【特別座談会】安川電機ら5社が語るAIロボティクスの未来
- 投稿日時
- 2026/05/25 09:40
- 更新日時
- 2026/05/25 09:56
日本の良質なデータが勝ち筋に
産業用ロボットに続き、作業者とワークフロアを共有できる協働ロボットやヒューマノイドが各種登場している。動きの精度・滑らかさが増し、イレギュラーな対応もできるようになってきた。その実現にAIが密接に関わっている。パソコン業界がウィンドウズの登場で一変したように、ロボット業界もフィジカルAIの利用で自律性が増し、使い勝手はけた違いに高まりそうだ。ロボットに関わるメーカーやSIerに集まってもらい、現状と今後を語ってもらった。

製品の多品種化に対応するのがロボット
3D、AIに明るい芽
――まずは自社紹介を兼ねて得意分野や最近のトピックスをお話ください。
岡久学(安川電機) 当社は設立が1915年で、今年はきりのいい111年を迎えました。九州の地で生まれ、石炭を楽に搬送しようとモーター作りから始まりました。そのモーターを軸にして、モーターを回すためのインバーター制御、サーボモーター、それらを応用したロボットなどを展開しています。当社の特徴は単なるモーターでなくメカと電気を融合する「メカトロニクス」を提唱しながら、近年はそれに3i(アイキューブ)と3つのiをつけ、データマネージメントでメカトロニクスをより進化させようというコンセプトで進めています。
――自律性能をもつ次世代ロボットとして「MOTOMAN NEXTシリーズ」を2023年末から展開され、ラインナップが充実してきました。
岡久 新シリーズは7機種に広がりました。これらには頭脳であるGPU(Graphics Processing Unit、画像処理装置)を搭載し、ロボット制御と一体化した1つの新しいプラットフォーム的なものになっています。6軸制御の産業用ロボットやISO10218で規定されている、柵レスで使える協働ロボットなどで構成し、今後さらにシリーズを充実させる計画です。
菅井康介(ABB Robotics Japan) ABBは今年1月、ロボット部門が分離独立しABB Robotics Japanという別会社になりました。昨年報道発表されたとおり、今年の後半には我々はソフトバンクさんのグループに入る予定です。ABBは非常に歴史が古く、ヨーロッパの産業革命でできたような会社で、様々なものの制御を得意としています。その中の1つにロボット事業があります。ロボットメーカーは日本国内にも安川電機さんはじめたくさんありますが、我々は制御の部分、精度の高い動きが得意なメーカーだと自負しています。それに加えて「RobotStudio」というシミュレーションソフトをもち、実際のハードウェアとしてのロボットコントローラーと同じファームウェアのバーチャルコントローラーを動かせます。デジタルツインという言葉が出てくる前から現実世界との差異が非常に少ないシミュレーションができるのが特徴です。そこに最近、AI技術が入ってきています。
――ソフトバンクグループに入られることで大きく変化しそうですか。
菅井 今のところ特に変わるという話は聞いていません。ソフトバンクグループの中で独立した会社として、今までABBとしてやってきたロボットの事業を続けていくことになります。我々は元々、AIに非常に力を入れており、ソフトバンクさんもAIに強みがあるので、両社が融合することで今までできなかったことができるようになるプラスの面があると考えています。
――米エヌビディアのライブラリを統合した「RobotStudio HyperReality」を今年の後半に提供を始める予定です。そのシミュレーション画面はあまりにもリアルです。
菅井 そうなんです。正直にお話すると、我々も報道以上のレベルの話はまだあまり知らず、皆さんと同じように驚いています(笑)。ただ、従来できなかったことができるようになるのは確実で、そういう意味では楽しみなコラボレーションだと感じています。
