マテハンで物流現場はどう変わるのか
- 投稿日時
- 2026/08/27 09:00
- 更新日時
- 2026/08/27 09:00
モデルケースで見る最新活用事例
いわゆる「2024年問題」を背景に、マテハン機器の重要性が改めて注目されている。人手不足に歯止めがかからないなか、国内の物流現場はどのようにしてマテハン機器を導入・活用し、人に頼らない現場を築いているのか。本特集では5つの現場を省人化の「モデルケース」として取材した。
東京都・淀橋市場
自動倉庫とAGV連携、卸売市場で国内初

自動立体冷蔵倉庫(奥)とAGVを連携させた自動保管・搬送システム
今年1月、食の都・東京を支える青果流通拠点「淀橋市場」(東京都新宿区)で、自動立体冷蔵倉庫と無人搬送車(AGV)を連携させた自動保管・搬送システムが稼働した。両設備を連携させた自動化システムは、卸売市場においては国内初の試みで、市場物流の省人化と効率化に向けた先進事例となる。
卸売市場において、主に場内の荷の移動を担ってきたのはフォークリフトやターレットトラックだ。人が乗り、人が判断し、人が運ぶ。作業は属人化しやすく、入荷が重なる時間帯には場内が滞ることもあった。さらに、既存建屋を活用したこの現場は、床面が必ずしも水平ではなく、段差や凹凸が各所に残る。傾斜のきつい箇所では20㍍で約1㍍の勾配がつき、人や車両の往来も多い。自動化設備を入れるのに決して適した現場ではなかった。
導入された自動保管・搬送システムはダイフク製で、約300パレット分の荷を高さ約25㍍(ビル10階相当)の立体倉庫へと積み上げることで、時間帯によっては手狭になっていた場内にゆとりを生む。そこから卸売場内に設置された荷受台への搬送を東京機械製作所(TKS)のAGVが担うことで、人手に頼ってきた作業の置き換えを図る。
「人の手を介さず入出庫できるため、時間の制約を受けにくい。担当者が場を離れる時間帯であっても、必要な時に荷を取り出せる」(市場関係者)
■小池都知事「いいモデルを」と期待
7月7日、同施設を視察した小池百合子・東京都知事は、自動立体冷蔵倉庫とAGVが連動する様子を確認。加えて、EMS実証事業の予定地も見学し、物流DXと省エネルギー化による市場機能の高度化に向けた取り組みについて説明を受けた。

取り組みを視察した小池都知事
小池都知事は淀橋市場を「東京の胃袋を支える市場の一つ」と表現。狭い場内で物流DXが工夫されている点に触れたうえで、「市場はこれまで労働集約型で成り立ってきた。そこをどうやって無人化していくか、自動化していくか、そしてエネルギーをどう確保するかというのは、多くの市場にも共通する課題だ。こういった課題を解決するところで技術開発をしっかりと確保していく、その一つの例として今日は拝見させていただいた」と語った。
その上で、深刻な人手不足に直面する物流業界の現状に触れ、「この一番大本のところで物流DXを進めるというのは、広がりも大きい」と淀橋市場での取り組みの意義を強調。「いいモデルを示してくれるように願っている」と期待を寄せた。
SBフレームワークス、25万SKU扱う高密度自動倉庫
側面に番号の記された、赤い車輪付きロボットが文字どおり縦横無尽に動き回る。それがビン(専用コンテナ、L600W400H310㍉)を吊り上げて格納・出庫する。高密度自動倉庫「AutoStore」である。倉庫の大きさは非公表だが、見たところ100×50㍍の広さはありそうだ。高さはビン12段分というから4㍍ほど。ロボット160台は6万5千個のビンを扱い、バッテリー容量が少なくなると壁際の装置に自ら充電しに行く。

AutoStoreのグリッド上を走るロボット
川崎駅から車で20分ほどの海沿いにあるSBフレームワークス(東京都中央区)の物流倉庫を訪ねた。倉庫は2023年から稼働し、昨年末にAutoStoreを設置して今年1月に本格稼働を始めた。同社が取り扱うのは株主であるSB C&Sのモバイルバッテリーなどの電子機器約50万SKU(在庫管理の最小単位)。このうちAutoStoreが扱うのは比較的小さなBtoC向けの約25万SKUという。
この自動倉庫は他社も導入が進むが、SBフレームワークスのそれは日本最大級。従来に比べると保管能力は4倍に高まったという。だが、菅野信義社長は「まだ5、6合目だろうか」と話す。
「処理能力は目標をクリアしているが、ビン(収納するのは1商品のみで質量3㌔以下が基本)内を区分けすればもっと多くの商品が扱える。夜間も動かせばもっと能力は高まる」
同社がAutoStoreを選んだのはグループの投資先であるという理由が大きいが、菅野社長は「基本、メンテフリーで動かせ、地震時に自動停止する機能などもある」と話す。AutoStoreは1000SKU以下を対象とすることが多く、同社のようなアイテム数の多い商品を扱うことは珍しい。だから菅野社長は「AutoStoreでは初のチャレンジ」と言い、こう明かす。
「この種の自動倉庫はすぐに立ち上がるものでないことは理解していたが、導入してから稼働するまで3カ月から半年かかった。今でも随時アップデートを続けている」
アップデートは自動倉庫周辺でも行う。トラックから入荷され、一般的なカゴに入った商品は3Dスキャナーを用いて計寸・計量し、ビンに入れ替えてAutoStoreに流す。現在は人手で行っているこの作業と出庫作業の一部は今秋、ピッキングロボット(BERKSHIRE GREYが計4台待機していた)を用い、自動フォークリフト(BALYO)も利用する計画にある。無人化はどこまで進むのか。

