MEX金沢2026の展示を振り返る~中東危機や人手不足に「解」
- 投稿日時
- 2026/05/22 10:17
- 更新日時
- 2026/05/26 16:29
「心躍るテクノロジー 未来がここから動き出す」をテーマに、5月14日から16日の3日間、石川県産業展示館で開催された「MEX金沢2026(第62回機械工業見本市金沢)」は、2万9486人の来場者を集め、大盛況のうちに幕を閉じた。主催する石川県鉄工機電協会の調査では、回答企業の実に90%以上が「中東情勢(ホルムズ海峡危機など)による調達や費用面での影響がある」としており、従来の人手不足も含めビジネス環境がより厳しさを増す。その中で269社・団体がピンチをチャンスに変える様々な解決策を提案した。
解決策の一つとして、環境配慮と現場の負担軽減を両立する技術を提示したのが中村留精密工業だ。出展機である複合加工機「NT-Flex+」などには、直動軸をすべてグリス仕様にする独自技術が盛り込まれている。
「最新鋭機種は全軸グリス潤滑を採用し、オイル量を大幅に削減している。ユーザーからは『助かった』という声や、『次はグリス潤滑を採用したい』という声を多くいただいている。マシニングセンタ(MC)では一般的だが、旋盤での採用は難しい。元々は環境意識の高い欧州のユーザーからの要望を受けて研究・開発を進めてきたものだ」(中村匠吾社長) とし、ユーザーの維持管理コスト低減に貢献する。
これまでモノづくり産業用の工作機械やレーザー加工機などを中心に展示してきた澁谷工業。「当地域で深刻化する人手不足などの課題に対し、主力のボトリング事業で展開してきた新たなAIやDXの管理システムの新展開を初展示した。こちらは大手飲料メーカーにも豊富な納入実績があるので、これに製造現場の知見を融合させた」(澁谷英利社長) という。
「SHoPS(ショップス)」と名付けられた、同社が取り組む未来型スマートライン・スマートファクトリーの構築ソリューションだ。「我々はOT(運用技術)領域が得意だったが、IT領域と融合させることで工作機械業界など他業種にも貢献すべく、このシステムを横展開していく」(同社長)と、新事業展開への強い意志をのぞかせる。
今年1月に発売した「SPEEDIO HU550Xd1-5AX」の実機を持ち込んだのはブラザー工業。大型傾斜ロータリーテーブルを搭載し、直径680㍉、高さ400㍉という広い治具エリアを確保することで、横形の30番MCでありながら、ステアリングラックハウジングのような大きなワークの多面加工をこなす。
また、昨年10月に北陸営業所(金沢市)を新設した同社からは、池田和史社長も来場し、北陸地域を重視する姿勢を強く示した。
「地場の様々な産業のお客様に対し、これまでは名古屋から遠隔で貢献していた。しかし、名古屋のユーザーと北陸のユーザーとではニーズが全く異なる。これからはより地域に深く根を下ろして、適切な接点を密に持っていきたい」(池田社長)とした。

ブラザー工業の池田和史社長 「SPEEDIO HU550Xd1-5AX」を背に
■人手不足をチャンスに変える
「1直24時間」、すなわち夕方17時から翌朝8時までの15時間に最大32回の無人段取り替えを可能にする自動段取りロボットシステム「Smart Terrace AIO(スマートテラスAIO)」を展開する松本機械工業は、大幅なコストダウンを実現したアドバンスモデル「Smart Terrace Adv(アドバンス)」をお披露目した。
同機は、ロボット、ストッカー、安全カバーを一体化させることで、設置スペースを畳1枚以下に抑え、大幅な省スペース化とコスト削減に成功している。
「従来機種は全体をアルミフレームで覆い、その内部にストッカーを配置する構造だったが、新型機ではストッカー自体を筐体の一部として取り込む設計に変更し、剛性を十分に担保した。また、従来必要だったPLC(制御装置)を不要とし、ロボットのティーチングBOXのみで簡単に操作できるようにした」(同社担当者) とする。
システム全体がコンパクトにパッケージ化されたことで、加工機の段取り替えやメンテナンス時の移動が容易となった。これにより、「昼間は人が作業し、夜間はシステムを加工機横に移動させて無人運転を行う」といった柔軟なポータブル運用が簡易に行える。人手不足に悩む中小企業の現場へ、投資を抑えつつ夜間の稼働率を劇的に高める「現実的な自動化」の手法を提示し、来場者の強い関心を集めていた。

