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技能五輪AM職種 初の日本代表・宮堂選手(豊田自動織機)が上海大会へ参戦

投稿日時
2026/06/12 09:05
更新日時
2026/06/12 09:10
【写真左】豊田自動織機 生技開発センター 製造室 造形グループ 兼 技術技能ラーニングセンター 技能専修学園 技能五輪グループ造形グループ長 大岩 洋之 氏
【写真右】厚生労働省 人材開発統括官付能力評価担当参事官室 主任職業能力検定官 大村 倫久氏

人材育成と社会実装への道を拓く

520日から開催された「AM EXPO 名古屋」において、特別セミナー「技能五輪国際大会AM職種への挑戦」が実施された。今年9月に中国・上海市で開催される「第48回技能五輪国際大会」の「付加製造(AM)」職種に、宮堂頌也選手(豊田自動織機)が日本代表として初参戦する。同セミナーでは、豊田自動織機・技能五輪グループ造形グループ長の大岩洋之氏による訓練状況の報告などが行われた。


冒頭、挨拶に立った厚生労働省・2028年技能五輪国際大会準備室長の大村倫久氏は、「上海大会では64職種が開催され、日本からは57職種・64人の選手を派遣する。AM職種は2022年大会から追加されたが、来る上海大会に初めて日本人の宮堂選手が参加することとなった。ぜひ健闘を祈りたい」と激励。さらに「202811月には、ここ愛知県で技能五輪国際大会が開催される。ぜひ日本大会にも足を運んでいただきたい」と結んだ。

豊田自動織機で3Dプリンターを活用した造形支援を行う大岩氏は、ハード面の充実以上に「AM人材の育成」が最重要であると実感している。技能五輪国際大会は「実務上で技能を発揮する能力を競う大会」であり、宮堂選手や野中英樹コーチ(エキスパート)らと一丸で挑むこと自体が、社内外におけるAMの普及と実装を後押しする挑戦となる。 

AM職種の競技は4日間にわたり、定められた24時間の規定時間内で6つの課題をこなす。各国のエキスパートが自国以外の選手を、当日公開される採点基準に基づき厳格に評価し、総合得点で競う。

大岩氏は、前回のリヨン大会を参考に具体的な課題内容を説明した。ヘルメットを題材とし、金属3Dプリンターのスライスデーター作成、MEX方式(材料押出堆積法)樹脂3Dプリンターおよび光造形(DLP方式)3Dプリンターのデーター制作と造形、トポロジー最適化、ノギスなどを用いた手測定によるモデル化など多岐にわたる。

リヨン大会の課題の一例として、ヘルメットにアダプターブラケットを取り付けるための穴3点(外径3㍉)を正確に開ける治具の設計・製作が紹介された。使用機器はINTAMSYS社製の「FUNMAT PRO 310」、材料にはABS樹脂が指定された。宮堂選手も過去問として取り組む。ABS樹脂は熱収縮による反りや変形が生じやすい材料である一方、サポート材を増やせば後処理工数が増加し美観と精度の低下を招きやすい。大岩氏は「治具であるため、現場の作業者が安全で使いやすいか、持ち手は適切かなどを考慮しつつ、いかにサポート材をつけずに造形できるかがポイントになる」とした。同氏が挑戦の過程で最も大切にしているのは「3Dプリンターならではの設計(DfAM)ができ、美しく造形できるか」という点だ。「『除去加工(切削)でも作れる形状』は基礎としては大事だが、それだけでは世界の最前線では勝てない」と口調を強める。

技能五輪国際大会は、オリンピックのように超人的な能力を競うというより、実業務の先行例としてAMの社会実装の道を切り拓き、舗装していく側面を持つ。同時に、日本人スター選手が世界で活躍することで競技そのものが認知・普及していくスポーツ的な側面も併せ持つ。大岩氏は「宮堂選手が今大会で活躍することで、2028年の愛知大会では、当社だけでなく多くの日本企業がAM職種に参画し、切磋琢磨しながらさらに高みを目指したい」と展望を語り、講演を締めくくった。



(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)