさだろう。コンセプトを「この倉庫にあるものすべての商品が山善で取り扱いできます」とし、ショールームとしても使用できるように庫内設計を施した。すでに数十社の来訪があり、来年には60人もの大規模見学会が予定されている。 「全自動倉庫に比べたらここはそんなにすごくはない」としながらも見学者が絶えない理由について橋本副部長は「単純にハイスペックな倉庫を目指すなら、自ずと導入する製品も決まってくる。しかし、実際の現場の多くはそれだけが指標ではない。現場ごとに異なる要求に合わせて様々なマテハン機器を検討しなければならない。当社も悩みに悩み抜いてこの倉庫を作った。ここに来てもらえれば検討内容や実際に稼働している製品を見ることができる。加えて、マテハン機器はどんどん新しい製品や技術が出てくるため、この倉庫は常に可変性を担保していくことを意識した。今後、AMRを試験的に導入したり、SKUが増えればシャトルラックの増設など選択肢を用意している。そうした時代に合わせて柔軟に変化していける倉庫づくりにも関心が高い」とみる。 シャトルラックの名寄せの様子。システム上でシャトルから出てきた箱とピックした箱の中身が一緒になるように並べられるため、人は目の前に来る箱の荷物とシャトル側の箱を照合し、荷物を移し替えればよい ■24年問題を乗り越え、物流を差別化要因に  山善は持続的な成長に向けて、22年度から24年度にかけて400億円の成長投資枠を設定。物流設備などへは100億円の投資枠を定めており、地域密着の小規模倉庫「岡山デポ」や「新ロジス大阪」の新設など、事業部をまたいだ物流CROSSINGの取り組みを加速させている。橋本副部長は「注文をもらったのに配送できない未来がすぐそこまで来ている。特にモノづくりが多く行われているローカルエリアを中心にそうした流れが加速していくとみられており、スピード感をもって対応しないと24年問題に飲み込まれてしまう。優先順位をつけて3年の間に流通基盤の足場固めを終えたい」とする。 そこで重要になるのが、大手路線会社に頼り過ぎない自前の物流配送環境を整えることであり、同社は全国に90カ所ほどある住建事業部の拠点の一部にデポ機能を持たせることで、足回りを強化する考えだ。「住建事業部が地場の運送会社と長く関係を築いてきた。これも山善の強み。そうした拠点にデポ機能を持たせ、地域密着でその地域に求められている商品の即納体制を築くことが、数年後大きな差別化要因となる」と先を見据える。 タクテックのゲート開閉式仕分けシステム「GAS」。蓋が開いたところに入れるだけなのでミスがない (2023年8月25日号掲載)

2023年09月01日

ホーセイ、治具+スライドユニットでXYZ軸をかんたん追加

 レーザー加工装置から工作機械の補要機器まで、多彩なモノづくり製品を手がけるホーセイのスライドユニット「ベスト・シン」は重量物の微調整、あらゆる機械芯出し、及び、組み込みユニットとして最適のスライドテーブル。 「同じタイプを2台組み合わせることにより、簡単にXY軸スライドテーブルができます。3台組み合わせる場合は、Z軸冶具を使用することで、XYZ軸スライドテーブルの構成が可能になります。また組み込みユニットとして最適のT溝付スライドテーブルも用意しています」(同社) 1軸用のHタイプはテーブル寸法76×100?_~201×200?_の7タイプ、XY軸のHWタイプは12タイプ、上下軸用のHZタイプは6タイプをラインアップ。XY軸用テーブル面拡大型のHWHタイプはテーブル寸法150×250?_~200×400?_の4タイプを用意。いずれも鋳物製アリタイプで薄型のため、耐加重性にも優れる。 フライス盤や研磨機、ボール盤、プレーナーなどでの活用に最適な割出台「スーパーインデックス ワイド160」はノッチ板を内蔵しており、2、3、4、6、8、12、24単能分割を可能している。任意の角度割り出しはウオームギアとウオームシャフトで行うことができ、2つの方式をかんたんに切り替えられ、使いやすく段取りがラクに行える。 組み合わせ次第で簡単にXYZ軸を追加可能  (2023年8月25日号掲載)

