インタビュー
中村留精密工業 社長 中村 匠吾 氏
一新した体験型ショールームで来社30%増めざす
- 投稿日時
- 2026/05/26 09:18
- 更新日時
- 2026/05/26 15:16
省スペースでパワフルな「複合加工機のダウンサイジング」提案
中村留精密工業は新工場内に体験型ショールームを拡張オープンし、能動的なコンテンツや実機デモを通じて来社数30%増と受注拡大を目指す。また、他社機にも搭載可能な独自のAIソリューションや、MEX金沢の出展テーマである「複合加工機のダウンサイジング」の狙いなど、顧客の課題解決に挑む同社の最新の取り組みと成長戦略について中村匠吾社長に聞いた。

MEX金沢に出展した「NT-Flex+」について説明する中村匠吾社長
――最近の事業環境や進捗について。
欧米を中心にアジア圏も伸びており、事業環境は比較的好調だ。最先端の複合加工機による「工程集約」への関心は世界的に極めて高い。ステンレスやチタン、インコネルといった難削材加工は当社の得意分野だが、現在大きく伸長している航空宇宙・半導体・電子部品市場に対し、高剛性かつコンパクトな当社の機械が非常によくフィットしている。また、従来は比率が低かった自動車業界でも、生産ロットが小さくなった(多品種少量生産への移行)ことで、複合加工機による一発加工が狙える領域になってきた。現在は特に、ギヤ(歯車)加工の複合化提案に注力している。
――本社ショールームをリニューアルした狙いは。
新工場「MAGI」の一角に、コンセプトと定義を明確にした「体験型ショールーム」を拡張オープンした。キャッチコピーは「見えない課題を、見える価値へ。」だ。
例えば、当社の対話型NCプログラミングソフトウェア「Protona(プロとな)」を使い、一つの図面からプログラムをどれだけ早く作成できるかを、タイムチャートを表示してゲーム感覚で競い合ってもらうような、能動的なコンテンツを用意している。また、入力ミスによる衝突時の衝撃を大幅に軽減する「エアバッグ」機能についても、実際に目の前で機械がぶつかるデモを見ていただき、その効果をその場で実感してもらう。ショールーム化により、訪問者数を従来比で30%向上させる計画だ。当社は「工場にお越しいただければ、高い確率で受注につながる」という自負を生産現場に持っているため、今回の投資対効果には非常に期待している。
――AI・IoTソリューション「Dr. Tool」は、メーカーを問わず搭載できるのが特徴だが、プラットフォーム化を目指しているのか。
他社製の機械にも搭載できる点が最大の強みで、メーカー間のコラボレーションも進んでおり、他社の展示ブースに当社のシステムを取り付けて出展してもらうケースも増えている。ただ、私たちの定義では、これは「プラットフォーム」ではない。まずはドリル折れの検知や摩耗予測によって、ユーザーに導入効果を明確に実感してもらえる「キラーアプリ」を作るという認識だ。これ単体でも稼働するし、既存のプラットフォーマーと繋ぐことも可能だ。当社のハード(自社機)だけではユーザーのお困りごと解決には物理的な限界があるが、世の中にある「既存の工作機械のお困りごと市場」ははるかに大きいからだ。また、これに加えて、時刻や測定寸法を専用ソフトウエアに入力するだけでAIが学習し、最適な熱変位補正モデルを構築する「サーモナビゲーターAI」の開発・普及にも注力している。
――今回のMEX金沢における出展の狙いと内容は。
全体のコンセプトは「少ないスペースで最大の価値を生む」だ。機械のコンパクトさは、ワークサイズから逆算して極限まで追求している。その上でパワフルかつ高精度であることは必須だ。自動車がターボ技術を用いて排気量をダウンサイジングしたように、これは「複合加工機のダウンサイジング」だと言える。
例えば、今回の出展機「NT-Flex+」は、機械奥行きがわずか1.38mという極めて省スペースな2タレット精密CNC旋盤だ。R側主軸には+X軸を追加し、NCテールストックを使用すれば、長尺ワークの加工も挙動を邪魔されることなくスムーズに行える。電気部品や高精度部品を手がけるユーザーにとって、まさに最適な一台となっている。
執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)