AI・デジタルツインで変貌する最新CAD/CAM
- 投稿日時
- 2026/08/25 14:36
- 更新日時
- 2026/08/25 14:58
AIやデジタルツイン技術により、CAD/CAMは単なる作図ツールから、全製造工程を自律的に最適化する「工場の頭脳」へと進化している。本特集では、クラウド型とオンプレミス型の最新動向や、高度なシミュレーション連携、多軸・複合加工への対応など、モノづくり革新を牽引するソフトウェアの最前線を追う。
従来、「図面作成・ツールパス生成ツール」だったCAD/CAMは、AIや新たなアーキテクチャを内包した「自律型システム」へと進化を遂げつつある。特にAIを活用したフィーチャー認識技術の成熟は目覚ましい。オートデスクのFusionやヘキサゴンのEDGECAM、シマトロンのCimatronといったソフトウェアは、3Dモデルを入力するだけでアンダーカットやポケット形状、隣接する壁の薄さまでをAIが総合的に判断する。これにより、最適な荒加工から仕上げ加工までの工程設計およびツールパスの自動生成が可能となった。

オートデスクのFusion
さらに、Mastercamの加工インテリジェンスや、オープンマインドテクノロジーズのhyperMILLが持つ自動化マクロ技術により、ベテランオペレーターの「暗黙知」をデジタル資産としてデータベース化できるようになった。結果として、経験の浅い若手技術者であっても、熟練者水準の高品質なプログラムを短時間で出力できる環境が整いつつある。
一方で、大きな技術潮流であるクラウドネイティブ化に対しては、製造業特有の根強い慎重論も存在する。設計データや加工ノウハウそのものを「他社との差別化を図る絶対的な競争力の源泉」と捉える製造業各社において、重要データを外部のサーバーに預けるクラウド型を忌避する動きは少なくない。
そのため、市場ではインフラの選択肢が明確に分かれている。オートデスクやPTCのオンシェイプに代表されるクラウドプラットフォームは、膨大なコンピューティングパワーをサーバー側で処理し、複雑な干渉チェックやツールパス計算の処理時間を従来の数分の一へと短縮するメリットを強調する。またダッソーシステムズの3DEXPERIENCEやシーメンスのNXは、設計変更をリアルタイムに同期・共有できる強みを前面に出している。
しかしその一方で、高度なセキュリティと完全なデータ秘匿性を求める企業向けに、完全にネットワークから遮断されたローカル環境で動作するオンプレミス(スタンドアロン)型のMastercamやhyperMILLといった選択肢も依然として強固な支持を集めており、利便性と機密保持のトレードオフを見極める目がユーザーに求められている。
■作業ツールから現場の頭脳へ
近年のCAD/CAMの進化における大きな潮流は、パソコン内のバーチャル空間と工場床(ファクトリーフロア)の実機をリアルタイムに同期させる「デジタルツイン」の確立である。データの置き場所がクラウドであれオンプレミスであれ、現場の生産性を劇的に引き上げるこの技術の重要性は揺るがない。
かつては、CAMが出力したNCデータが実際の機械で正しく動くかを現場で確認する「初品加工の立ち会い」に多くの時間が割かれていた。しかし現在では、CGTechのVERICUTやヘキサゴンのNCSIMULといった検証・シミュレーションソフトがCAD/CAMデータと高度に連携している。工作機械の正確な3Dモデル、治具、ツールホルダに加え、NC制御装置の内部挙動までを完全にバーチャル空間上に再現する。
これにより、実際の機械を動かす前に、CAM上で「100%衝突しない、狙い通りのサイクルタイムで削れる」という確証を持てるようになった。さらにシーメンスのNXCAMでは、同社のCNC「SINUMERIK」との深い統合により、実機が捉えた振動や切削抵抗、熱変位などのデータを側にフィードバックし、次回以降の切削条件を自動で最適化する双方向の循環型システムまで具現化している。
このデジタルツイン技術は、工作機械自体の進化である5軸マシニングセンタや複合加工機の性能を極限まで引き出すためにも不可欠となっている。hyperMILLやPowerMillは、難解な多軸制御プログラミングにおいて、工具の傾きを最小限に抑えつつ、常に最適な切削速度を維持するツールパスを自動生成する。急激な軸の反転運動を抑制することで、機械への負荷を減らし、加工面の肌品位を飛躍的に向上させている。
また、積層と除去(切削)を1台で行うハイブリッド複合機に対応するため、シーメンスNXやオートデスクFusion、Mastercamでは、同一プラットフォーム内で「積層パス」と「除去パス」をシームレスに作成・検証できる機能を強化した。これにより、中空構造や異種金属接合といった超高度な部品製造のプログラミングが標準化されている。
近年の工作機械向けCAD/CAMの進化は、部分的な機能改善ではなく、「自律化」「接続性」「環境適応」をキーワードとした構造的な大転換であると言える。ソフトウェアは、もはや単なるオペレーターの作業ツールではなく、工場の頭脳として、全製造工程をデジタルでつなぎ、自動で最適化を行うコアシステムへと変貌を遂げつつある。
ゼネテックだから出来るMastercamワンランク上の活用法
瞬時にツールパスを生成する「3D Drill Express」
世界の製造現場で圧倒的なシェアを誇る3次元CAMソフト「Mastercam(マスターキャム)」の導入手法に改めて注目が集まっている。同ソフトの国内正規輸入代理店であるゼネテックからの導入は、単なるソフトウェアの購入にとどまらず、「強固な技術基盤」をもたらすとして、多くの現場から強い支持を得ている。

