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純国産ヒューマノイド「SEIMEI」伝統産業の如く技術を継承

投稿日時
2026/05/14 17:02
更新日時
2026/05/14 17:09
【日本物流新聞(Mono Que)独占先行公開】立ち姿はメディア初掲載

KyoHA、検証機ヒューマノイド4カ月で開発
「VAM」と「データの地産地消」で米中に対抗

日本のヒューマノイドロボット産業の再興を目指す新団体、(一社)KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)は4月28日、京都・平安神宮会館にて、全ての構成部品を純国産で固めた検証機「SEIMEI(セイメイ)」を報道陣に公開した。脚部の不具合により立ち上がる姿は披露されなかったが、その後当紙が独自に屹立状態の写真を入手。先行する米中を猛追し、追い越すための確かな一歩を刻んだことを確認した。同団体には2大学と14企業が参画。エンジニアリングの粋を結集し、国産ヒューマノイドの実装を目指す。


KyoHA理事の橋本健二氏(早稲田大学教授)は、現状への強い危機感を露わにする。「日本はかつてヒューマノイド研究で世界をリードしたが、現在は実用化・量産化で米中に先行を許している。このままでは長年培った技術の系譜が途絶えてしまう。まさに伝統産業の技を継承するように、各社のエンジニアが京都に集い、日本の知見を次世代へ引き継いでいく必要がある」と意義を強調した。

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検証機「SEIMEI」の内部構造について説明するKyoHA理事の橋本健二氏(早稲田大学教授)

身長140㌢、体重49㌔の軽量設計。国内サプライヤーとの密接な連携による「地産地消」のハードウェア構成が特徴だ。下肢にはフレームと一体化するブラシレス(フレームレス)モーター構造を採用し、ステーターとローターの同軸度を極限まで高める高精度加工を施した。また、アクチュエーターにはマブチモーター製、減速機には住友重機械工業製を組み込み、日本の底力を見せた。

参画企業の村田製作所・大場友嗣シニアマネージャーは「災害対応などで日本の役に立ちたい。そのためのヒューマノイド実装に、自社の電子部品技術で貢献したいと考えた。自社単独では突破できなかった課題も、他社の異なる技術領域と交わることで解決した場面が多々あった。他社エンジニアに『すぐ行きます』と駆けつけてもらったこともある」と語り、組織の枠を超えた「共創」の意義を説いた。

「KyoHA」が4月28日に公開した検証機「SEIMEI」は、陰陽師・安倍晴明を彷彿とさせる意匠を纏い、古都・京都の地で産声を上げた。予期せぬトラブルにより自律起立は叶わなかったものの、急遽実施された内部構造の公開では、既存の海外製ロボットとは一線を画す「日本独自の設計思想」が浮き彫りとなった。

KyoHA理事長を務める早稲田大学創造理工学部・総合機械工学科の高西淳夫教授は、1973年に世界初の本格的人間形ロボット「WABOT-1」を完成させた加藤一郎教授の教え子だ。「鉄の塊が歩くはずがないと言われた冬の時代から半世紀。昨年、テムザックのR&Dセンターに関係者が集まり、実用機開発への情熱が再燃した。参画企業のスピード感が加わり、大学の研究室では考えられない4カ月という短期間でこの機体を完成させた」と胸を張る。

SEIMEIは安倍晴明に由来する名称で、「生命」とも掛け合わせ、知能と身体の融合を象徴する。最大の特徴は、企画・開発から主要構成部品に至るまで全てが国産品で構成されている点だ。橋本健二教授(同大理工学術院大学院情報生産システム研究科)は「すべて日本製パーツで組まれたヒューマノイドは、私の知る限り初ではないか」と語る。機体は身長約140㌢、体重49㌔。手首より先のハンドは開発中だが、片脚6軸、腰3軸、腕各4軸の計23自由度を持つ。

特に注目すべきは、これまで米中や欧州製が席巻していたアクチュエーター領域だ。マブチモーター製などの日本製汎用モーターを採用。信頼性の高い国内製コンポーネントはスペック値に対する応答が正確で、高度な制御技術で使いこなすアプローチを選んだ。「制御のしやすさは海外製を凌駕する」(橋本教授)と、ハードウェアの品質に裏打ちされた自信を覗かせる。その反面、各関節のエンコーダー原点設定や、シミュレーションと実機の差異といった課題も顕在化している。

AI戦略においても、新たな学習アプローチを投入する。膨大な計算資源とデータ量で先行する米中に対し、KyoHAは「動画行動モデル(VAM)」によるフィジカルAIの開発を標榜する。これは、人の動きを映した動画から姿勢情報と運動の「特徴量」を抽出し、ロボットが試行錯誤(深層強化学習)を通じて動作を獲得する手法だ。

「中国ではアクロバティックな動きをするヒューマノイドを目にするが、それらは開放空間での動作生成である。ロボットが車に乗り込む際のような、複雑な環境接触を伴う運動は世界でも未解決。少ないデータ量で精緻な行動生成が可能なVAMは、マシンパワーで劣る日本がキャッチアップするための鍵になる」(橋本教授)。

同団体が「純国産」に固執するのは、単なるノスタルジーではない。ロボットが稼働することで蓄積される「走行・環境データ」が、開発国に独占されることへの強い危機感があるからだ。

すぐに米中に追いつくことは難しいと本音をのぞかせるが、日本で日本製のヒューマノイドを稼働させる意義を「データの地産地消」に見出す。また、研究・開発から切り出された要素技術によってサプライチェーン上のプレゼンスをより高める狙いもある。 

今後は、災害救助を見据えた高出力な「パワーモデル」と、俊敏型の2路線を並行開発する。とくに災害の多い日本で優位性を発揮できるパワーモデルの展開を優先するという。



(日本物流新聞2026年5月15日号掲載)