高丸正(高丸工業) 創業63年の当社は、私の父が始めた設計事務所からスタートし、自動機などをつくる延長でロボットシステムをつくるようになりました。私は大学を出てすぐに会社に入りましたが、先代がその10カ月後に亡くなり、すぐに私が引き継いで今年で41年になります。先代と一緒に仕事した10カ月の間に私が担当したのがロボット関係の仕事で、それだけが今残っています。売上のほぼすべてがロボットか一般機械のインテグレーションです。私が初めてロボットを見たのは1978年。当時高校生で、アルバイトで当社の現場で職人さんたちと一緒に機械の組立・運転をしていました。その時に建設機械向けの直交座標のアーク溶接ロボットが25㍉くらいの鉄板を真っ赤にして溶接するのを見てすごいなと感心していたのを覚えています。その時ふと思ったのが、このロボットがなければこの部品はどうやって作っていたのか。社員に聞くと自動溶接機でした。ではなぜそれをわざわざ溶接ロボットに置き換えるのかと聞くと、ワーク品種が増えたからだと言います。ということは創生期のロボットは、製品の多品種化に対応するために開発されたわけです。それが我々のロボットに対する基本的な考え方です。すなわちロボットとは多変種少量生産のための省力化装置です。ところがロボットをいち早く導入した自動車や家電メーカーの使い方を見て、多くの企業さんはロボットは大量生産に向き、多品種少量生産には向かないと考えます。でもそうじゃない。プログラムを変えれば品種の違いに合わせて異なる動きをする。我々はそう説明して多品種少量生産をする中小企業へのロボット導入に一番力を入れています。おそらく中小企業向けのロボット導入では当社は上位にあると思います。これまでに海外の工場も視察しましたが、おそらく20、30人の会社でロボットを使える実力があるのは日本だけだと思います。だからロボットを使って合理化すれば日本のモノづくりは強くなります。
――ただ、中小企業は導入に踏み切れません。
高丸 中小の社長は「将来のモノづくりはロボットでせなあかん」と認めるのですが、こう付け加えます。「でも今じゃない」。ロボットを使える社員がいないからです。そこで当社はロボットを売るにはロボットを使える人間を増やさなければと、2007年からロボットの安全教育を中心とした人材育成事業を始め、今では年間1300人ほどに資格発行しています。安全教育では最多と思います。ロボットが主に大量生産に使われているのはそのティーチング作業が大変だからです。そこで当社はパソコンのマウス操作でロボットをティーチングする装置を商品化しました。各メーカーさんのオフラインプログラミングソフトの実画像化を進めたわけです。インターネットを使って遠隔地からティーチングできます。

高丸工業が開発した遠隔操作溶接ロボットシステム「WELDEMOTO」を操作する都立蔵前工科高校の生徒(昨年12月に実施した出前授業で)
泉悠和(Mech-Mind) 当社は中国で2016年に創業し、日本では5年ほど前から事業を展開しています。ロボット用の3Dビジョンの開発、販売を行っているほか、ワークの位置を把握するための画像処理ソフト、さらにその見つけたワークを取りに行くためのロボットの経路生成ソフトなど一式のソリューションとして販売しています。3Dビジョンの世界販売は50以上の国・地域で累計2万4000台以上です。過去よりAIを活用しており、ワーク位置を正確に把握するための情報処理ができる機能もあります。従来人が行っていた複雑な作業をロボットに置き換えられるようなソリューションの準備が整ってきています。
――累計販売が2万4000台以上とはすごい。この5年間はマーケットシェアナンバー1だそうです。日本市場での販売はうまくいっていますか。
泉 日本市場に参入してまだ5年ほどですが、非常に大きな伸びを記録しています。ただ、やはり知名度、認知度という点ではまだまだと考えます。引き続きしっかりとアピールしていかなければなりません。
原田寛(YOODS) 2004年創業の当社も、ロボットビジョンメーカーの1社です。私は以前、宇部興産(現UBE)の機械事業部でダイカストマシンの制御を担当し、さまざまな現場を経験してきたためFAの現場には比較的馴染みがあることを強みとしています。創業当初はKDDI様向けのネットワーク系ソフトウェア開発に携わっていましたが、比較的早い段階で「画像処理は面白そうだ!」と感じ、事業の軸をそちらへシフトしました。現在、画像処理事業では主に製鉄所向けで文字認識等の特殊な画像処理システムを開発しています。製鉄所の現場は屋外環境に加え、屋内でも粉塵が舞い、真っ赤に熱せられた鉄が流れるような過酷な環境です。