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山本金属製作所、職人の「勘」からデータ主導の制御へ

投稿日時
2026/09/14 09:00
更新日時
2026/09/14 09:00

センシングツールでFSW加工革新

EVシフトやハイブリッド車の拡大に伴い、インバータやパワーコントロールユニット、バッテリー、モーターといった駆動系の熱対策が急務となっている。これら発熱体の冷却に向け、アルミダイカストのベース部に複雑な水路を形成し、上からアルミ板を気密接合・封止する『ウォータージャケット』の加工需要が急増している。接合には様々な溶接法が存在するが、ブローホールやスパッタの発生を抑え、高い気密性を安定して確保できる摩擦攪拌接合(FSW)が、不良率を低減する手法として注目を集めている。

山本金属製作所の営業部ソリューションG 兼 研究開発G課長の松田亮氏は、「ティア1、ティア2では、すでに試作レベルから実製品加工への移行も出てきている」と手応えを語る。一方で、量産化における技術的ハードルについて次のように指摘する。

「FSWは摩擦熱で素材を軟化させ接合するが、パラメータ管理が極めてシビアだ。鉄と異なりアルミは高温になっても赤く変色しないため、職人の勘や目視に頼った調整も通用しない。入熱が低いと部材がうまく流動せずツール通過後にトンネル等の内部欠陥が生じ、高すぎると材料が過度に軟化してバリ(フラッシュ)として流出し、肉厚不足や強度低下を招いてしまう」。

そこで、接合中のツールの温度や力(軸重・トルク)をリアルタイムに計測し、工具自体を知能化するシステム『MULTI INTELLIGENCE  i-stir』(=写真)に注目が集まっている。「FSWの内部欠陥検査は切削加工のような簡易的な手法が通用せず、非破壊検査自体が難しいケースも多い。加工中のプロセスデータを蓄積し、完璧(100%)とまではいかなくとも良品・不良品の“確からしさ”を高めることで、自動車などの量産工程へ組み込みやすくなる」と、インプロセスセンシングがもたらす品質保証上のメリットを強調する。

さらに、工作機械CNCと双方向に通信するソフトウェア『Advanced Control』を『i-stir』と併用することで、より深い分析が可能になるという。「CNC側の座標値や主軸負荷、サーボモーター情報と、i-stirが取得する温度・力データを、NCプログラム上のトリガーで同一タイミングに紐づけて記録できる。これにより量産中でも人手を介さず、ワークごとに時系列のそろったデータを自動取得できる」と説明する。実際に、接合部にばらつきが生じやすいEV用バッテリー冷却器の加工では、接合部の隙間や押し込み量を意図的に変化させながら温度・力をモニタリングしたところ、両者が一定水準を超えると良品になるという相関が判明。適切な接合条件の選定と、量産ラインでのリアルタイム良否判定の両立につなげたという。取得データが閾値を超えた場合にCNCへ割り込みマクロを書き込み機械を自動停止させるといったフィードバック制御にも活用できるため、量産ラインでの予兆保全や不良流出防止にも役立てやすいとしている。

■FSWは中小企業の新規事業に

同社では自動車だけでなく航空宇宙関連のワークや異種接合など先端の加工依頼が増えており、FSWの広がりを実感している。また受託加工だけでなく、ウォータージャケットの最適流路をAIで設計し、同社AM部門と協力してDfAM(AM向け設計)を組み合わせた提案も強化するという。

また「FSWはティア1・2クラスの話で、中小企業には関係ない」と思われがちだと松田氏。しかし「マシニングセンタがあれば、ツールをそろえるだけでFSWを実施できる。FSW教育支援サービスも実施しており低投資で始められる」とし、「事業化した町工場の実例もあり、低コスト・低リスクで始められる新規事業と位置付けてほしい」と呼びかけた。

(日本物流新聞2026910日号掲載)