海事展に3万5千人 前回比14%増
- 投稿日時
- 2026/05/13 13:14
- 更新日時
- 2026/05/13 13:17
全ての道は『造船』に通ず
国際海事展示会「Sea Japan 2026」が4月24日までの3日間、東京ビッグサイト西1〜4ホールを中心に開催された。3日間の累計来場者数は3万4268人と過去最高を記録し、前回展(2024年)の2万9983人から約14%増加した。出展社数も約630社と過去最高を更新。造船・海運・舶用機器の最先端が一堂に会するこの展示会の活況は、官民を挙げた造船再興の気運を映しているようだった。
業界を取り巻く状況は切迫している。かつて世界シェアの過半を握っていた日本の造船業は、24年時点で13%程度まで低下。会場の造船業者からは「(昨年までは)静かに消えゆく産業なのだと思っていた」という声が漏れた。
事態が急変したのは、昨年11月に高市政権が設置した「日本成長戦略本部」の重点戦略17分野に、「造船」が「AI・半導体」に次ぎ2番目に位置付けられたことだ。政府は「造船業再生ロードマップ」を公表し、現在の年間約900万総㌧の建造量を35年に1800万総㌧へ倍増させる目標を掲げる。10年間で3800億円規模の「造船業再生基金」を設け、対象設備への投資には最大2分の1を補助するなど本気だ。
展示会場も活気づく一方、最大の壁はひっ迫する生産能力と人手不足だ。受注残は年間生産能力の約3倍に当たる2500万総㌧に達し、会場では「3年先までドックは埋まっている」といった声も聞かれた。
既存ドックは止められず、新設するにも数年かかる。ドックを止めずにどう建造数を増やしていくかが喫緊の課題になるが、そこにさらに重くのしかかるのが人手不足。特に現場の熟練人材は高齢化が急速に進んでおり、生産性の向上と技術継承の両立が必須となっている。
そこで、(一社)日本船舶技術研究協会が披露したのが、特に人手不足が深刻な中小の造船所でも導入がしやすい自動溶接ロボットシステムだ。ファナック製の3㌔可搬の協働ロボットを活用した「小型可搬型溶接ロボットシステム(CADレス型)」は、女性などでも持ち運び可能な軽さが特徴で、マグネットクランプで固定すれば自動で溶接する。技能いらずで、一人の作業者が複数台管理できる状態を目指す。同協会の担当者は「今年度末までに現場実証を終え、来年度から本格導入いただける状態を目指している。政府からは早く仕上げてほしいと言われている」と先を急ぐ。

(一社)日本船舶技術研究協会が開発を進める小型可搬型溶接ロボットシステム(CADレス型)
■ロボも水素も宇宙もデータセンターも
政府は将来的に市場シェアの2割程度の確保を目指しているが、その際に重要となるのが次世代に主力と目される代替燃料船の存在だ。EU公開データに基づく燃費比較で日本船の評価は中韓を上回っており、この強みをテコに代替燃料船で市場を主導する構想が「再生の勝ち筋」とされる。一方で、現状の代替燃料船のシェアは市場全体よりも低く5%程度。目標とは大きな乖離がある。(一財)次世代環境船舶開発センターの担当者は、今後の変革に備え製品開発と市場開拓に全力で取り組む必要があるとの認識を示す。
会場では川崎重工業が開発を進める液化水素運搬船の模型が展示されるなど、代替燃料船の開発なくしてシェア拡大はないとのメッセージが示された。同社は22年に世界初の日豪間液化水素の海上輸送・荷役に成功した「すいそ ふろんてぃあ」(1250㎥型)を開発。今年1月には日本水素エネルギーと共同で世界最大となる4万㎥型液化水素運搬船の造船契約を締結するなど動きを加速させている。
宇宙やデータセンターとの融合も現実味を帯びてきた。日本郵船はJAXAの宇宙戦略基金事業の採択を受けて開発し、昨年7月に日本海事協会からコンセプト承認(AiP)を取得した再使用型ロケット第1段の洋上回収システムをパネル展示した。日本郵船の名和真也氏は「高市政権の重点投資分野に宇宙も造船も入っている。この掛け算はまさに追い風」とコメント。日本の技術的な優位性について「北米での取り組みはフロリダ沖の穏やかな海で回収している。我々は波が高い太平洋上で、船が同じ場所に留まって水平を保ちながら回収することを目指している。それは他にはない技術だ」と説明する。
回収船の精密な制御を担うのが、常石ソリューションズ東京ベイ(旧三井E&S造船)の自動船位保持装置「DPS」(Dynamic Positioning System)。2月に南鳥島沖でレアアース採掘を行った地球深部探査船「ちきゅう」に搭載された実績を持つ技術で、自動運行船などへの活用も模索されている。
他にも、3月25日に実証実験を開始した、NTTファシリティーズや横浜市などと共同で取り組む再エネ100%で稼働する世界初の洋上浮体型データセンターなどがパネルで紹介された。
(一社)日本中小型造船工業会の村上浩章課長代理は「船はある種一つの大きな建物を造っているようなもの。ここが盛り上がれば鉄も機械も電気も、あらゆる産業に恩恵が及ぶ。業界をまたいだ協力なくして建造量倍増は実現しない。ぜひ、様々な方に関心を持っていただき、皆で盛り上げていきたい」と語る。ワンチームでこの波に乗れるかが日本の造船産業復興のカギとなりそうだ。

造船は宇宙ともつながる。日本郵船のパネルから
(2026年5月13日MonoQue掲載)