そのため特殊な画像処理システムが必要になります。一方で、2D画像処理の分野ではキーエンス様が非常に強く、2D市場で大きなシェアを獲得するのは難しいと感じていました。そうした中、2011年頃から当社は3Dシステムの開発を開始しました。当時、3D方式の中では「位相シフト方式」が最も有効だと考え、その実現にはプロジェクターが必要でした。しかし、3D黎明期には多くの企業がOA向けプロジェクターを使用しており、これは理論的な実現に留まるものであり、FA現場での利用には耐えられませんでした。そこで当社は、まずFA現場で使用可能なプロジェクターの開発に着手しました。その両側にカメラを配置することで、位相シフト方式によるステレオビジョンカメラが完成します。それが現在の当社の主力製品となっています。このカメラの用途として最も有望だったのがロボットの「目」であり、当社がロボット分野に本格的に取り組み始めたのは2015年頃です。またAIについては2020年頃から取り組み始めました。正直なところ、当初はAIをかなり懐疑的に見ていました。原理不明の推測ベースでロボットを動かすのは危険であり、そのようなものはFA現場では使えないと考えていたからです。しかし、その後状況が大きく変わり、「使わなければまずい」と感じるようになりました。弊社におけるAIの主な用途は、カメラで取得したデータの中から対象物を見つけ出すことです。さらに、検出した対象について画像や点群データを部分的に切り出し、得られた結果の検証、物体の位置や姿勢を高精度に認識する処理も行っています。現在はフィジカルAIによってロボットを自律動作させる分野にも少しずつ取り組み始めています。当社のビジョンの事業規模はまだまだ小さいですが、これまで培ってきたソフトウェア技術、光学・カメラ技術、さらにAI認識技術などを生かし、FA現場への適応力も踏まえながら、今後も価値ある製品を提供していきたいと考えています。
――YOODSさんはファブレスメーカーでしょうか。
原田 そうです。当社で開発、設計まで行い、実際の製造はいわゆるEMS(電子機器製造サービス)の形です。
自動化するとデジタルデータが残せる
数値そのものが商品になる
――AIや仮想空間を利用した自社の取り組み状況をお話しいただけますか。その利点や成果、課題もお聞きしたいと思います。
岡久 当社はAIを活用した新シリーズ「MOTOMAN NEXT」を展開しています。そのプラットフォームを使って知覚・判断・行動を1つの作業単位としてどんどん回し多様な作業を完結していくことになります。従来の自動車産業などで決まった仕事をするにはこれまでの産業用ロボットでよいのですが、扱うモノが変わる、モノが不定形である、環境が変化する――という仕事は自動化しにくい。そうした自動化の検討段階にも至っていないような未自動化領域に対してAI、ロボティクスが使えるのではないかと我々は捉えています。ただ、MOTOMAN NEXTを社会実装するにはPython(ソフト開発やデータ分析に使える汎用性の高いプログラミング言語)への対応、AIの知識などが必要になります。我々はユーザーさんと一緒に様々な実証実験をしながら、多様な対象物、作業に対応しています。新たな判断力を付加すれば、一度現場に導入してからもどんどん進化させていけるのがAIロボティクスの良さの一つです。

安川電機のAIロボット「MOTOMAN NEXT」による梱包作業の自動化(昨年12月の国際ロボット展で)
――安川電機さんは昨年末の国際ロボット展でヒューマノイドも発表されました。今後はどのロボットにもAIを搭載していくイメージでしょうか。
岡久 そうですね。今後、自動化される仕事には判断力が求められます。たとえば先ほど話題に出た溶接では、定型的な作業はプログラムに従ってできるでしょうけれど、作業後に不具合がないか、どのように補修するか、不良品だから取り除くのかということも含めてロボットが担えないと、単機能だけで終わり、求められる多能工の役割を果たせません。こうした作業向けにはすべてAIが使われると思います。80%の成功確率だけれどまずはロボットに実行させてみて、作業後にそのチェックをして適切に処理する、という使い方もあるかもしれません。使い方が見えてこないと社会実装になかなか繋がらないと思います。また判断力がつくと、自律的に動作を作ることにもなります。
