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日本シグマックス、35℃超えの酷暑現場でも冷える冷却ベスト

投稿日時
2026/06/30 09:37
更新日時
2026/06/30 09:40

医療機器メーカーが本気で挑む熱中症対策

医療機器や整形外科向けのサポーターメーカー・日本シグマックスが、熱中症対策市場へのアプローチを強めている。腰サポーターで出荷枚数国内首位の同社は、信頼性の高い技術を産業市場へ展開すべく「MEDIAID(メディエイド) ICINGGEAR(アイシングギア)」を立ち上げた。「アイシングギア ベスト2」は、気温35℃を超える酷暑環境や従来の熱中症対策製品では太刀打ちできなかった過酷な現場に向け、2025年に全面刷新した水冷式冷却ベスト。冷却療法から生まれた独自の冷却技術で、現場の環境改善に新たな選択肢を提案する考えだ。


日本シグマックスは医療事業のほか、スポーツ向けサポーターブランド「ZAMST(ザムスト)」でもトップシェアを持つ。これらの技術を活かして立ち上げた「メディエイド」では、21年に腰痛対策が急務となっていた産業分野へ進出。当初はアシストスーツなど身体の負担を軽減する製品が中心だったが、23年からは熱中症対策に有効な冷却ベストも展開している。

なぜ同社が冷却ベストの開発に踏み切ったのか。背景には、従来のウェア型熱中症対策製品が抱える「酷暑の現場ほど使えなくなる」という弱点があった。例えば広く知られるファン付き作業服は気温35℃を超えると熱い外気を服の中に吸い込むため、かえって熱風を浴びてしまい相性が悪い。氷や保冷剤、凍らせたペットボトルを利用する冷却服は、酷暑環境下ではすぐに氷が溶けて効果が長続きしない課題がある。近年増えているペルチェ素子を身体に直接当てる冷却ベストも、作業中にプレートが動くと上手く冷えないなど、過酷な現場ほど有効な対策が難しかった。

これに対して水冷式冷却ベスト「アイシングギア ベスト2」は、整形外科で手術後の炎症や腫れを抑える冷却療法用装置をベースに開発された。冷蔵庫に使われる半導体「ペルチェ素子」で水を冷やし、冷水を循環させて広範囲を冷やすシステムだ。この医療用技術とサポーターで培った体にピタッと密着する素材・設計を応用し、23年に初代モデルを発売。外気温35℃を超えると冷えが弱くなる点や、バッテリー持続時間の短さ(1.5時間)、腰部にユニットがあるため座り仕事が難しいといった初代の課題を、今作ではすべて構造変更でクリアした。

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まず冷却ユニットの性能を大幅に高め、気温35℃以上の酷暑環境でも確実な冷感が得られるようにした。ペルチェ素子で冷やしたごく少量(100㍉リットル)の冷水を冷却パッドに循環させる構造のため、氷を補充する手間がなく、外気温に左右されない安定した冷却効果を長く維持できる。バッテリー稼働時間は5時間に伸び、始業から昼休憩までしっかりとカバーする。

構造も刷新。冷却パッドを内側に装備した「インナーベスト」と、冷却ユニットとバッテリーを作業着の上から装着するための「ユニットホルダー」を分けた、セパレート構造を採用した。インナーベストはTシャツなどの上に着込み、冷却パッドを肌に密着させる。その上から作業着を着て、最後にユニットホルダーを背負う仕組みだ。循環する水は少量のため動きを邪魔せず自然な着け心地で、太い血管が通る背中と脇を効率よく冷やす。背中にユニットが位置するため重さを感じにくく、フォークリフトの運転や溶接などの座り作業の際は、バッテリーを外して外部から電源を取れるなど柔軟な設計だ。記者も試着したが、装着して1分もしないうちに冷感が得られ、動きも阻害されなかった。

電源を入れると、身体に負担がなく一番心地よいとされる水温をキープする。水風呂のように人間の身体は同じ冷たさにはすぐ慣れてしまうが、一定間隔で冷却温度に強弱をつける「ゆらぎ」機能を搭載。涼しさを感じにくくなる現象を防ぎ、長時間の作業でも冷感が継続する。

酷暑現場にこそ刺さる

外気温に影響されず身体を確実に冷やせる利点は、炎天下の屋外作業はもちろん、これまで何を使っても冷やせなかった過酷な環境にこそ生きる。例えば粉塵が多くファン付き作業服が使えない現場や製鉄所などの熱源付近、天井が高く空調の効かない工場・倉庫などだ。営業を担当する田中大稀氏は「従来の暑さ対策製品ではカバーしきれなかった市場に刺さる。販売店からも『今までなかった商材』と高い評価を得ている」と自信を見せる。

ファン付き作業服と比べやや高価だが、インナーベストやバッテリーを単品で購入することも可能。現場の予算や使い方に合わせて必要な分だけ導入できる。

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(日本物流新聞2026年6月25日号掲載)