「Smart Terrace Adv(アドバンス)」と松本機械工業の松本 晶久社長
フルNC機や複合加工機による量産化・自動化が進む北陸エリアだが、現場では「治具づくりや単品試作のための汎用機」のニーズが根強く残る。しかし、それらを操れる熟練工の退職に伴い、技能承継が最大の課題となっている。
ニデックグループブースでは、グループ入りしたことでMEX初参戦となるTAKISAWAが出展。地元旋盤メーカーがひしめく中、こうした課題にアプローチするCNC普通旋盤「TAC-510(らくらく名人)」の実機を持ち込んだ。
「単品物をいかに効率よく加工するか」をコンセプトに開発された同機は、機能を厳選することで汎用旋盤の感覚で導入初日から扱えるのが特徴だ。
「職人のテクニックを活かしつつ、複雑なネジ切りなどの加工は、独自の対話ソフト『らくらくソフト』による簡単な数値入力でサポートする」(担当者) とし、自動化全盛の市場において、技能承継と試作・治具づくりを狙う緻密なニッチ戦略を提示した。
高松機械工業は、新機種のCNC複合精密旋盤「XYT-65Y」とCNCシングル旋盤「AT-1」を展示した。
「XYT-65Y」は上下タレットともにY軸を搭載し、加工および工程のバリエーションを大幅に向上させた。
一方の「AT-1」は、コストパフォーマンスを重視したシンプルマシンだ。操作パネルに大型15㌅のカラータッチパネルを採用しているほか、低重心設計を施すことで、女性や初心者オペレーターが作業する場合でも高い作業性とアプローチ性を確保している。

高松機械工業のCNCシングル旋盤「AT-1」
コマツ産機は、高い汎用性を誇るサーボプレス「H1F110-2」の実機を持ち込んだ。従来機に比べてプレス速度が11%向上したほか、品質管理面での機能も大幅にアップグレードされた。新たに全成形域での荷重変化を常時監視するシステムを搭載したことで、加工不良率の低減を実現。また、操作用モニターを大型化してタッチパネルを採用したことで、現場での使いやすさをさらに高めている。
津田駒工業は、家庭用AC100V電源で駆動する超小型加工機「i-CUBE」を出展した。同機は、自動工具交換装置(ATC)や盤面の拡張といったオプション群をさらに充実させて登場。もともとはAMの後処理用として開発されたものだが、最近は貴金属メーカーの試作など、開発側の想定を超える分野からの引き合いが増えているという。
また、主力であるNC円テーブルの分野では、多様化・複雑化する加工ニーズに対し、同社が誇る独自の駆動技術を前面に押し出した。
同社の北野浩司専務は「当社の強みは、ボールドライブ(ボールギアドライブ)、ダイレクトドライブ(DD)、ウォームドライブという3つの異なる駆動技術をすべて自社で保有し、ユーザーの加工目的やワークに合わせてこれらを柔軟に提案・駆使できる点にある。今回は特にボールドライブの高性能型を訴求している」と胸を張る。
北野専務によると、足元の円テーブル市場では2つの明確なトレンドが生まれている。一つは、自動車業界を中心に普及が進む「ギガキャスト」への対応だ。「コンパクトな円テーブルでありながら、一体成形された巨大なワークを干渉なくダイナミックに回転させる(大きな振り回し)ニーズが急増している」という。
もう一つは、テーブルサイズ自体の大型化である。特に外径800㍉や1000㍉クラスの大型NC円テーブルに対する引き合いが非常に強い。「これは、北米を中心に活況を呈している航空・宇宙産業向けの部品加工用として、大型機の需要が大きく伸びているためだ」 と語り、確かなグローバル需要への手応えを示した。
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【インタビュー】中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏
【インタビュー】石川県鉄工機電協会 会長(澁谷工業社長)澁谷 英利 氏
執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)