菅井 当社もAIを使った製品を色々出しており、たとえば物流センターで使われるマスターレスのピッキングロボットやAMRのナビゲーションなどがあります。最近、展示会で来場者からのフィードバックが非常によかったものにRobotStudioの中の自動で移動経路を生成してくれる「オートパスプランニング」があります。これが面白いのはA点からB点に最速でモノを持っていきなさいと指示すると、普通は直線で動きます。ところがオートパスプランニングでAIを使うと少しRがついたような動きになることがあります。6軸ロボットであれば6つの軸を同時に動かしながらTCP(Tool Center Point)が移動するので、TCPが直線で動くことが必ずしも最速になりません。それを人間の頭で計算してRがついた動きを作るのはなかなか難しいです。こうしたAI搭載の製品はたくさんありますが、ベースとなる当社の考え方に「AVR(Autonomas Verstile Robotics)」があります。日本語で言うと自律型汎用ロボットで、これを実現するのに6つの重要な要素があります。目(ビジョン)、グリッパー、判断するための脳、脚、人がロボットに指示するためのインターフェース。そして最後の6つ目が一番重要だと思っているモーションコントロールです。見て判断して動かすことを正しく考えたとしても、その通りにロボットが動かないと安全性は担保できません。このAVRの考え方をベースに当社ではいろんな機能を追加した製品を今どんどん開発しています。一方で、私が感じる課題もあります。AIはなんでもできると過大評価するユーザーさんが一定数いるようで、正しく理解してもらえるように働きかけていかないといけません。

ABB Robotics Japanの「RobotStudio」シミュレーション(左)と新しい「RobotStudio HyperReality」
高丸 当社はこれまでメーカーさんが用意してくれるAIアプリケーションを使ってセンシングに使うなどしてきました。当社にAIアプリケーションを開発できる人材はいませんので、どちらかというと世の中にあるAIをいかにしていろんな会社さんに使っていただけるようにするのかが主流です。ですから当社はユーザーに近い。ユーザーの感覚でみると、ハードや画像ソフトのメーカーさんが一生懸命取り組んでいるAIの開発は、どうも実際の日々の作業から遠いと感じます。悪く言うつもりはまったくありませんが、最近のAIという言葉にしても独り歩きをしているような気がします。AIがどのようにして多くのユーザーの役に立つのか。その視点が少し欠けているように思います。たとえばピッキングなどの動きの生成にAIを使うことで本当に多品種少量生産を行う企業の生産性が上がるのか。また従業員15人くらいの板金屋さんに溶接ロボットの導入を提案すると、必ず言われるのが「ロボットで溶接するのと、人が手で溶接するのとどちらが早いか」。ロボットはティーチングが必要ですからその時間に溶接する時間を足したものが、人が溶接する時間よりも短くなければ意味がないとおっしゃいます。一見正しいように聞こえますが、そうではありません。私がパソコンを使い始めた30年前にも同じようなことが言われました。ワープロと手書きのどちらが文章を作るのが早いかと。CADの導入時も、面倒な作業をして図面を書くより手書きの方が絶対早いと自信たっぷりで言われました。ところが今、そんなことを言う人はいませんよね。コンピュータが普及した理由は、文書や図面を作成するとデジタルデータが残るということにみんな気づいたからです。上書きして使い回しができるし、検索もできる。フォーマット化を進められます。どちらかと言うと、まずそちらをすべきだと私は思います。動作を勝手にAIが作ってくれるのではなく、たとえば溶接をロボット化すると作業の数値化が進みます。ただ、溶接作業には変数がたくさんあるので、一見同じ溶接でも組合せは無限にあります。その中でどれが1番よいかという判断をAIにさせることができれば、溶接した後の歪み取りなどに生かせます。当社はどちらかというとそちらに進もうとしています。作業を数値に置き換えられれば、今度は数値そのものが商品になります。私が長年、この業界で仕事していて思うのは、ロボット業界はコンピュータ業界の後追いをしているということ。すなわちコンピューター業界の歴史はロボット業界の未来であると。各ロボットメーカーで異なるティーチング方法を統一して扱いやすくしようとするのは、ウィンドウズの登場でパソコンの利用が一気に広がったことを想起させます。
