セキネシール「ビズリーチ」で学んだ人材獲得術
- 投稿日時
- 2026/04/22 09:59
- 更新日時
- 2026/04/22 10:03
和紙から機能性ペーパーづくりへ
若い人材の獲得は多くの企業で難しい課題の1つだろう。ところが花形の先端IT企業でも大企業でもない埼玉・比企郡の中小企業が若手社員をうまく採用している。製紙業を営む創業80年のセキネシール工業(1962年設立、社員50人)だ。
同社の社員の平均年齢は40代後半。近年は年に2人ほど若い社員を採用してきた。デジタル化が進むなか、製紙業はどちらかというと斜陽産業と言えるかもしれない。なぜ採用がうまくいくのか。
「圧倒的な熱量と行動量でしょうか」
3代目社長の関根俊直氏(37)はそう話す。「私が求人票を書くし、最初の面接から参加する。採用に至るには結局は自社の魅力を知ってもらえるかどうか。話が上手な社員はほかにいますが、自社の魅力を一番熱をもって話せるのは私以上にいません」
面接で関根社長が応募者に聞くのは上から目線の「志望動機」ではない。「どうしてわざわざウチのような会社に目を向けてくれたのか。そこにその人の価値観が表れる。その価値観を当社で膨らませて実現できると私が判断できれば、そこからの40分、50分は主にこちらからのプレゼンになる」
関根社長は中央大学商学部を卒業後、アイシン精機で工場の生産管理などに5年弱携わった。その後、転職事業を行うビズリーチに転職。「自動車部品業界や転職事業に特に関心が強かったわけではないが、家業以外の別の業界を見てみたかった」。異業種での経験を経て「やはり経営者になりたい」と6年前にセキネシール工業に入社。営業や人事職を経て2年前に現職に。人材採用のコツはビズリーチで学んだことが大きいという。
■ガスケット材づくりに転身
同社主力の山崎工場は埼玉県比企郡小川町にある。池袋から電車で1時間強の小川町駅から車で10分。人口2・7万人、自然豊かな町だ。小川町は和紙、絹織物、酒造などで栄え、その雰囲気から「武蔵の小京都」と呼ばれることもある。多いときは1千ほどの製紙会社があったが、今では2けたに満たないという。洋紙が日本に入り紙の需要が減ったことで、関根氏の祖父は和紙づくりから「自動車部品としての紙」へと舵を切った。ガスケット材づくりだ。
ガスケットとはエンジンやパイプの継ぎ目に使われ、オイルや気体の漏れを防ぐ。弁当箱のパッキンのような役割だ。今では年間1千㌧生産する同社の紙生産の95%をガスケット材が占める。耐熱性をもつほか、ニーズに応じて伝導性、絶縁性、断熱・防音性を付与することもある。いわば機能性ペーパーと言える。四輪車、二輪車業界のほか、建機、農機、工具、船舶など向けに出荷する。
同社が扱う紙の性能は大きく変わったが、つくり方は昔から大きな変化はない。繊維をベースに他の材料とともに水を加えて混ぜ、1台ずつ保有する大型の長綱抄紙機、丸網繊維抄紙機を使って、脱水・乾燥する。水分を除いてシート状にした長い紙は1㍍角に裁断して出荷する。
働きやすい職場にすべく同社は自動化を模索している。人手のかかる廃水設備の水量の調整やスラッジ(汚泥)のドラム缶詰め、抄紙機からロールに巻かれた紙の切断などが対象だ。今秋、これらを段階的に自動化するとともに紙の機能開発もいっそう進めると関根社長は言う。
「和紙からガスケット材に切り替えたことで事業を存続できたが、そのガスケット材も脱エンジンの流れのなかで需要がピークの3分の1に減っている。紙に今までになかった機能を付加して新しい仕事を獲得しなければならない」

丸網繊維抄紙機を紹介する関根俊直社長(左)と吉澤悠斗設備課リーダー
(日本物流新聞2026年4月25日号掲載)