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「2024年問題」から始まった物流改革の今

投稿日時
2026/08/31 09:00
更新日時
2026/08/31 09:00

2024年問題」を起点とする物流改革は、制度整備が着実に進む。昨年4月の物流関連2法の努力義務化に続き、今年4月には特定荷主への物流統括管理者(いわゆるCLO)選任が義務化された。一方でこの1年、サイバー被害による物流の停止、中東情勢の悪化によるナフサ危機、自然災害による交通網の寸断など、供給を揺るがすリスクも相次いで表面化。サプライチェーン全体の強靱化が急務となる中、それを支える物流現場、ひいてはマテリアルハンドリング技術の真価が問われている。


深刻なドライバー不足を背景に、物流を制度面から支える改革が進んでいる。改正物流関連2法は昨年4月の努力義務化を経て、今年4月に特定事業者の指定制度が始動。年間取扱貨物量9万㌧超の特定荷主(約3200社)には、経営レベルで物流を統括する物流統括管理者(CLO)の選任が義務づけられた。サプライチェーン全体を俯瞰する司令塔として関心は高い一方、中長期計画の策定など実務は緒に就いたばかりで、実質的な動きはこれからという企業も少なくない。

その司令塔の重みを増しているのが、相次ぐ供給リスクだ。昨年秋、大手飲料メーカーと通販大手が相次いでランサムウェア攻撃により生産や受注、出荷などの停止に追い込まれた。両社共にDX化や自動化の先駆けと知られていたからこそ、その危うさに注目が集まった。

今年に入ると中東情勢の悪化によるホルムズ海峡の封鎖を受け、石油化学の基礎原料であるナフサ(粗製ガソリン)が急騰。トラック用のエンジンオイルの入手が一時困難に。さらに、プラスチックパレットなどの包装資材のコスト増に加え、梱包に必須のガムテープやストレッチフィルムが確保しづらくなるなど、影響は現場の足元にまで及んだ。ここに地震や豪雨によるインフラの被害も加わり、途絶を前提としたサプライチェーンの強靱化と可視化への関心が急速に高まっている。

こうしたリスクは在庫のあり方も変えている。途絶に備え、効率一辺倒から復元力重視へと軸足が移り、適正在庫の水準を高める動きが広がる。需要の底堅さを映し、首都圏の大型物流施設の空室率は今年4~6月期に7.8%と、1年前の10.9%から大きく低下。賃料は主要4エリアすべてで上昇し、CBRE27年の需要超過を予想する。一方、建築費の高騰は重荷で、昨年の建築物着工床面積は前年比6.7%減と4年連続で減少。倉庫需要は底堅いものの、資材高と円安で新規供給を増やすハードルは上がっている。良質な床は「取りにくく、高い」状況にあり、限られたスペースをいかに高密度かつ効率的に使うかが、これまで以上に問われている。




えびの興産、荷物も、供給力も、自分たちで創る


「運ぶ荷物がないなら、自分たちで作ればいい」

そんな逆転の発想から、「輸送」を軸に「倉庫」「接着」「工事」の4事業を展開してきたえびの興産(大阪府四條畷市)。多くの運送会社が荷主からの「受け身」の受注に苦しむ中、同社は自ら接着機械を造り、荷物を創り出して運ぶことで生存圏を切り開いてきた。

「昔はアルミサッシや鋼製建具が主だったが、業績悪化のあおりを受け一社依存の怖さを痛感した。とはいえ、世の中の景気も悪く運ぶ荷物がない。そこで接着機械の製造を始め、そのユーザーさんを通じて通信基地局の局舎(シェルター)輸送、設置工事へと広げてきた」

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保有車両の一部

同社・取締役 輸送事業部長の細川智之氏の言葉通り、同社は困りごとを起点に、柔軟に事業領域を広げてきた。局舎輸送の「高さ制限」には、車体メーカーと共同で「超低床車(4㌧・10㌧)」を開発して対応。さらに、輸送後の設置・組立てから電気配線工事、メンテナンスまで、一貫して担う「ワンストップ組立施工」も確立した。

その姿勢は、正確性と迅速性が求められる工作機械のメンテナンス領域でも生きている。門型5軸マシニングセンタなどを手掛ける大型工作機械メーカーが納入した機械の交換部品や専用工具の全国への輸送を幅広く担い、日本のモノづくりを支えている。

この多角化が会社を守った瞬間があった。コロナ禍だ。多くの運送会社が売上げを半減させる中、えびの興産は約7%の減少にとどめた。

「様々なお客様の困りごとを聞いて解決してきた結果、当社は取引の約7割が直荷主。社会が止まっても、底が抜けなかった」(細川氏)

■生命線「配車」をDX

広げた事業領域を支えるのが、輸送の頭脳である「配車業務」だ。接着機械、通信基地局、工作機械のメンテナンス部品。多種多様な荷物を、保有する約90台の車両や協力会社の車両とドライバーに結びつける。

「配車担当は運送会社の番頭さん。生命線なのに情報は担当者の頭の中だけにあり、病気や退職でいなくなると誰もフォローできない。それを変えたくて、デジタル化を進めてきた」(細川氏)

同社は早くから手書きの配車管理から共有可能なエクセル管理へ移行してきたが、それでもなお運行状況やノウハウは担当者の「頭の中」に依存していた。この属人化を解消し、さらに供給力を高めるため、昨年5月、アセンドのクラウド配車システム「ロジックス」を導入した。

ロジックスは運送事業者向けのクラウド型オールインワン配車・業務管理システム。配車表から労務・勤怠管理、請求業務まで一貫でデジタル化できる。

「ロジックスはSaaSでありながら『ここまで柔軟に対応できるのか』と驚くほどカスタマイズ性が高い。要望に対する改善も速く、導入の決め手となった」(運用担当の大村真士氏)

導入後、事務所には小さな「ゆとり」が生まれた。以前はFAXの依頼書を何枚もコピーし手渡しで回っていたが、ロジックスはPDF添付するだけで情報が一元化され、誰もが同じ状況を画面で見られる。

クラウド化は働く場所の制約も、拠点間の壁も取り払った。以前は事務所にいなければ仕事ができなかったが、今は子供が生まれた担当者が週数日の在宅勤務もできる。全拠点の状況がリアルタイムで見えるため、「福岡から大阪に戻る車があれば、この荷物を積んで帰って」といったやり取りが、拠点を越えて生まれている。

荷物を自分たちで創り、取引先への依存を断ち、そして配車の属人化という最後のブラックボックスを開く。えびの興産の歩みは、「依存しない」という一貫した思想で貫かれている。

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取締役 輸送事業部長の細川智之氏




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執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。




(日本物流新聞2026年8月25日号掲載)