泉 我々はワークを検出するのにAIを主に使用します。不定形物や、定形物でもワーク同士が重なり合って3Dデータでは認識しづらい時に、AIを補助的に使って検出を安定させます。またYouTubeなどで公開させていただいていますが、AIを音声認識にも活用しています。たとえばバナナを取ってきてと音声で指示すればロボットが自動でそれがある場所を探して取りに行くというような感じです。もう1つは、経路生成ソフトがあります。仮想空間でどんな経路をたどれば周りにぶつからずにモノを取りに行けるのかを計算してくれるソフトです。それ以外に我々がAIを使う用途してオンラインコミュニティーがあります。使い方などで質問のあるお客様に対して、掲示板のような形で生成AIを利用して回答させていただくサービスです。モノづくりにAIを利用するにあたっては多少の専門性、前提知識が求められます。チャットGPTなど生成AIは直感的に使えるユーザーインターフェースをもちます。AIロボティクスもそのレベルにしていかないと広がらないかもしれません。
原田 当社におけるAIの主な活用領域は、カメラで取得した2Dデータからワークを検出することです。検出した部分のみを3Dデータ化し、ワークの位置・姿勢を認識します。これは当社に限らず3Dビジョンにおける一般的な活用方法です。最近では他社ビジョンメーカーによる興味深いAI活用事例も登場しています。たとえばCADデータを利用し、仮想空間上でワークの位置や姿勢を変えながら、仮想カメラで大量の画像を生成する手法です。通常、AIを活用するには何千枚もの学習用画像を用意する必要があり、その準備には大きな手間がかかります。しかし、この方法では仮想空間内で画像を大量生成し、それを使って学習を行います。つまりAI学習そのものを仮想空間内で完結させるアプローチです。この手法を使えば、1枚の実画像から3Dの位置・姿勢推定も可能になるため、非常に評判が良く導入も進んでいると聞いています。また近年では、従来のルールベースや画像処理アルゴリズムによる計算だけでなく、人間が目で見て遠近感を把握するように、AIによって物体の位置・姿勢を推定する技術も実用段階に近づいています。特に中国の論文を見ているとこの分野の進歩は非常に速く、驚かされます。今後1~2年でこうした技術の実用化はさらに進み、自動運転向けカメラなども従来型の画像処理ではなくAI前提の構成へと置き換わっていくと思います。
日本の良質なデータが勝ち筋に
3Dビジョンの高速認識に課題
――自社の今後の方向性や、そのために必要になる技術について近い将来の話をしていただけますでしょうか。
岡久 AIを含めたロボットの社会実装をどれだけ進めていけるか。これをブームに終わらせるわけにはいきません。我々はロボットメーカーに過ぎませんが、1つの非常に大きなサプライチェーンもしくはビジネスモデルができると思います。今回お集りのメーカーさん、ユーザーに近いSIerさんがつくりあげるシステムの至るところにAIは使えるはずで、その1つのツールとしてロボットもあると私は捉えています。多数の製品が集まれば事を成せるというものではありません。様々な企業とパートナーとして連携してユースケースを作り上げていく必要があります。それが私が導入にこだわる1つの理由でもあります。AIの判断力を利用して人の作業の置換えをしていく。それが社会貢献に繋がると思います。一方で我々はメーカーですので、AIロボティクスを進化させることも当然ながら必要です。現在の6軸ロボット、柵レスの協働ロボットだけでなく、双腕ロボットという作業力を持ったハードウェアも必要になってきますので、今後も新製品を世の中に出していきます。その先にヒューマノイドが、今は踊ったりバク転したりと素早い動きが強調されていますが、様々なタイプのロボットと融合するのではないかと思います。バーチャルとリアルをつなぐには、結局はリアルできっちりと動くことが欠かせません。冒頭で紹介しましたように当社はモーターから生まれ、モーターをコアにした会社ですので、モーションにこだわりながら進めていきます。
