インタビュー
ジェービーエムエンジニアリング 社長 小谷 幸次 氏
Mastercam2027で人手不足解消へ
- 投稿日時
- 2026/08/25 14:32
- 更新日時
- 2026/08/25 14:36
過去最高の受注額を記録するなど活況に沸く工作機械業界。それに呼応するカタチで設計ソフトウェアのニーズも高まっている。そこでMastercam国内トップセラーのジェービーエムエンジニアリング・小谷幸次社長に、直近の業界動向と10月2日リリース予定のMastercam 2027の最新アップデートについて語ってもらった。

――貴社足元の業況は。
「大手企業の動きが明らかに変わってきていますね。とりわけ防衛・航空・船舶といった分野で、引き合いから受注までのスピードが非常に速くなっています。以前はソフトを無償貸与から1年以上経ても話が進まない、といったケースがザラでした。それが最近では3カ月以内で導入を決めるなど、明らかにスピード感が変わってきています」
「以前は『来年の予算で検討』という反応が多かったのですが、最近は決裁自体が速くなっているのを感じます。おそらく政府サイドから国内投資を強めるようトップダウンの号令が出ており、業界団体の会合などでもそうした空気を強く感じます。担当省庁の方が来て話をすると、政府としてスピードを持って取り組むよう発破をかけているような雰囲気があり、昨年とは全く違う空気を感じますね」
――他の分野については。
「AI・データセンター絡みや半導体関連も徐々に伸長してはいます。また自動車関連も少し動きが出てきた感じがあり、今後期待できそうな雰囲気になってきています。もっとも為替の関係で、当社も儲かっているかといえばなかなか厳しい。5年前は1ドル115円程度でしたが、今は160円ですから、この45円の差で利益が桁違いに変わってきます。理想を言えば135円くらいに戻ってほしいですが、日本経済がきちんと回復してインフレ基調が定着しないと、根本的な競争力の向上にはつながらないと思います」
――続いて、Masetercam 2027の主なアップデートについてお聞かせください。まず開発全体の方向性は。
「世界的な製造業の人手不足と、加工の複雑化・高度化を背景に、開発元のCNCソフトウェア社は『生産性の最大化』『プログラミング時間の短縮』『加工の安全性』という3つのビジョンを掲げ、シカゴ本社のマニュファクチャリングラボで実際に金属加工をしながら開発を進めています。2021年にサンドビック社に買収されましたが、同社のインテリジェントマニュファクチャリング部門とも連携し、切削工具も含めた最新の加工手法を提供できるようになっています」
――機能面での大きな変更点は。
「ひとつは5軸加工機能の大幅な改善です。ツールパス生成とモーション制御が進化し、表面品位や工具のブレといった従来の課題が改善されるほか、安全性や干渉回避の自動化、セットアップの操作性も大きく向上しました。もうひとつはバリ取りの自動化です。これまで一度のパスでは表面のバリしか取れなかったものが、1パスで表裏両方のバリ取りが可能になり、時間短縮と仕上がりの精度向上を両立しています」
――次世代のツールパス生成プラットフォームも話題になっています。
「EverPass(エバーパス)ですね。CNCソフトウェア社がゼロから構築した次世代CAMプラットフォームで、今後5年ほどかけて完成させる計画と聞いています。リアルタイムでのツールパス自動計算や、ワークフローのシンプル化と使いやすさの向上、部分編集の柔軟化など、完成すれば設計・計算・待ち時間を含めた作業が現在の10倍程度短縮できるとされ、他社の追随を許さない独自技術になるとみています。2027年版では保守契約者向けにまず試験的に無償で提供されます」
■AI活用で大幅時短に
――AIの活用については。
「マイクロソフトのCopilotが新たに導入されます。ソフトの使い方をAIに質問すると、パラメーター設定のアドバイスやエラー対応を提示してくれる仕組みです。まだレベル1の段階ですが、学習を重ねて精度が上がっていくと期待しています。加えて、ツールパスの安全性向上や、複合機・多軸加工に対応したシミュレーション精度の強化も図られており、実機とのギャップを縮める取り組みが進んでいます。2026年まではツールパスの計算精度やインターフェースの改善が中心でしたが、2027年からはセットアップ時間の短縮や多軸加工の自動化、エバーパスのような次世代技術の統合へと視点が移ってきています」
――ユーザーの設計に関するAI活用への関心は。
「当社から積極的にAI関連の話をしていることもあり、興味を持っていただくお客様は多いです。3Dデータや工具、機械の情報をAIが瞬時に分析し、最適な加工戦略を自動で生成するCloudNC社のCAM AssistといったAIを活用したプラグインの契約数も、すでに2桁に乗ってきました。プログラミング時間の大幅短縮が見込めるお客様が続々と導入に踏み切っています。ただ今年6月の価格体系変更で、従来の買い切りではなく、従量制になりましたので当社としてもお客様がよりメリットを感じられるような提案に切り替えているところです」
――ロボットティーチングや積層造形など、他分野のソフトの状況は。
「オフラインティーチングソフト『Octopuz(オクトパス)』はこの4カ月ほどで立て続けに導入が決まっており、引き合いも好調です。ADDITIVE MASTER LUNA(アディティブ マスタールナ)など積層造形CAMについては防衛・自動車分野を中心に実験的な引き合いは多いのですが、まだ試作やハイエンド部品での活用が中心という印象です」
――Mastercamを長年扱う御社の強みは。
「『社内業務はデジタルへ。お客様には徹底して、アナログで』を方針とし、とことんお客様のお役に立つことに注力している弊社はサポート体制が手厚く、他社から乗り換えてこられるお客様も多いです。『メンテしてくれない』『サポートに連絡してもなかなか対応してもらえない』といった不安を抱えて当社を頼ってこられるケースが少なくありません。価格競争やソフトを売るだけではなく、企業理念としての誠実さと信頼を大切にしており、それが現在7000社以上あるお客様との取引につながっていると考えています」
「Mastercam 2027日本語版につきましては、10月2日リリース予定です。人手不足の解消と生産性向上に向けた新機能を、JIMTOF2026をはじめ展示会などを通じてしっかりお客様にお伝えしていきたいと思います」

バリ取り機能を大きく向上させた
執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年8月25日号掲載)