プラスバイプラス、建設現場の利益・原価を丸見えにする管理ソフト
- 投稿日時
- 2026/07/01 09:00
- 更新日時
- 2026/07/01 09:00
社長の頭の中を伝えれば、建設業はもっと儲かる
建築資材が高騰し、真面目に仕事をしても赤字や薄利に陥る工事業者が全国で多発している。経営者の勘と経験による原価管理を、資材の高騰ペースが上回りつつある証だ。プラスバイプラスの原価管理ソフト「KANAME(カナメ)」は、中小工事業者の利益改善に主眼を置いたツール。社長1人が抱え込んできたお金の流れを丸見えにすることで、社員全員で稼ぐ会社へと変わる。そんな新たな仕組みに迫る。
工事業の社長にはいくつも悩みがある。1つは人手不足。仕事は多いが職人が足りず、社長自らも日中は現場で汗を流す。もう1つは工事資材の値上がり。インフレや円安、中東情勢の影響であらゆる資材が高騰中だ。ただでさえ忙しいのに、価格変動を毎日チェックして、マメに原価表に反映している暇はとてもではないが捻出できない。「一人親方」はさらに切実だ。夜、現場から戻ってPCを起動し、ひとまず今までと同じ原価で溜まった見積もりを何とか消化していく。
かくして日本中の現場で、工事を終えて集計してみるまで、実際にかかった原価と利益が正しく把握できない状況が生じている。真摯に施工をしているにも関わらず赤字や薄利の案件が頻発。追加の部材購入や急な修理対応を職人が報告し忘れ、費用を“とりっぱぐれる”ことすらある。こうした原価や利益の苦労は社長や経理など限られた数人の肩にかかり、その状況を周囲の職人は知らない。こうして中小工事業者の体力がジワジワと失われていく。
建設業の疲弊を止める手立てはないか。その観点でプラスバイプラスが開発したのが原価管理ソフト「KANAME(カナメ)」だ。同社は元々、水道・電気工事業向けに材料の拾い出しや工事申請書の作成を自動化する独自のCADを販売していた。だが創業10年が経ったころ、ユーザーから「様々な工事書類を一元管理できるソフトを作ってくれないか」と要望を受けた。
KANAMEはこの声に応えて開発された。対象は建設業界の29工種すべて。見積や図面、契約書など工事に必要な書類をすべてシステム上の工事台帳に紐づけ、フォーマットも提供する。スマホで提出された日報は同システムに格納され、案件ごとの工数や材料費(原価)をリアルタイムに算出。社員全員が「いま、いくら儲かっているか」を把握でき、各自がコストを意識して筋肉質に稼ぐ体制が生まれる。この“利益グセの構築”こそKANAMEの本質的な目的だ。
導入したある工事業者は、赤字案件の解消を進めたところ売上がピーク時の半分になっても利益は2~3倍になった。導入件数は社員20人以下の企業を中心に約1500社を数える。水道、電気、内装、塗装、足場―
業種は違っても課題は同じだ。「職人さんは少ないし、仕事は多い」。創業メンバーの1人である市場開拓室の松岡徹室長はそう総括する。
■社長を現場に行かせない
「KANAMEは単なる効率化ツールではなく、周囲を巻き込む仕組みだ」と松岡氏は言う。
“周囲を巻き込む”とはどういう意味か。工事業では先述のように原価と利益の管理が社長1人の肩にかかっていることが多く、これが生産性向上や成長のブレーキだった。社長も社員に原価管理や利益の創出に参画してほしいのだが、職人は「見て覚えろ」と習う世界。経営感覚をうまく言葉で伝えられず、そもそも原価を可視化するツールもなかった。
KANAMEは工事書類だけでなく、損益計算書や貸借対照表などの決算書類も紐づけられる。情報がオープンになることで、社員も「自分たちの行動がどう利益につながるか」に興味を持ち、原価を自分事として捉えて行動を変えていく。
松岡氏は今でも多くの経営者がソフトに頼らず、自身の“勘ピューター”で現場を管理していると感じている。「そうした方々の勘ピューターは、長年の経験に裏打ちされ実際にもの凄く冴えています。だから現場は回る。ただ、それでは他の社員に社長の頭の中が伝わらないんです。逆に社長の頭の中を可視化できれば、もっと利益があがる余地があります」
松岡氏は「出た利益で建設業の認知活動に投資してほしい」と熱を込める。「若い職人のなり手が少ない。業界の『見られ方』にも課題があります。特に水道や電気といったライフラインは社会に不可欠なのに、担い手が減っている。だからこそKANAMEで会社の価値を上げ、業界全体のステータスを向上させたい」
物事には順序がある。まずは社長1人に頼る経営を脱し、会社が儲かる仕組みを作る。適正な利益という原資があって初めて、採用や業界のイメージを変えるための情報発信に力を注げるようになる。松岡氏の理想は、KANAMEを導入した企業の社長が現場に出なくなることだ。「社長は外で幅広い業種と交流し、新しい学びを会社に持ち帰る。そうして自社をより良くして発信していけば、職人を目指す人も増えると思うんです」

市場開拓室の松岡徹室長
(日本物流新聞2026年6月25日号掲載)