瞬時にツールパスを生成する「3D Drill Express」
ゼネテックを通じて導入する第一のメリットは、工作機械の性能を極限まで引き出すポストプロセッサの圧倒的な作成実績とカスタマイズ能力だ。同社は長年にわたり主要な工作機械メーカー各社と緊密に連携しており、各メーカーの制御装置に最適化した専用プログラムを豊富に蓄積している。
これにより、現場での手修正や再編集といったロスタイムを徹底的に排除し、データ出力から即座に高精度な実機加工へ移行できる生産体制を整えている。
第二の強みであり、他社との最大の差別化ポイントとなっているのが、ゼネテックが独自開発・提供する豊富な「Mastercamアドオンオプション」の存在だ。同社は製造現場が抱える人手不足や、属人化の課題を解決するため、標準機能にアドオンできる独自システムを多数ラインアップ。
その筆頭が、マシニング加工の自動プログラム作成ソフト「GC Mill Express」だ。あらかじめ自社の加工ノウハウを工程として登録しておくことで、加工対象に対して自動で最適なツールパスを生成できる。標準的なパス作成手順と比較して約25倍という驚異的なスピードでプログラムを作成する。
さらに、製造現場で多くの時間を費やす「穴あけ加工」の自動化も徹底している。ソリッドモデル上の穴位置と形状を自動検出し、ツールパスを瞬時に作成する「3D Drill Express」をはじめ、3D CAD「iCAD SX」で設計された穴径・深さ・公差といった属性情報を自動認識して工程を生成する「3D Drill-iCAD SX Hole Link」を開発。これまでCAMオペレーターの経験と手作業に頼っていた工程設計時間を劇的に短縮させることに成功している。
これに加え、画像付きの加工指示書を自動生成するツールや、ゼネテックのユーザー限定で提供されるGコードプログラム検証ソフト「NCチューナー」など、周辺業務を徹底的に効率化する独自アドオンが、現場の即戦力化を強力に後押ししている。
第三の強みは、同社に在籍するエンジニアの圧倒的な「現場力」だ。ゼネテックには、機械加工特級技能士やマシニングセンタ1級技能士といった、実際の加工現場を熟知した国家資格保持者が多数在籍している。一般的なITベンダーにありがちな操作説明のサポートとは一線を画し、独自の高速削り機能「ダイナミックモーション」などを組み合わせた提案により、加工時間を最大75%短縮、同時に工具寿命の延長で最大78%のコスト削減に成功した事例もある。
また導入後の自立的な運用を促すための教育システムも見逃せない。同社はユーザー向けの常設サポートセンターの運営をはじめ、オンラインスクールや定期的な技術セミナー、メンテナンス契約者向けの専門動画配信など、多彩な教育プログラムを全方位で展開している。
ゼネテック注目のMastercam2027強化ポイント

■「1エッジ曲線」の機能強化
Autocursor対応により、サーフェスモデル上のエッジ・面・ループを直接選択可能。3Dボディ選択で全エッジも一括選択でき、再クリックで選択解除にも対応。日々の作業効率が大きく向上する。
■ツールパスパラメタの「平面」画面の刷新
作業平面は通常非表示となり、工具平面と自動一致。ツールパス作成中でもWCSや工具平面をその場で作成可能に。作業を止めないスムーズなCAM操作を実現する。
■「バリ取り」ツールパスの機能強化
方向制御の新オプションと「順序を保持」で、意図した順序でツールパスを生成。「エッジフィルタ」機能により除外条件を柔軟に指定でき、調整の手間も削減。プログラム作成工数の削減につながります。
丸紅情報システムズ
加工時間半減、内製化を実現
「Tebis」がもたらす設計変革
丸紅情報システムズ(MSYS)が国内唯一の代理店として展開する、独テビス社のハイエンド3DCAD/CAMシステム「Tebis」が、DXを推し進める製造現場で評価を高めている。
同システムの最大の特徴は、独自のサーフェス演算ロジックによる超高精度な加工データの高速生成だ。実機の金型や工具をバーチャル上に完全再現する「デジタルツイン」技術を強みとし、工作機械の衝突を実機稼働前に100%回避する。

さらに熟練者の加工ノウハウをテンプレート化することで、データ作成の自動化・標準化を実現。省人化と品質均一化を同時に達成できる。MSYSは単なるソフト販売にとどまらず、導入企業の設備や独自の製造環境に合わせた初期環境ファイルの構築、運用立ち上げにいたるまで、伴走型の手厚いテクニカルサポートを提供する。
自動車の金型メーカーなどでは、Tebisの導入により外注加工の完全内製化や加工時間の半減を達成するなど、劇的な成果を上げている。
MSYSは初期投資を抑えたエントリーパッケージの提供も開始しており、「技術継承と生産性向上に悩む中小から大手の製造業へ、デジタルツインによる確実な自動化を提案していく」と、生産規模の大小にこだわらない普及を目指す構えだ。
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執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年8月25日号掲載)