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AM EXPO名古屋の展示を振り返る ~試作脱し航空宇宙・防衛分野の実用化へシフト~

投稿日時
2026/06/12 09:11
更新日時
2026/06/12 09:17
AMEXPO会場

材料・工法の新技術が随所に

ロケットエンジンの製造において、AM技術がもたらす最大のパラダイムシフトが、燃焼部における「極限の冷却構造」の一体成型だ。猛烈な熱に晒されるロケットエンジンは、内部に張り巡らせた微細な配管に燃料などを循環させて自らを冷却する、極めて複雑な構造を持つ。従来製法では膨大な部品の溶接や接合を幾度も繰り返すため、コストや納期、信頼性の面で大きなボトルネックとなっていた。

しかし、AM技術を活用すれば、複雑な冷却流路をあらかじめ内包したパーツを、ディテールまで一気通貫で造形することが可能になる。これにより、従来は耐熱性の問題から使用が難しかった、軽量かつ熱伝導性に優れるアルミニウムなどの素材を燃焼部を含む構成部品に採用できる可能性も浮上する。部品数の劇的な削減と軽量化、そして冷却効率の最大化を同時に達成するAMの真価が、宇宙開発のスピードを加速させている。

日本AM協会ブースの最も目立つエリアに展示されていたのが、日本酸素によるロケットスラスター(高さ約1300㍉)のデモサンプルだ。AM造形プロセスでは窒素やアルゴンなどのシールドガスが不可欠であることから、産業ガス大手の日本酸素は、ガス供給から造形支援までを網羅する「AMトータルソリューションサービス」を展開している。展示された大型スラスターについて、同社の山口祐典氏は「海外で実際に使用された設計データを活用し、中国のEplus3D社が製造した。サポート材を一切用いず、350時間もの長時間を連続で造形し切った非常に先進的な事例だ」と説明する。このスラスターも内部に緻密な流路が埋め込まれており、冷却ガスを通すことで自らを冷やしながらロケットを噴射する構造を持つ。「従来はインコネルなどの超耐熱合金で造形することが多かったが、現在はアルミニウムなどでの造形事例や研究も進んでいる」(山口氏)。

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日本酸素によるロケットスラスター(高さ約1300㍉)のデモサンプル

造幣局は、一般的な硬貨よりもデザインの凹凸が深く、彫刻のように立体的な「レリーフ貨幣」へのAM技術の活用を披露した。レリーフ貨幣の製造は通常、プレスと焼鈍(しょうどん)を幾度も繰り返して金属を盛り上げていくが、同局では「ブランク材(素地)の段階でAMを活用し、あらかじめ大まかなレリーフの模様をつけておく手法を検証している。レリーフの体積に対して、どれだけ正確に積層させるかの計算が鍵を握る」(担当者)という。

現状は純銅を用いて実験を進めているが、将来的には金や銀などの貴金属への応用を目指す考えだ。「銅ではAM工法による採算性を合わせるのが難しく、付加価値の高い貴金属で実用化できるかが焦点となる。ただ、金や銀のAM用素材は市場の選択肢が限られており、造形プロセスに関する知見もまだ少ないことが克服すべきハードルだ」とした。

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AMで作ったレリーフ硬貨(造幣局)

マツダは、金型補修の取り組みなどを披露。パワートレイン技術部の佐々木大地アシスタントマネージャーは「金型の『埋金(インサート部品)』は、形状の一部が溶損するだけで成形品質の低下を招くため、これまでは問題のない部分も含めてすべて廃棄していた。しかし、まだ使える部分を捨てるのはもったいない。そこで、溶損した局所的な部分のみを金属AM技術で肉盛補修する手法を確立した」と経緯を語る。

補修材には「HTC45」を採用。これにより「熱伝導性に優れているため、結果として元の新品よりも金型寿命が延びるという、表面改質の副次効果が得られた」という。現在は「製造原価が高く、補修コストを低く抑えられる部品」へ選択的にこの技術を適用しており、ブロック材からの削り出しで新たに金型(埋金)を作り直す場合と比較して、約5割のコストダウンに成功したとした。

