オピニオン
愛知大学 国際ビジネスセンター所長 現代中国学部 准教授 阿部 宏忠
中国経済は家計による消費拡大を新たな発展モデルに
- 投稿日時
- 2026/07/23 09:00
- 更新日時
- 2026/08/07 16:48
今年から新5カ年計画(15.5規画)をスタートさせた中国で、同年上半期の主要経済指標が発表された。実質GDP成長率は4.7%で、通年の政府目標4.5~5%の範囲内で着地した。しかし、四半期別成長率をみると、第1四半期は5.0%だったものの、第2四半期は4.3%と弱含んだ。その主たる原因はコロナ禍収束後、長らく続いている内需(消費、投資)の低迷にある。これについては後述する。

■自動車輸出は大幅増
減速基調が続く中国経済において、特筆すべき話題がある。好調が続く自動車輸出だ。中国は23年に日本を追い抜き世界一の自動車輸出国となったが、その勢いはさらに加速している。
自動車輸出台数の推移を見てみよう。中国自動車工業協会の発表によれば、輸出台数はこの5年間、前年比100万台超増のペースで拡大している(図1参照)。7月に発表された26年上半期の輸出台数は500万台を突破し、通年で1千万台の大台に達する可能性も出てきた。ちなみに、日本の自動車輸出台数は23年以降、年400万台で足踏み状態が続いている。

中国自動車の上位輸出先と台数はロシア、ブラジルが各40万台、英国、オーストラリア、ベルギー、メキシコが各20万台となっている。
中国の自動車輸出は、25年から新エネルギー車(NEV)が牽引役を担うようになった。BYDを筆頭に、奇瑞(CHERY)、吉利(GEELY)などが大幅な輸出増を成し遂げた。
中国の自動車輸出の急増は、中国経済の低迷、国内の競争激化、さらには対NEV優遇税制の見直し等に起因する輸出ドライブの効果とみることができる。その結果としてもたらされる年1千万台超に及ぶとされる中国自動車の海外浸透は、世界の自動車市場における中国の影響力をよく大きく、強くしていくだろう。日本でも7月下旬、BYDが日本市場向けに自主開発した軽規格のEV「ラッコ」の販売が始まった。日本の成熟した消費市場で新風を巻き起こせるのか注目したい。
■「消費拡大15.5規画」を公表
減速基調の中国経済に話を戻そう。中国の内需不振のうち、消費の低迷は長期化、深刻化しつつある。消費者マインドを示す全国消費者信頼感指数(国家統計局による月別アンケート調査)は、上海市でのロックダウンの影響等が現れた2022年4月に急低下して以降、マインド転換の基準となる100以上を回復していない(図2参照)。

消費者マインドの低下は、主に将来の不確実性や物価上昇予想との連動性が高いとされ、家計の節約志向を強め、消費を下押しする。中国国民一人ひとりが抱いている将来に対する不安や不満は何なのか。それをできるだけ正確に掌握し、しかるべき処方箋を出す。中国が持続的な成長を遂げていくカギはまさにそこにあるのだが、実務的には決して容易なことではないだろう。
中国政府は7月、消費拡大に特化した15.5規画を公表した。同規画では、主要目標として消費動向を示す社会消費品小売総額を25年実績の50兆元から30年までに60兆元に拡大することを掲げている。目標達成に向けて、同規画が提案した主要方策には、人を中心に据えた「国民生活の質的向上」に資するものが盛り込まれた。具体的には、高齢化対策としての「銀髪(シルバー)」経済、少子化対策としての「育児、託児」サービス、文化観光事業、健康消費、農産品消費などが挙げられている。
筆者はこの消費拡大プランを読んで、ホームヘルパーや育児支援ヘルパー、村おこし的な取り組みを連想した。果たして、これらが中国国民が抱える将来の不確実性を解消し、家計の消費需要によって牽引される経済構造の構築に寄与することになるのか。今後の同規画に基づいた具体的な消費拡大策が待たれるところだ。
(日本物流新聞2026年8月10日号掲載)