マツダ、モデルベース開発でシリンダーヘッド軽量化
- 投稿日時
- 2026/04/14 09:00
- 更新日時
- 2026/04/14 09:00
業界トップ級の軽さに
マツダは「モデルベース開発」を軸に、機能と生産性の両立を目指すモノづくり改革を進めている。世界シェア約2%のスモールプレーヤーである同社にとって、独自性のブラッシュアップと生産・投資効率の最大化が競争力の源泉となる。市場環境の不確実性が高まる中、開発リードタイム短縮の重要性も増しており、従来トレードオフとされてきた性能と生産性を両立する新たな開発手法として注力する。
従来の量産準備プロセスは、製品設計、機能検証、工程設計、金型設計といったシーケンシャルな流れで進み、部門最適に陥りやすく、手戻りの多さが課題だった。パワートレイン技術部PT解析技術グループの村尾優作氏は「構想段階から開発と生産が一体となり、機能と生産性をすり合わせる『共創設計』へ変革を進めています」と説明する。
同社は開発・生産で発生する現象を原理原則に基づきモデル化(CAEや数式で表現し定量化すること)し、そのモデルをユーザーの運転時まで一気通貫でつなぐことで、バーチャル上で開発と生産を同時に検討できる仕組みを構築。将来を見据えたモデルマップを策定し、生産領域からモデル化を進め、現在は部品性能や製品機能向上領域へ開発を進めている。
その代表事例が「APMCシリンダーヘッド軽量化」だ。燃費や電費向上には軽量化が効果的だが、軽量化は耐久性低下と表裏一体の関係にある。耐久性を評価するためには、運転時の応力と鋳造工程で発生する残留応力を考慮する必要がある。これまで残留応力は一定値として扱っていたが、実際の残留応力には分布がある。残留応力の分布を正確に捉えることで、余裕のある部分をさらに軽量化できる。
同社のAPMC鋳造法は、機能が求められる部分には冷却プレートを用いて緻密な組織を形成し、外周部には砂型を用いることで湯流れ性を高め、薄肉・軽量化を実現する。一方で冷却速度の差により、ゆっくり冷えた部分には圧縮応力、急冷部には引張応力が発生するため、温度分布を正確に把握することが重要となる。
そこで同社は温度変化のメカニズム解明とモデル化を進め、センシング技術による実測データを用いて工程全体の温度履歴と制御因子を定量化。砂型の物性値やアルミ材の高温特性も実測し、湯流れから凝固、室温までの温度履歴を高精度で再現可能とした。
この結果、余裕のある部位はさらなる軽量化を進め、負荷の高い部位にはR拡大などの対策を講じることで、軽量化と信頼性を両立。最新モデルで約960㌘の軽量化を達成し、シリンダーヘッド重量で業界トップレベルに到達した。
同様の考え方はトランスミッションケースにも展開されている。ダイカストでは連続鋳造により型温が上昇し、寸法精度に影響を与える。このため「入熱量」と「抜熱量」のバランスに着目し、この比率を1に近づける金型設計を導入。金型の冷却配置と冷却水の通水条件を最適化することで、10ショット目以降の温度変動をほぼゼロに抑え、安定した品質を実現した。
さらにCAE解析と寸法実測によりフランジ面変形の要因を特定し、スライド型の離型ピンで変形を抑制。「カン・コツではなく、不具合発生のメカニズムを定量化することで、機能と軽量化を両立できた」とする。
■AI分析モデルも導入
モデルベース開発は金型製作領域まで効果がある。「製品形状や金型仕様を早く決めることで金型修正が大幅に減少しました。サプライヤー様にとっても形状変更は負担であり、修正回数を減らすことでサプライチェーン全体の効率向上、負担軽減につながります」と村尾氏は話す。更に3Dモデルをそのまま金型メーカーに提供し、加工パス生成まで連携する構想もある。
今後は、ユーザー価値に直結する機械的性質のさらなる向上に向け、「耐力」や「伸び」といった材料特性のモデル化を加速させる。将来的な大型車体部品の一体成形を見据える中で、最大の障壁となるのが、車体骨格としての衝突安全性を左右する「耐力」と「伸び」の両立だ。
パワートレイン技術部の藤田智浩氏は、鋳造特有の難しさを次のように指摘する。
「鋳造品は冷却速度の違いによって、部位ごとに金属組織がバラつきやすく、伸びにくく割れやすい箇所が生じる懸念があります。特に大型部品になればなるほど、製品形状や鋳造方案、鋳造条件の緻密なコントロールが極めて重要になります」。
そこで鋳造解析結果と実際の機械的性質をAIに学習させ、機械特性を予測する技術開発を進めている。「鋳造品は機械特性がバラつき、予測すること自体が難しいと思いますが、お客さま価値向上にむけ、AIで分析することにチャレンジしていきます」(村尾氏)。
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)