2023年09月01日

ケルヒャージャパン、バッテリー駆動のインダストリアルスイーパー

 独ケルヒャー社の日本法人、ケルヒャージャパン(神奈川県横浜市港北区大豆戸町639-3、TEL.045-438-1408)は同社で最小設計のバッテリー駆動型インダストリアルスイーパー(産業用大型清掃機)「KM 105/180 R Bp Classic」の受注を7月13日に始めた。 わずか1065mm幅で建物内への進入が容易。「柱と設備の間などの狭い場所でも効率的な清掃を可能にする」と言う。小回りの利く小型ながらタンク容量180L、1時間当たりの清掃面積は6300?uと十分な清掃能力を備える。36Vバッテリーの電動油圧駆動(稼働時間は最長2.5時間)。ディーゼルタイプと同等の対粉塵性を備える。希望小売価格は税別770万円。 (2023年8月25日号掲載)

ケルヒャー ジャパン(株)

2023年09月01日

ワルタージャパン、倣い仕上げカッターレパートリー拡張

 ワルタージャパンはこのほど、「Xtra・tec XT」シリーズの倣い仕上げカッター「M5460」のレパートリーを拡張した。 M5460(工具径範囲φ8?32)は、エアブローやミストクーラント、またはエマルションが使用できる内部クーラント供給仕様で、幅広い被削材や用途に対応。切りくず排出性を大幅に改善し、高い表面品質およびプロセス信頼性を達成する。 仕上げから中仕上げ加工、ハードマシニングの各用途で、鉄系やステンレス系、鋳鉄系、難削材や高硬度材のブリスクなどの複雑三次元形状や深いキャビティの加工に向く。 カッターボディは鋼や超硬の円筒シャンク、ウェルドンシャンクやねじ込み式ヘッドをラインナップ。ボディやチップに幅広いレパートリーを揃えており、一般部品加工や金型、航空宇宙およびエネルギー産業などさまざまな分野で汎用的に使える。特に金型加工では、先端交換式のストレートモジュラーインターフェース仕様工具により、既存アダプターをそのまま用いる「Plug&Play」方式でカンタンに新製品を取り入れられる。 「最新材種により高速加工にも対応し、表面品質の改善でリワークを削減できる」(同社)と利点を語った。 (2023年8月25日号掲載)

2023年08月30日

HCI、4役を1台でこなす清掃ロボット

 HCIはこのほど、業務用清掃用ロボット「Pudu CC1」の販売を開始した。昨年7月から1年間、配膳ロボットを多く手掛ける中国のPudu Robotics社と共同で実証実験を行い、サービス体制を整え本格販売に至った。 「1台でスイープ、床洗浄、吸引、乾拭きまで4役こなす清掃ロボットは『業界初』。発売からすでに10台ほど注文が来ており、ホテルや結婚式場、工場まで幅広く引き合いをいただいている」と奥山剛旭社長は順調な走り出しを語る。 ダストボックスの容量を増やし、自動充電だけでなく、ホースと繋いで自動でタンクに給水、排水を行える「ワークステーション」を開発。より自動化を実現する。「独自で開発した専用洗剤により、工場の油汚れにも対応できる」という。 自動清掃モードと手押しモードを備え、手押しによるマッピングが可能。また、従来の清掃ロボットでは難しかった壁際にまでロボットを寄せられ、さらに毛足の長いブラシが隅までゴミをかき出す。 掃き幅は500?_メートル、こすり幅は400?_メートル。本体寸法は663×568×682?_メートルで重量は63?`グラム。走行速度は最高1.2?b毎秒。3時間の充電で8時間稼働する。 「年間で約400台、1億円の売上を目指す」(奥山社長)と今後の展望を語った。 (2023年8月25日号掲載)

