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紀和マシナリー、省スペースなのに50番に迫る切削力

「現状のベストは尽くした」という横形MC「KH-4200kai」

BT40横形マシニングセンタ「KH-4200kai」

 紀和マシナリーの創業は1869年。版籍奉還が行われ士農工商が撤廃された激動の明治2年だった。祖業は農機具製造。だが1933年に旋盤製造へ舵を切る。高度経済成長期に生まれたヒット商品、全歯車式直立ボール盤が同社の名を全国区に押し上げた。「いまだにKIWAといえばボール盤だと言われる」5代目の紀和伸政社長はそう笑う。
 穴あけ技術を磨き68年にNCタレット型ドリリングマシンを上市。当時はまだNCの黎明期である。「規模が小さい分、方向転換しやすかった」。チャレンジ精神は当時から旺盛で、マシニングセンタ(MC)もいち早く開発した。MCの初号機は海を渡り英国へ販売。「今なら保守はどうすると待ったがかかるでしょうね」。ただ、それだけ早く海外展開に力を入れていた証でもある。
 今の主力はMCで特にBT40に強い。要望を1台から聞き入れ柔軟にカスタマイズする方針も曲げない。「ベースは標準機なので専用機より価格と納期が有利で、標準機よりやりたいことを具現化できる」からだ。この姿勢で国内では主に自動車、海外ではジョブショップからの信頼を得る。イタリアの某工場は数十台の横形MCを同社製で統一する。質の良いシンプルな横形MCで、カスタムできればなお嬉しい。そんなとき同社に声がかかる。
 何でもやる。その姿勢を表す逸話が竹用の加工機だ。大学が開発した特殊な刃物を使い生竹を粉砕し一発で粉にする機械。破砕した竹は美容液を抽出したり生分解性樹脂の成分になる。竹は自然物で形も様々だが可変式のクランプ機構を開発した。カスタマイズを厭わない姿勢。その最たるものと言える。

■専用機と標準機のはざまで

 同社は今年、横形MCKH-4200kai」を発売。「現状のベストは尽くした」と紀和社長は話す。間口1620㍉の「他にないコンパクトさ」が強み。割出速度を従来機比2倍に高めクランプ力も上げた自社開発の円テーブルを採用したのは「自社製なら好きにできる」ためだ。実際、初号機を納入したスウェーデン企業からは円テーブルに様々な改造依頼があった。「さっそく奏功しました」と紀和社長は笑みを見せる。各軸の送りも早め切粉対策も強化した。特にスペースがないジョブショップで好評という。
 主軸トルクも高めた。切削量が従来機比で倍近く増加。チタンなど難削材を削れるため医療・航空業界も視野に入る。テストカットで他社の50番機で行う加工を、同機で難なく代替することもできた。50番機からの置き換えならもう1台余分に機械を置ける。
 「国内でも海外でも、フレキシブルな対応ができるメーカーとして名を売りたい」。紀和社長の方針は一貫している。「要するにニッチを狙うと。変わったことをやりたいが専用機を買うほどでもない場合にKIWAを思い出してほしい。ちょっとしたカスタマイズでお客様の生産性は上がる。これからも専用機と標準機のはざまで存在感を発揮したい」


Profile


1869年創業 三重県名張市

BT40およびBT50の横形・立形MCが主力。ガラス・セラミックス加工機も手がける。標準機をベースに標準オプションに留まらない柔軟なカスタマイズを行い、時にはイチから設計することも。同社の立形MCはテーブルが固定でコラムが3軸駆動するコラムトラバース式を採用しているが、これもストローク改造などカスタマイズに有利に働く。
紀和マシナリー写真2.jpg

紀和伸政社長



2024925日号掲載)