Carbon Technologies Nipponは、試作から量産まで幅広く対応する強みを活かし、同社製3Dプリンターを用いて量産化に至った最終製品を中心に展示した。同社プリンターは独自の特許技術を保有しており、「積層時にあえて硬化させない領域を毎層設けることで、シームレスなグラデーションを生み出し、積層痕を目立たなくさせている。これにより、従来の3Dプリント品とは一線を画す、射出成形品に近い滑らかな質感が得られる」(担当者)とアピールする。ブースでは、同技術が量産に採用されたアディダスのフルプリントスニーカーなどが大きな注目を集めていた。

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Carbon Technologiesの3Dプリンタで造形され実際に販売されている靴




K Program青色レーザーによる純銅造形への挑戦


経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)ブースでは、大阪大学や金沢大学、石川県工業試験場、そして有力民間企業がタッグを組んで取り組む、金属AMに関する最先端の研究開発事例が紹介された。大きなテーマの一つが、青色レーザーを活用した純銅の造形(プリント)技術だ。金沢大学の古本達明教授は「レーザーのビーム形状に関して、これまでのガウシアンビームや, トップハット型、リング状といった整形技術からさらに一歩踏み込み、その先にある『空間制御』によって、より優れた物性を引き出せないかとチャレンジしている」と開発の狙いを語る。

金沢大学が参画するプロジェクトでは、青色レーザーを用いたPBF(粉末床溶融結合)方式の装置による純銅造形の確立を目指すとともに、実用化の鍵を握るコストダウンにも着手する。古本教授は「金型の製造コストなどを大幅に引き下げるため、原材料を従来のガスアトマイズ粉末から、より安価な『水アトマイズ粉末』へ転換できないかといった検証にも取り組んでいる」とし、国策プロジェクトにふさわしい、実用に向けた多角的なアプローチを披露した。

住友ゴム工業は、長年のタイヤ開発で培った高度な材料開発技術を応用し、光造形方式3Dプリンター向けの高機能UV(紫外線)硬化系ゴム材料を披露した。

同素材の強みについて、同社の担当者は「当社の材料は、圧縮方向に対する耐久性や復元性に極めて優れている。例えば、ワークを挟み込む(圧縮する)動作を繰り返すロボットハンドのパッドやグリッパーなどの用途に最適だ」と自信をみせる。

さらに、自動車産業の一大集積地である中部圏での開催を意識し、試作プロセスの革新も提案する。「金型が確定(フィックス)するまでの開発フェーズにおいて、強力なツールになる。当社の素材は、従来の3Dプリント品にありがちな『ゴム調樹脂』とは一線を画し、極めて量産品のゴム製品に近い物性を備えている。そのため、プロトタイプ(試作品)をそのまま実車に搭載して実際の走行・駆動環境で実証試験(機能評価)を行えるのが最大の強みだ」とし、自動車開発の期間短縮やコスト削減に貢献できる点を広くアピールした。

大同特殊鋼は、AM造形時の最大の課題となる「ひずみ」を大幅に低減したダイス鋼系粉末「LTX」などを訴求した。同粉末はガスアトマイズ製法で製造されており、真球度が高く流動性が良いなど、造形プロセスにおけるハンドリングの面でも優れた特徴を持つ。

ストラタシス・ジャパンは、従来のロストワックス製法を3Dプリンターに置き換える先進的な工法提案を実施した。同社の大型光造形機「Neo800+」は、精密かつ大型造形(造形サイズ800×800×600㍉)が特徴で、航空宇宙向けの複雑な部品サンプルを展示。担当者は「ロストワックスのマスター型として樹脂AM品を使用するため、最終製品そのものに金属3Dプリンターを使わない。これにより、航空防衛分野で最も厳しい『品質保証面』のハードルを低く抑えられる」とし、迅速な実装に向けた現実的なアプローチとして来場者の関心を集めた。



(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)