海上自衛隊、3Dプリンターでスペアパーツ製造を模索
- 投稿日時
- 2026/04/27 16:24
- 更新日時
- 2026/04/27 16:33
母港に戻らずその場で造形
米海軍がAM(アディティブ・マニュファクチャリング)技術を活用したロジスティクスをしているように、防衛省・海上自衛隊も、AM技術を核とした供給網の抜本的な再構築を模索している。従来の物理的な「モノ」の輸送に依存したロジスティクスから、設計データを前方拠点へ送り、現地で部品を造形する「データ配信型」への転換となる革新的な技術だ。その背景にあるのは、地政学的リスクの高まりに伴う補給線の拡大と、装備品の可動率維持という切実な課題だ。「モノ」が「データ」に置き換わることで、ロジスティクスの戦場はサイバー空間にも広がる。意図的に不具合を生じさせる設計データへの改ざんや通信の遮断は、物理的な補給路の断絶と同等の脅威となる。
海自の活動領域が拡大する中、本土から遠く離れた洋上での部品供給の負担は増大している。故障が発生すればスペアパーツの到着や帰港を待つほかないが、「各艦艇や近隣基地にAM装置を設置できれば、母港に戻らずともその場で部品を造形し交換が可能になるのではないか」(海上自衛隊幹部学校の柳田篤志未来戦・ロジスティクス研究室長)。
米軍ではすでに艦上で部品を造形する検証を経て、限定的な運用が始まっており、日本もこの「分散型製造」のモデルを追う。
AM運用の核心は「ガバナンス」と「品質保証」にある。分散した拠点で製造を行えば、品質のバラつきや安全性の低下を招く懸念もある。これを防ぐため、米軍は部品をリスクレベルに応じて分類。非重要部品は現場の裁量に委ねる一方、重要部品は中央が認証したデータのみを使用する厳格な統制を敷く。海自が目指すのも、こうした「中央統制と分散実行」の統合モデルとなる可能性が高い。
■官民連携で「デジタル補給網」構築
また、AMの普及は「重厚長大」な大企業中心だった防衛産業に、高い技術力を持つ中小・ベンチャー企業が参入する契機にもなり得る。ウクライナ戦で見られるドローンの量産体制のように、簡易性と民生技術の転用(デュアルユース)による質より量が防衛力の源泉となるパラダイムシフトが起きている。
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【インタビュー】防衛省 海上自衛隊 1等海佐 柳田 篤志 氏
(日本物流新聞2026年4月25日号掲載)