菅井 私も大きな意味では安川電機さんと同様で、ロボットはあくまでも1つのパーツで、ロボットだけでは何もできません。AIの時代になっても周辺機器メーカーさん、SIerさんとの関係性は変わらず必要です。そのうえで、ロボットメーカーとしてハードウェアもどんどん新しいものを開発していくのですが、冒頭のお話にもありましたようにエヌビディアさんと提携するなかで、バーチャルの世界で確認できることがどんどん増えていくように開発を進めています。具体的に言うと、今、シミュレーションでロボットの動きはかなり正確に出せます。ただし何かをピッキングするときに、スピードについては0・1秒でいいのか0・08秒なのかはやはり実機でテストし、その結果をシミュレーションに入力することが必要です。その際の製品の表面の状態などまで含めたシミュレーションができるようになりつつあります。それはピッキングだけでなく、たとえば我々は新幹線の研磨にも携わっており、力覚センサーなどを使って実機で再現させていますが、そこもRobotStudioの新しいバージョンを使ってシミュレーションの中で検証ができるようになることを期待しています。
高丸 少し話がそれますが、いま世の中で車を運転している人はたくさんいます。でもほとんどの人は車の構造、内燃機関やミッションの仕組みなどを理解していません。パソコンも小学生でも使いますが、同様に彼らはパソコンの仕組みや原理原則がわかっているわけではありません。ところがいまロボットをティーチングする人はロボットの構造や制御の仕組みをある程度理解しています。理解しないと使えないような代物だからです。仕組みはわからないけれど使うだけなら使える、という人が大多数にならないとロボットは普及しません。その解の1つが当社の遠隔操作です。とにかく使い方を簡単にしよう、各メーカーでティーチングの仕方が違うのを統一化しようと取り組み、まずは当社の工場で使えるロボットにしました。要するにロボット言語を意識しなくてもティーチングできるようにしたのです。その簡単さを展示会や高等専門学校などで紹介し、パソコンを使って西宮にある当社工場のロボットをティーチングして動かしてもらっています。溶接条件はあらかじめ我々が入力していますが、小学校2年生の女の子でも10分以内に実際に溶接します。今後、ポジショナーの適切な角度や溶接の電流値、スピードを決めるのにさらにAIを使うべきだと思います。パソコン業界はウィンドウズの出現で異なるパソコンでもトリセツを読まなくても使えるようになりました。そんな仕組みを目指しています。ターゲットは女子高生。女子高生が使えるものでないとロボットやAIの利用は広がりません。すでに在宅勤務で溶接やグラインダーがけができるようになりましたから、外国人労働者問題も解決できそうです。ネットにアクセスできれば職場は日本である必要はありませんから。時差を利用すれば24時間操業ができます。
泉 我々は3DカメラとAIの組合せをこれまでやってきました。それに加え、今年度の上期には2Dカメラを用意します。2Dカメラで撮ったモノや文字の判別をAIの機能を利用してできるようになります。一方で3Dカメラについては反射が強くて検出が難しかったモノを確実に認識する機能を付けた製品を拡充しつつ、検査工程への連携も進めていきます。またヒューマノイドロボットと3Dカメラ、AIの組合せにも取り組んでおり、展示会で実機を使って提案するなどしています。

Mech-Mindが近く発売する3Dカメラ(左)と2Dカメラ
――AIをうまく組み合わせれば2Dカメラでできることは広がるということですね。
泉 そうですね、AIを使えば2Dカメラの機能を限られた予算内で拡張できます。もちろん3Dカメラにはその良さはあります。お客様の要望や適材適所により、多くの選択肢を準備しているというところです。
