オピニオン
自動車ジャーナリスト 岩貞るみこ氏
ハイブリッド車が主役に
- 投稿日時
- 2026/09/10 09:00
- 更新日時
- 2026/09/10 15:09
燃料電池は商用利用
設備投資のなかなか進まなかった自動車業界にこのところ変化が見られる。選択肢の多かった各種自動車がある程度絞られ、未来の姿が見えてきたからのようだ。本紙に微笑ましいエッセイを寄せてくれている自動車ジャーナリストの岩貞るみこ氏に業界の先行きを聞いた。

――自動車業界で岩貞さんが注目されている明るい話題はありますか。
「子どもを守らなければいけないという意識がようやく醸成してきたことです。子どもの自動車事故は数としては少ないです。事故の数が少なければ怪我をする子どもの数も少なく、これまでは少ない=ない、というふうに見られてきました。母数が小さいとデータとして扱われず、対策がなかなか進みませんでした。私はそのことにずっと歯痒い思いをしてきたのですが、最近は交通事故ゼロを目指す企業やメーカー、省庁なども出てきました。そのことを頼もしく、嬉しく思い、この動きをけっして止めてはいけないと考えます」
――長年のご活動が実を結んできましたね。話題は変わりますが、長く設備投資を控えてきた自動車業界で、投資の動きが出始めたようです。
「設備投資の動きまで私は見ていませんが、10年、15年くらい前は自動運転に取り組まなくてはとか、電気自動車(EV)、燃料電池自動車をなんとかしなくてはという感じで、ある意味、おそらく企業のトップもエンジニアたちもカオス状態で、何が本命になるのかわからないという感じでした。ところがようやく、それぞれの限界とやるべきこと、課題と現実が見えてきて、地に足をつけて開発ができる段階になってきたと感じています」
――自動車業界は投資するにあたり何を見極めようとしてきたのでしょうか。
「市場の動きが1番だと思います。世の中が何を求めているのかを見誤ると、やはり商品として成り立ちませんから。自動車は製品であると同時に商品なので、ニーズがないものをいくら開発してもダメです。では何を動力源として使うのか。電気なのか水素なのかガソリンや軽油なのかという状態が続きました。燃料電池については30年以上にわたって取り組んだことで乗用車への採用は現段階では厳しいと考えられるようになりました。ホンダは乗用車への開発から商用系などへと舵をきりましたし、トヨタはMIRAIをつくってはいますが、やはりトラックやバスに期待している感じがします」
――最大のネックは。
「水素ステーションです。増えないと車は購入されませんし、車が増えないと水素ステーションも作れない。インフラと車両の台数は同じように増やす必要がありますが、それがうまくいっていない」
「遠距離を走る人は高速道路上で止まったらどうしようと常に不安を抱えることになります。乗用車はいろんな人が様々な使い方をします。遠距離を走る人がいれば、自宅周りだけ走る人、通勤に使う人もいます。そこがネックになるため、メーカーとしては決まった経路を走るトラックやバスに焦点を当てるようになりました。で、商用車がある程度増えると水素ステーションも増えるかもしれないので、またターゲットは乗用車に戻ってくるかもしれません」
■根づよい内燃機関
――2030年を見据えた主役はどの自動車でしょう。
「ハイブリッド車です。EVは2、3年前まですごく盛り上がり、欧州でも何年までに販売する車をEVにするという目標を立てましたが、いまは撤回し始めています。当初からメルセデスはそれは無理と言っていましたし、積極的だったホンダも結局うまくいかなかったようです。EVのネックはリチウムイオンバッテリーです。ためられる電気の量がどうしても限られるので航続距離も稼げません。ガソリンの給油は5分程度で終えられますがEVだと1時間以上かかり、このままEVだらけになると高速道路のサービスエリアの充電待ちで大渋滞を起こします。また、電力供給量も課題です。日本は東日本大震災以降、原子力発電の在り方が問われていますが、フランスくらい原子力発電をしていかないと電気の量が足りません。ですからEVが内燃機関に取って代わるのはリチウムバッテリーの容量、電力供給量の問題がクリアできない限りは無理だと思います」
――となると内燃機関はなくならない。
「内燃機関はハイブリッドという形で残ります。日本の市場もそうですが、東南アジアやアフリカではEVは電力供給や整備の面で相当難しいので。車の販売は修理とセットなので、地域によっては純粋な内燃機関の車が使われるケースがまだ続くと思います。砂漠や山の中でハイブリッドがトラブルを起こしたとき、直せる人がいるかどうか。自動車メーカーはハイブリッドを含めて内燃機関の車をつくり続けるのは間違いないです」
――日本メーカーが培った技術力、信頼性が生かせそうです。
「今のトヨタのハイブリッドは壊れにくいことが知られているので、日本の中古車市場でトヨタのハイブリッドは買取価格が高く保たれています。日本人が買うだけでなく、海外で高値で売れるからです。そうして海外でハイブリッド慣れして台数が増えていくと整備もちゃんと技術をつけていくので、さらに広がっていくと思います」
(日本物流新聞2026年9月10日号掲載)