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神戸ものづくり中小企業展示商談会、水素のまち神戸で実証加速

投稿日時
2026/07/06 09:00
更新日時
2026/07/06 09:00
阪神機器が開発した純水素燃料電池発電システム「Hydro. eLife」で、会場外のバウムクーヘンのキッチンカーに水素で発電された電力が供給された

普及に期待感

612日に神戸サンボーホールで開かれた、第18回神戸ものづくり中小企業展示商談会(主催:神戸市)には市内の製造業を中心に85社・団体が出展した。会場で目を引いたのは、兵庫県下の38社で構成する組織「神戸水素クラスター」の面々だ。会場のキッチンカーには、会員企業の阪神機器(神戸市西区)が開発したシステムから、水素で発電されたクリーンな電力が供給されていた。神戸市が水素の利用促進を掲げてから約10年。会場からは本格普及に向けた実証試験の活発化を歓迎する声があがる。現地の声を聞いた。


そもそもなぜ神戸市で水素なのか。神戸市は2016年に「水素スマートシティ神戸構想」を打ち出し、公民連携で水素の利用拡大を目指してきた経緯がある。神戸に本社を置く川崎重工業と岩谷産業が連携した「水素サプライチェーン構築実証事業」でも、海外から運んだ液化水素を荷揚げ・貯蔵するターミナルが神戸市の沖合に浮かぶ神戸空港島に設けられている。

構想からおよそ10年。足元の水素価格は高止まりしており、本格的な水素エネルギーの普及にはなお壁があるのが現状だ。だが出展企業からは、「(水素の)実用化に向けた実証試験が活発になっている」と期待の声が上がった。

水素はマイナス253℃という極低温で液化し、体積が気体と比べ約800分の1になる。輸送や貯蔵の効率が圧倒的に高まるが、気化を防ぐ高度な断熱技術や、極低温でも劣化しにくい素材など様々な技術が必要だ。こうした技術の将来的な需要の高まりに、兵庫県内の製造業も大きな期待をかけている。

会場には「神戸水素クラスター」の会員企業5社がブースを設けた。同組織は15年に活動を開始し、現在は兵庫県下の製造業ら38社が加盟する。勉強会や見学会を開催するほか、水素関連の案件が持ち込まれた場合には会員企業をマッチングする。事務局を務める(公財)新産業創造研究機構の冨田あゆみ氏は「水素普及の最大のネックは価格。ただ会員企業も少しずつ増え、水素関連の製品開発に取り組む企業も生まれている。急速な普及こそ難しいかもしれないが、徐々に実用化に向けた動きが活発化している肌感覚がある」と先行きの明るさを示した。

■ 水素発電で電力供給

会場のキッチンカーに、自社開発した純水素燃料電池発電システム「Hydro. eLife」で発電した電力を供給したのは阪神機器。建築板金や配電盤の製造が主力だが、神戸水素クラスターに加盟後、17年ごろに畑違いの水素分野に飛び込んだ。

最初は燃料電池を購入し、実際に発電できるかの検証から始めた。当時の様子を同社の設計担当者は「配管もむき出しで、理科の実験室のようだった」と述懐する。その後も冷却構造などの課題を1つずつクリアし、24年にHydro. eLifeの原形を開発。その後も性能や操作性など改善を繰り返してきた。

Hydro. eLifeは水素ガスと空気中の酸素を化学反応させ電気を取り出す構造だ。CO2を排出せず、生成される水を装置内の水冷構造に取り込むため排水も最小限で済む。起動時は内部のバッテリーから電気を供給し、以降は発電した電気で稼働するため水素ボンベと装置があれば場所を選ばず稼働できるのが利点。出力は1㌔ワットと3㌔ワットの2機種。担当者は「低容量で持ち運べるため非常用電源にできる。ディーゼル発電機と比べ静粛性も高い。数年前と比べ問い合わせも増えてきた。活用のハードルを下げるためのリースも始めている」とする。

高圧ガス向けの装置・システムを製造する千代田精機(神戸市長田区)も同クラスターの会員だ。同社は水素を供給するための配管やバルブ、減圧装置などですでに実績を持つ。担当者は「水素活用の本格化はこれからだが、その前段階である各社の実証試験はすごく活発に動いている」とする。

神戸水素クラスターの副会長を務める角金幸治氏(アークハリマ取締役)は「ビジネスチャンスとして水素には非常に期待している」と力を込める。「社会が大きく変化する際に、我々のような中小企業が携われる機会は滅多にない。水素社会が提唱され、地元に水素活用に前向きな大手企業があり、神戸市も力を入れている。これはチャンスだ。先行きはまだ見通せないが、焦らずやらないと仕方ない。我々もどのような形であれ携わりたい」と、将来を見据えて意気込んだ。



(日本物流新聞2026625日号掲載)