(株)HCI

2023年08月30日

東亜精機工業、自動化やEV向け治具に勝機

 「昨年まで国内は自動車業界向けにレトロフィット用の治具や自動化、効率化治具の受注で忙しくさせてもらっていましたが、やはり各社とも新規でのエンジンやミッションの開発をストップし、EVにシフトしているせいか、当社が得意とする領域の仕事は徐々に減ってきている印象を受けます」 こう語るのは、大阪府の加工用治具専業メーカー・東亜精機工業の原田育彦営業部長。同社は大正14年の創業以来、航空機部品やゲージ製作で得た知見をベースとした治具設計・製作におけるスペシャリスト。同社の治具は国内外の自動車メーカーをはじめ、半導体、電機メーカーなど多くの製造現場で採用されている。 東亜精機工業・原田育彦営業部長(左)と上田崇氏  その主力ユーザーである自動車業界からなかなか景気のいい話が出てこない現状、同社は今後も見通しは決して明るくないと見ている。 「自動車の動力源がガソリンエンジンからモーターに変わる過渡期になっています。数年前からEV化が進むと言われていましたが、最近はメーカーサイドが加速度的にEVへの移行を進めている印象です。設備面においてもエンジンやトランスミッションの新規開発による設備投資の話は一切聞きません」(原田部長) 一方、EV関連パーツ向けの治具ニーズは徐々に高まっているという。同社営業部の上田崇氏が直近の自動車業界からの引き合いについて語ってくれた。 「最近ではEV向けeアクスルの関係部品、バッテリ周辺パーツ加工向けの治具が求められています。EVやハイブリッド車に使用されるパーツは軽量化を意識した薄肉のワークが多く、切削時のビビリ対策を考慮した治具の相談も増えています。また、バッテリ周りのパーツには大型ワークも多く、治具も大型のものを求められる傾向にあります」 続けて、「エンジン生産量の減少に伴い、各メーカーとも設備の集約を進めています。様々な車種の生産に対応できるような超汎用ラインの話も出てきており、こうした生産現場に向けた治具が求められています」と語る。 また、国外に目を向けると、まだまだエンジン需要は少なからずあるようだ。 「中国を抜いて人口世界一になったインドの自動車生産が特に伸びていますね。なかでも現地で絶大な人気を誇るマルチスズキさんはかなり好調のようで、当社も様々な受注を頂いております」(原田部長) ■ロボ不要で機内段替え  また昨今では、業界を問わず自動化やロボットに対応した治具に対する引き合いが増えているという。 「製造業全般に言えることですが、とにかくどこも人が集まらないので、自動化やロボットを活用せざるを得ない状況になっています。特にロボットと加工機を繋ぐ工程間で必要な治具のオーダーが増えています」(上田氏) 一方で、金属加工における自動化やロボット活用において、無視できないのが重量の問題だ。近年のワークの大型化などで、工作機械のテーブル荷重に過負荷がかかってしまうケースや、ワーク搬送の自動化において治具にも軽量化が求められているという 「当社では従来の鉄製の治具に代わって、アルミ製の治具を提案しています。なかでも超々ジュラルミン製の治具は鉄製の治具に比べて同サイズでも重量は約半分です。超々ジュラルミンはアルミニウム合金の中で最も強度が高い素材で、鉄製の治具に勝るとも劣らない強度を有しています。治具の軽量化は、自動化の実現はもちろん、リードタイムやランニングコストの削減といった生産性向上にも繋がります」(原田部長) また同社では、ロボット導入が難しい生産現場に向けた治具ソリューションも提案している。なかでも工作機械内で子治具を自動で段替えできる「自動段替えシステム治具」は、ワークの機内加工自動化を実現する。 ロボットは高額ですし、ワークが変わるたびにティーチングを行う必要がありますが、当社の『自動段替えシステム』なら、ワークの変更にも子治具のみの新規作成で容易に加工ができます。多品種少量生産の現場に向くとともに、ロボットや自動搬送といった自動化に比べトータルでの導入・ランニングコスト削減に大きく寄与できます」(原田部長) 同製品は昨年の発売以来、マシニングセンタ向けの新たな自動化システムとして注目を集め、順調に販売を拡大しているという。 東亜精機工業の「自動段替えシステム」 (2023年8月25日号掲載)

2023年08月30日

YKK AP 、埼玉工場操業開始

 YKK AP埼玉工場(埼玉県美里町)の新建屋が5月に完成。7月31日より操業を開始した。ビル用アルミ建材商品の製造拠点とし、東日本エリアへの競争力の強化を図る狙いだ。 2021年に隣接する用地を取得し、新たに工場建屋を増強。首都圏を始めとする東日本エリアへの競争力を高めるビル事業の基幹工場として、製造供給体制を再編する。 新建屋では、機械製造部門による合理化設備での集約生産、自動化工程の拡大、データ連動したラインづくりなどのモノづくり改革により、製造コストを従来の25%削減。また、ユニットロード化やモーダルシフトによりロジスティクス改革も含め、発注から納品までのリードタイムを最大11日短縮する。 建物は「働きがいのある工場」をコンセプトに、高断熱外皮や断熱性・換気性に優れた窓、調光照明、高効率空調を採用し、CO2排出量を30%削減。また太陽光発電と再生可能エネルギー調達によりCO2排出の実質ゼロを実現した。ほかに雨水の利用も行い「地球環境や働く人にやさしい工場を目指す。また雇用創出により、地域へ貢献していく」(同社)とする。 (2023年8月25日号掲載)