原田 今後の方向性の一つは3D化と高速化です。現在のAI活用は、先ほどお話ししたように、主に3Dビジョン分野で進んでいます。特に、取得した2D画像をAIで処理し、その結果を最終的に3D認識へつなげる使い方が主流だと思います。一方で、最近では3Dの点群データそのものをAIで処理するアプローチも増えてきていると聞いており、当社としても早い段階で取り組んでいきたいと考えています。また3Dビジョンについては、どうしても処理速度が遅いという認識をお客様も当社も共有しています。そのため、現状ではターゲットが大型ワーク中心になりがちです。一方で、実際に出荷されているロボットの多くは5㌔グラム可搬クラスの小型ロボットであり、ほとんど停止することなく高速で動作しています。こうしたロボットに対応するためにはビジョン側にも撮影時間や認識時間の大幅な短縮が求められます。その実現手段としてAIの活用が重要になると考えています。また市場環境を見ると、日本ではロボットの出荷台数が伸び悩む一方、中国では桁違いの規模で拡大しています。ところが、主要な中国ロボットメーカーは、昨年12月の国際ロボット展に出展していませんでした。つまり、日本市場を主戦場として見ていないということです。こうした状況を変えていくためには、やはり日本国内でもロボットの出荷台数そのものを増やしていく必要があります。当社の納入先である大手自動車メーカー様などでは、ロボットを扱える技術者が多く、導入後のメンテナンス体制も整っているため比較的運用しやすい環境があります。しかし、中小企業ではロボットを扱える人材が限られており、何かトラブルが起こればすぐに当社へ対応依頼が来ることも多く、結果として当社側もなかなか積極展開しづらい現実があります。日本におけるロボット市場の活性化には、日本の産業を支えている中小企業へのロボット導入促進が必要です。弊社もビジョンの汎用・簡単化によりそうした状況を何とかブレークスルーしていきたいと考えています。

産業用ロボットへの取り付けが可能(ハンドアイ)なYOODSの高精度3Dビジョンセンサー「YCAM3D」
――これまでの各社さんのご発言に対して、質問や提案などはありますか。日本のロボットの出荷台数を伸ばさないと日本市場の魅力が低下し、ビジネス機会が広がらないという意見も出ました。当のロボットメーカーさんはいかがですか。
岡久 たしかに中国の出荷は伸びており、日本では伸びていないことは真摯に受け止めないといけません。ただ、それには国によるサポートの状況の違いもあるかと思います。また、中国の方は新しいものに抵抗感が少なく、電子決済などをほとんどの人が躊躇なく使っています。使わないと生きていけないという事情もあるのでしょうけれど。ただ、使いやすさを追求するのは、高丸工業さんがおっしゃる通り、ロボットメーカーとしての使命だと認識しています。我々もずっとEasy to useというコンセプトを掲げていますが、改善の余地はあります。女子高生がターゲット、と高丸さんは少し偏った言い方をされました。でもその表現、私も嫌いではありません(笑)。
菅井 高丸社長のお話は私、正座して聞いていました(笑)。安川電機さんもおっしゃられていましたが、Easy to useは我々も常に考えているところで、冒頭の話にもありましたが、ロボットを導入したいけれど使えない、なぜ使えないかというと使うのが難しいから。それが全世界共通の課題だと思いますし、ロボットメーカー各社は使う上でのハードルを下げることが必要です。その究極は女子高生が使えるように。私もすごく納得感があります。
泉 先ほど政府の支援が必要というお話がありました。これは重要で、別の機会でも何度も話題になります。このことはAIについても同様で、AIに対する教育環境の整備もあればエンドユーザーさんが理解するための支援もあります。方法はともかく政府の方々に積極的に取り組んでもらいたいところです。
岡久 AIロボティクスについて日本の勝ち筋は何なのかを考えていかないといけません。AIはやはりアメリカが相当リードしています。中国は国のサポートがあるにせよ、早く安くつくることに長けています。では日本はどうでしょう。大手だけでなく中小企業も製品・部品の品質をきっちりつくり込むことが強い。このノウハウを持っているのは主に高齢者であることに注意しなければなりませんが、これは大きな強みです。そのノウハウをきっちりデジタル化して残していく。AIもデータがないと機能しませんから。AIを発展させられるベースとなる良質なデータは日本にあり、それが1つの勝ち筋になるのではないかと私は思います。
(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)