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ファナック、恒例の新商品展にAI随所に

投稿日時
2026/05/19 14:00
更新日時
2026/05/19 17:54
Tシャツを畳む協働ロボット(右)と遠隔操作で動きを教える様子(左画面)

シミュレーションと実機のギャップなくなる

ロボットのシミュレーションがついにここまで進んだ。そう感じさせるのは米エヌビディアが提供するオープンなロボットシミュレーション用レファレンスフレームワーク「NVIDIA Isaac Sim」とファナックのロボットシミュレーションソフト「ROBOGUIDE」の連携強化。この2つのシステムが常時直接通信を行うことで、ユーザーはIsaac Sim中のロボットをあたかも実在するロボットを操るようにリアルタイム操作が可能になる。ジョグ操作(ロボットの関節や手先を微小に動かし、目標の位置や姿勢に到達させるための操作)はもちろん、仮想空間の教示操作盤でプログラムを教示して実行・確認ができる。つまりシミュレーションと実機との間のギャップがほとんどなくなったと言える。安部健一郎ロボット研究開発統括本部長は「ロボット10台くらいの事前検証ならROBOGUIDEで十分だが、工場丸ごととなると2つのシステムの連携が有効になる。これまでは現場に自動化を構成するモノをすべて集めるのに時間を要し、それなしには事前検証ができなかった」と話す。

エヌビディアのライブラリーなどを利用することでファナックは「ケーブルなど軟らかい部品の取り扱いや、部品同士を組み付ける勘合作業といった従来は再現が難しかった作業の高精度シミュレーションも可能になる」と言う。

協働ロボットCRX2台による双腕システムでTシャツを畳む——。ファナックが4月末に竣工した中央テクニカルセンタ(山梨県忍野村)で5月20日まで開いた恒例の新商品発表展示会で披露した。簡単そうに思えるが、Tシャツは形を変え続け、ロボットの動きを常に変えていく必要がある。従来のプレイバックティーチやビジョン補正では無理がある。同社のモーション制御技術をエヌビディアのオープンなロボット基盤モデルNVIDIA Isaac GR00T Nを組み合わせることで模倣学習かつ滑らかな動作を実現した。

同展でファナックはロングリーチのオールステンレスパラレルリンクロボット「DR/8-16B Stainless」(8kg可搬、動作径1600mm)でピザのカット・運搬の実演もした。ピカピカに輝く、すき間や凹凸のない滑らかな形状にしたのは、汚れが付きにくく清掃しやすくするためだ。高圧洗浄に耐える保護等級IP69Kの構造で、水平な面がなく洗浄後に液剤が溜まることがない。

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オールステンレスパラレルリンクロボット「DR/8-16B Stainless」

■「Physical AI CNC」で人は音声対話のみに

「1番、3番、4番に穴をあけて」

そう話しかけるとデジタルツインでその加工の様子が示され、問題がなければ実際の加工機で穴あけを始める。ファナックのPhysical AI CNCにより工作機械の操作がこんなふうになりそうだ。生成AIがCNCと直接情報交換できればオペレーターの技能は必ずしも必要でない。ファナックはそう考え、生成AIがCNCと直接会話するためのインターフェイス(MCPサーバー)を開発した。MCPサーバーはAnthropic社が提唱したMCP(Model Context Protocol)に基づく、AIモデルと外部システムをつなぐサーバーで、年末にリリースを予定している。人はAIと音声で対話するのみで、デジタルツイン活用やCNCの操作はAIがMCPサーバーを介して行う。野田浩FA研究開発統括本部長は「操作がめちゃくちゃラク。オペレーターの手間は体感で10分の1ほどになるのでは。周辺機器のマニュアルはAIが読み込んでくれるので人は読まなくてすむ。1つ問題は、AIは時々ウソをつくこと。でもそこは加工面品位まで推定できるデジタルツインで確認することでクリアできる」と言う。

たしかに機械操作はラクになるが、ユーザー各社で差を生み出しにくくなりそうに思える。それに対し野田本部長は「ユーザーがもつノウハウはMCPサーバーに書き足してカスタマイズすればいい。ただし、そのデータの管理は重要になる」と釘を刺す。

■AIで成形条件調整する射出成形機

ソフトの進化が目覚ましいが、加工機そのものも確実にレベルアップしている。DCシリーズに加えた小型マシニングセンタ「ROBODRILL D116CS」(2027年1月量産・出荷開始予定)はストロークを拡大し(X1100・Y600mm)、最大積載ワーク質量を600kgに高めた。3機種揃ったこのシリーズで最大ストローク。大型アルミ部品の高速加工に対応した。A5052(サイズ1050×550×50mm)の穴あけ(ヘリカル加工を含む)、平面フライスなどを実演。荒加工なら30分ほどで終えられるという。

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X軸ストロークを1100mmに拡大した「ROBODRILL D116CS」で高速加工したアルミ材(サイズ1050×550×50mm)

ワイヤ放電加工機「ROBOCUT α-cicシリーズ」は2021年の発売から性能を高めてきたが、ここにきて一気に能力を高めた。ワイヤ放電で消耗品コストの6割を占めるとされるワイヤ消費量を最大50%削減する。電源制御などの改良で実現。ワイヤは真鍮製で、銅価格が高騰しているためこの効果は大きい。

昨年リリースしたSCシリーズに加えた電動射出成形機「ROBOSHOT S230C」(型締力230t)、「同S280C」(型締力280t、ともに今年10月から順次出荷開始予定)はAIとデジタルツインで自動で流動解析・成形条件調整を行い生産性を高める(AIの搭載はシリーズ4機種とも12月の予定)。おそらく実用レベルでの実現は世界で初めてと考えられ、「熟練工が扱うパラメーターは多いがAIなら一度に最適化できる。流動解析・成形条件調整によりはじめから良品ができるので試し打ちを減らせる」と言う。

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AIで成形条件を自動調整する電動射出成形機SCシリーズ