2023年08月30日

東京大学 松尾研究室 ロボット・AI研究チーム「TRAIL」、生成AI活用でロボカップ世界3位

 5月7日、滋賀ダイハツアリーナに衝撃が走った。RoboCup Japan Open(RCJ)の@Homeリーグ・DSPL(Domestic Standard Platform)部門で、常勝チームを破り東京大学松尾研究室の新星「TRAIL」が全競技で大差をつけて優勝したからだ。 自律移動型ロボット向けの競技会である「RoboCup」の@Home ・DSPL部門は家の中をフィールドとし、生活支援ロボット「HSR(Human Support Robot)」が与えられたコマンドに従って、部屋を片付けたり朝食を用意するといったタスクを実行し、遂行度などを得点化して競い合うもの。TRAILは7月に仏ボルドーで行われた世界大会でも3位入賞を果たすなど、チーム結成から1年足らずにも関わらず活躍が目覚ましい。 上位入賞の理由について、2023年度のTRAILのリーダーを務める綱島颯志さんは「多くの古参チームが既存技術のアップデートをするなか、我々は人工知能研究を進める松尾研究室所属であるというバックグラウンドもあり、基盤モデルや大規模言語モデル(LLM)を積極的に導入した点が大きく寄与した」と話す。 ■基盤モデル活用で開発速度UP  基盤モデル(いわゆる生成AI)をどのように活用したのか。一つにはシステム開発の短縮化に役立ったと綱島さんは振り返る。 「1年という短い間に世界大会の出場権を獲得し、世界大会で求められる9つのタスク全てに対し新たなシステムを開発しなければならなかった。高い汎化性が特長である基盤モデルを活用して音声認識と画像認識のシステムを共通化することで、本当に必要なシステム開発に注力できた」(綱島さん) 人から自然言語でランダムにコマンドが与えられる難易度の高いタスク「GPSR(General Purpose Service Robot)」にも基盤モデルが有効であった。これまではその膨大な条件分岐に対応することが難しかったため挑戦者が現れなかったほどだが、TRAILは5つの基盤モデルを活用することで得点した。 「人間から与えられたコマンドの認識・タスク指示と周辺環境についての認識の2つのシステムを組み合わせることで、ロボットを自律的に動かしている。その2つのシステムの随所に基盤モデルを搭載した。ランダムに出される指示に対して、ロボットに適切な動作をさせるために重要となるタスクプランニングには、ChatGPTに使用されているLLMのGPT-3.4を活用。『掴む』や『移動』など23種類のアクションに1対1で対応した23個のスキル関数を用意するだけで、コマンドに合った動作順序を考慮したスキル関数のプランニングを行うことが可能になった。この技術がGPSRのゲームチェンジャーになった」(綱島さん) ■来年は基盤モデル使用が当たり前に  来年の目標はもちろん優勝だが、その道は決して容易ではない。綱島さんがロボカップの特徴を「ロボット研究のコミュニティーとしての機能もあるため、技術を積極的に公開する文化がある」と話すように、来年は基盤モデルを使うのがスタンダードとなる可能性があるからだ。 加えて、日夜より性能が高いモデルやさまざまなタスクに応用できるモデルなどが発表されており、最新の理論をうまくロボットへ実装できたチームは飛躍的に性能が伸びる可能性もある。そのため、綱島さんは「技術の置換が容易なシステムを構築することで、新しい技術を試しつつ性能を上げていくことが大切になる」とみる。 最後に、「ロボットと人間が違和感なく生活できるのはいつごろか」との記者の質問に対し、綱島さんは「人間とロボットの共存が100だとしたら、基盤モデルの登場でやっと10になったくらいの感覚。今までは1ぐらいだったので、グッとレベルアップしたのは間違いないし、あるレベルまでは急激に成長できると思う。基盤モデルでどこまでいけるかを探っていきたい」と先を見据える。 (2023年8月25日号掲載)

