マテハンカクメイ

日本の物流が悲鳴を上げている。巣篭もり消費でEC市場の伸長率が底上げされた反面、伸び率はそのまま負荷となって物流現場に降りかかっているからだ。状況の打開に向け革新的な取り組みが急務となるが、幸いマテハン業界ではそうした既存の枠組みにとらわれない新たなソリューションが続々登場している。

いわゆる「物流クライシス」が顕在化して久しい。物量が輸送能力を上回る危機的状況を端的に表した言葉だが、状況はコロナ禍を経てますます厳しさを増しているようだ。

経済産業省が昨年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」では、2020年の国内物販系BtoC-EC市場は、前年度比21.7%増の12兆2333億円だった。前年度の伸び率が8.1%だったことを踏まえると、巣篭もり需要を受けたEC市場の成長角度がいかに急峻であるかがわかるだろう。

一方で、物流現場における人手不足の深刻さはもはや論を俟たない。物流施設のプロバイダーは、「物流現場における人手不足は我々が思うよりも深刻な状況。物流はいわゆる『3K』環境であるとのイメージも根強く、企業も人材確保に苦心しています」と現場における課題を語る。そうした背景から近年の物流センターは従来の閉鎖的なイメージを打ち破る先進的なものに変わりつつあり、業界を挙げたイメージのボトムアップに奔走している。

RaaSモデルが伸長

そうした危機的状況にあって、足りない人手をマテハン機器の設備投資でカバーする動きはもはや業種を問わず必然的なものといえる。しかし「昨日の物流は今日の物流ではない」といわれるほど需給の変化が激しい物流において、従来の固定的な設備のみで状況に対応するのは年々難しくなっているのも現状だ。結果としてそうした業務の繁閑に対応できるAMR(自律走行搬送ロボット:Autonomous Mobile Robot)などの柔軟な設備が導入事例を拡大しており、海外メーカーも次々と国内市場に参入。こうした方向性は今後も持続が見込まれるだろう。

幸い昨今の市場にはAMRをはじめとした物流ロボットをRaaS(Robotics as a Service)形式で提供する企業も登場しており、企業の選択肢は増加している。こうしたRaaS型が従来の売り切り型の設備と大きく異なるのは、初期費用不要などの導入の容易さ。納期も短くアフターサービスも包含されているため導入のハードルが低く、そうしたメリットが呼び水となって加速度的な成長を果たしている。

年々深刻さを増す現場の人手不足に立ち向かうには、柔軟な発想で様々なソリューションを取り入れ、物流の在り方を抜本的に変える必要があるのではないか。

(日本物流新聞 2022年2月25日号掲載)

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