菅野信義社長
DHC川崎ロジスティクスセンター
270台の小型AGVがオーダー2万件処理
ピーク時には1日に約2万件のオーダーが殺到する現場で、270台の小型AGVがフロアを整然と行き交う。「DHC川崎ロジスティクスセンター」の3階に広がるのは、そんな光景だ。かつて「人手頼み」だった現場が、今年8月に本格稼働した自動化システムによって人と機械が共創する空間へと様変わりした。

270台の小型AGVによる仕分けシステム「T-Carry system」
「これまでも熟練作業者のおかげで出荷品質に大きなばらつきなくこれていた。それでも、労働人口の減少などの将来を見据え、余力のあるいま機械化に踏み切る決断をした」
改革を推進したディーエイチシー ロジスティクスユニットの長谷川俊一部長はそう語る。同施設は通信販売と全国92店舗の直営店に商品を送り出す同社の機関物流拠点。扱う品目は健康食品や化粧品、医薬品からアパレル、生活雑貨まで約9700に及ぶ。これらを1日に平均1万6000件仕分け、出荷する。
長く現場を支えてきたのは、人の手と勘だ。ワンフロア約2500坪という広大な空間を、作業者が歩いて回り、棚から商品を集める。歩行の距離は長く、作業は熟練者の練度に依存する。オーダーが一気に膨らむ繁忙期は、作業者に大きな負担がかかっていた。
■4設備で出荷を省力化
今回現場に導入した自動化設備は4つ。商品を高速で仕分ける立体型自動仕分けシステム「オムニソーター」、270台の小型AGVによる仕分けシステム
「T-Carry system」、梱包工程を担う「オートラベラ」、そして出荷箱を日別や方面別に振り分ける「クイックソート」だ。

立体型自動仕分けシステム「オムニソーター」
商品はまず、オムニソーターで仕分けられる。ここで扱うのは、在庫スペースから引き受けた、比較的出荷頻度が低い多品種の商品群だ。商品に添付されたバーコードを読むだけで、オーダーと紐づけられたコンテナへ自動で振り分けられる。処理能力は1時間あたり1000個、生産性は従来比で約2・5倍に高まった。
仕分けられたコンテナが運ばれる先が、270台の小型AGVが動くT︱Carry systemのフロアだ。ここでは化粧品や健康食品など出荷頻度の高い上位約500品目を全22カ所あるブースで仕分ける。「ロボットがブースに商品を受け取りに行く形のため、作業者はほとんど歩く必要がない。さらに、各ロボットはどこのブースが空いているか、どこが近いかを自ら判断して動く。空いたブースを優先して埋めていくので滞留することがほとんどない」(同社担当者)
オーダーを処理したコンテナは梱包工程へ向かい、作業者によって箱詰めされる。これは梱包が「顧客が最初に目にする部分」であるためで、他の工程を効率化し、箱詰め作業に潤沢な人手を確保し、高い物流品質の維持・向上を図っている。
今回の導入効果について、長谷川部長は「従来の半分以下の作業者数で、出荷処理能力の30%向上が実現できる見込みである」と手ごたえを見せた。一方で、「今回構築いた物流基盤は完成形ではない」とし、「品質」「生産性」「瞬発力」のさらなる向上に取り組んでいく考えを示した。

ディーエイチシー ロジスティクスユニットの長谷川俊一部長
霞ヶ関キャピタル、冷凍物流の省人化
トラックから降ろした冷凍パレットが、床と面一の入出庫口にハンドリフトで押し込める。8月、冷凍倉庫のメッカ・東扇島(神奈川県川崎市)で稼働した冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 東扇島Ⅰ」は、細部に省人化の思想を宿す。
「東扇島は日本一の冷凍倉庫の集積地。ただ、島であるがゆえに人が来にくく、雇用環境は厳しい」(同社 取締役副社長COOの杉本亮氏)
同社はかねてより庫内の省人化・自動化に取り組んできた。中でも、マイナス25℃の冷凍保管エリアには自動倉庫を導入し無人で運転。冷蔵温度帯の荷捌きエリアもパレット交換機などマテハン機器を導入することで、過酷な積み替え作業などがほとんど発生しない設計となっている。東扇島Ⅰではそうした取り組みをさらに押し広げた。
その一つが、床面と面一の入出庫エリアだ。従来、荷物の出し入れは腰高のコンベヤにフォークリフトで載せるのが常だった。だが、庫内のフォークマンは技能講習を修めた有資格者に限られ、細る人材の中でも確保が難しい。接触や転倒の危険もつきまとう。床を1段下げ、コンベヤラインを床に埋めることで、誰でも扱えるハンドリフトでの入出庫を可能にした。

ハンドリフトで運用ができる
東扇島Ⅰは延床面積約2万平方㍍の2階建て。冷凍保管エリアの自動倉庫には1万パレット保管できる。同社は、冷凍倉庫の慢性的な不足と、マイナス温度帯の過酷な就労環境がもたらす人手不足、その両面に応えていく構えだ。
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執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年8月25日号掲載)