2023年08月28日

オムロン、650キロ可搬のAMR

 オムロンは7月17日、AMR(自律走行搬送ロボット)のラインアップに可搬重量650?`の「MD?650」を追加。まずは国内で販売を始めた。中可搬重量域の強化で「全搬送工程にまたがった自動化の実現」(同社)を目指す。今年10月には可搬重量900?`のモデルも追加予定だ。 MD?650は最高速度毎秒2.2?bの走行性能を持ち、30分の充電で8時間の稼働が可能。制御に強みがあり、単一の独自システムで異なるサイズのAMRも最大100台まで制御できる。モデルごとにシステム構築が必要な場合と比べ導入費を低減。フリート(群れ)制御や管制制御に優れ、すれ違いや混雑時の走行も「かしこく」(同社)行うことができる。 同社によると、FA向けの自動搬送ロボット(AGVおよびAMR)の世界市場は2025年度に18年度比15倍の成長が目される。また「多品種少量生産の課題が浮き彫りになってきた」といい、具体的にはロットが小さくなり、搬送回数や搬送先が増えているという。MD?650は主に自動車業界の導入を想定。そのほか粉体や箱詰め後の液体せっけんの搬送などをターゲットとする。 (2023年8月25日号掲載)

2023年08月28日

中国ハイロボ、AGVを日本市場に投入

 中国深セン市で2016年に設立したHAI ROBOTICSの日本法人、HAI ROBOTICS JAPAN(埼玉県入間郡)は8月1日、ACR(自動ケースハンドリングロボット)と協調してワーク搬送ができるAGV「HAIFLEX」を日本国内で発売した。 HAIFLEXは最大積載量600?`グラムと1000?`グラムの2タイプある。LiDAR(レーザースキャナー)による障害物回避、自律的な充電機能を搭載する。新井守社長は「HAIFLEXはACRが不得意としていたワークの搬送を行うことができ、かつACRと協調することができる。同じ保管エリアで保管できるワークの幅が広がることで物流環境はより柔軟かつ効率的になる」と言う。 同社は9月13~15日に東京ビッグサイトで開かれる国際物流総合展INNOVATION EXPO 2023に出展し、HAIFLEXのデモンストレーションを実施する。 (2023年8月10日号掲載)

2023年08月25日

山善が東京・大田でハードウエアショー

 山善の家庭機器事業部(中山尚律事業部長)は7月28日までの4日間、主に今年の秋から冬にかけて発売するインテリア、エクステリア、レジャー、工具、園芸、防災商品を集めた内覧会「YAMAZENハードウエアショー」を東京都大田区の大田区産業プラザPiOで開いた。会場には流通業などから85社・332人が来場。新型肺炎の流行が心配されるなか開催された昨年(63社・273人)よりも一段と大きな賑わいを見せた。 会場では今年の一大注目トレンドとなっている「節約」「節電」といったキーワードを押さえつつ、近年取り組みを強化している「問題解決型商品」の提案が多くみられた。入口正面のインテリアコーナーには6月に東京ビッグサイトで開催の展示会で注目を集めた、電動家具とUSBコンセント付家具の新ブランド「RELAMOVE(リラムーブ)」のブースを移設。家庭機器事業部・商品企画2部の山川圭一副部長は「リラムーブは『カタチを変えくらしにくつろぎを』をコンセプトとしており、家具に人が体や生活を合わせるのではなく、家具が人に合わせて姿を変えることで暮らしを豊かにしたい」とブランドを説明。入部康久副事業部長は「インテリアライフスタイル2023では住宅展示場の内装を手掛ける企業など、新たな業界の方からも興味を持っていただけた。今年のテーマともなっている新しい商品を新しい切り口で提案していく試みが実を結びつつある」と期待を示した。 マーケットの厳しさがささやかれる今期でも売れているのが、累計95万台販売のバスケットトローリーシリーズの隙間トローリー。今年2月に販売して以降、一時は売り切れになるほどのヒット商品。商品企画2部の片山知恵さんは「狭い日本の住宅の中で、常に課題となる収納スペースの確保を押さえた商品」とヒットの理由を分析。  アウトドア関連ゾーンでは「CAMPERS COLLECTION」シリーズのテントやサンシェードが並んだが、商品企画4部の安栗正和リーダーがイチ押しとしたのが保冷剤「ICE IMPACT」。一般的な強保冷タイプの保冷剤よりもすぐに凍り、持続性もいいのが特長。安栗リーダーは「アウトドアシーンなど過酷な環境で使われる強保冷タイプの保冷剤は凍らせるのに12時間から24時間かかり使い勝手が悪かった。本製品は約2・5時間で凍結可能なため、日常的に使うのに適している。また、持続温度を従来品と異なる設定にすることで、0度以下の温度持続時間を従来品よりも約2時間長い約5・5時間にできた」と説明。会場では300?_リットルタイプを展示したが、大容量タイプなどにも対応できるという。 保冷剤「ICE IMPACT」。口部から300?_リットルの水を入れ、付属のシリコンキャップで内蓋をし、キャップを閉めれば、商品本体が破れるなどしない限り半永久的に使用できるという。 ■BtoB向け対応製品も  仕入れ先・メーカーからは、家庭機器事業部が強化するBtoBに向けに提案できる製品が目立った。ポータブル充電器などを手掛けるBigBlueはポータブル太陽光パネルを提案。近年、ポータブル充電器と組合せたアウトドア・防災用品として注目を集めており、「HybridSolar 300」は持ち運びだけでなく、据え置き型のソーラーパネルと同等の耐久性を持つ製品。宮崎徹二統括部長は「ポータブルの太陽光パネルは基盤がむき出しになっているものが多く、耐久性に難があった。基盤の上に薄くガラスを張ることで、過酷な屋外環境でも据え置けるだけの耐久性を備えているため、事務所などへの太陽光パネル設置を容易にする」と説明。 BigBlueの太陽光パネル「HybridSolar 300」。ポータブルと据え置きどちらにも対応することから、「Hybrid」と名前を付けた。  ナガショウが製造する機能性漆喰「IONSilica(イオンシリカ)」は、森林環境と同等クラスのマイナスイオン(約700個)を発生させる塗壁材。森林浴と同じ様なリラックス効果が見込めることから、店舗や事務所などでも採用が増えている。また、宮崎統括部長は「通常の漆喰は石灰岩を焼成して製造するため、製造過程でCO2を排出するのに対し、本製品は独自の成分を使用しているため製造過程においてCO2を排出しない。カーボンニュートラルの観点においても企業からの注目度が高い」とメリットを話した。 (2023年8月10日号掲載)

2023年08月25日

グローバル、機械設計屋が『本気』で作った耐震シェルター

 日本の製造業、とりわけ自動車業界の生産ラインは高い合理性と安全性で知られる。「乾いた雑巾を絞る」とも例えられるカイゼンでムダを省き、競争力を高めるのだ。グローバル(小塚安代社長、TEL.052-651-5084)は、その業界で約30年も生産工程に携わってきた機械設計の専門家集団。知見を活かし、独自の耐震シェルターを開発した。 「上からのスラスト荷重をフランジ面で受け、ボルトにせん断力をかけません。ボルトも高張力ボルトを採用。アンカーを打つ『足』も、つまずかないよう内向きに収めました」。「護衛門シェルター」の特長を語る小塚氏の口ぶりはまさに機械設計者だ。細部にこだわりが光り、記者の頭には「神は細部に宿る」という格言が思い出される。 箱形の護衛門シェルターは一見シンプルだが、生産ラインに通ずる合理性を備えている。上部荷重はフランジ面で受け、側面の筋交いで耐久性を確保。震度7で破損せず、200?`の落下物にも耐えると試験で実証された。15人が入れるが、すべての柱が一般的なエレベータの最小規格で運べる寸法のためバラせば高層階にも設置できる。組んだ状態でも2?dトラックの荷台に乗り、工事など必要な時に必要な場所で使うこともできる。 「仮に設計歴3年と20年の人がシェルターを設計すれば仕上がりはまったく別物」と小塚氏は言う。「自動車会社を相手に長く設計していると、安全思想や合理性が自然と鍛えられます」。ちなみに小塚氏は機械設計歴30年超の現役エンジニアで、防災士の資格も持つ。その結晶が護衛門シェルターというわけだ。 ■押入れや風呂をシェルター化  災害列島とも言われる日本では近年、企業のBCPが急速に進む。有事も生産を継続すべく綿密な計画が練られ、建屋の耐震化にも相当額が投じられている。しかし工場の中で働く人に対しては必ずしもその限りでない。「机の下に潜る」レベルの対策から進歩がないのが実情といえる。 この状況に対し小塚氏は、施設における避難シェルターの必要性を改めて説く。「設備が無事でも人が傷つけば話にならない。また津波でも、まずは地震による落下物や設備の横滑りから身を守らねば避難もままなりません。片隅にシェルターを置きラジオや食料を備えれば、様々な事態から命を守れます」 同社は一般家庭にも護衛門シェルターを勧めている。押し入れや風呂をリフォームで「シェルター化」し、頻発する土砂災害からも身を守ろうという提案だ。「護衛門シェルターで1人でも多くの方を危険から守りたい」。そう語る小塚氏の目には力がこもっていた。 上からの荷重はフランジ面で受ける    (2023年8月10日号掲載)

2023年08月23日