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恩地食品に聞く「なぜ食品工場の自動化は進まないのか」

投稿日時
2026/09/25 11:35
更新日時
2026/09/25 11:39
自動化が困難なセット麺の盛り付け工程

最難関「和日配」の同社が語る“ロボットには口がない”問題

金属加工の現場であれば、中小企業であってもロボットやAMRが動き回り、夜間の無人加工も珍しくはない。しかし、食品工場となると一部の大手を除き、協働ロボットなどを活用した自動化事例は極めて少ないのが実情だ。ワーク(食材)の柔らかさや不定形さ、変種変量生産、品種切り替えの難しさなど、技術的なボトルネックがよく語られるが、果たしてそれが「本当の阻害要因」なのだろうか。

大阪では「あ〜おんちかった」のCMで親しまれる茹でうどんなど和日配(わにっぱい)メーカー、恩地食品(大阪府枚方市)を取材すると、減価償却の壁、一気通貫型ライン設計の欠如、そして内需の限界を突く「ロボットやAIには口がない問題」という根深い構造的課題が浮き彫りになった。

オリジナルブレンドの小麦粉を使用し、しなやかでコシのある「京うどん」や、食塩を使わず国内産小麦粉のみで作る「国産丸うどん」など、関西の食卓でおなじみの茹でうどんを手掛ける同社。特に食塩不使用の「国産丸うどん」はグルテンが結合しにくいため、熟成時間を45分確保するなど独自の技術が光る。

同社の基本工程は、小麦粉のミキシングから始まる。生地を麺帯状に伸ばして熟成・圧延後、切り刃で麺状にカット。茹で上げた後に急速冷却で菌の繁殖を抑えて包装し、X線検査などを経て出荷される。セット麺などの場合は、ここにエビの天ぷらや油揚げといった具材をパート社員が手作業でトッピングする工程が加わる。

深刻化する人手不足のなか、同社も手をこまねいていたわけではない。かつて鍋焼きうどんなどの成形蓋をシュリンク加工していた工程に、補助金を活用してオーバーラップ包装機を導入。様々な容器に対応する多品種少量化への第一歩として、部分的な省力化を進めてきた。しかし、現場が真に欲する核心部分の自動化となると、分厚い壁が立ちはだかる。

「最も実現したいのは、多品種少量の容器を自動でラインへ供給・セッティングする仕組みだが、技術的・コスト的ハードルから断念せざるを得なかった。さらに困難なのが具材のトッピングだ。袋麺や出汁パックのように形状や硬さが固定されているものならロボットでも扱えるが、『今日はエビ天、明日は肉を蛇腹容器に入れて乗せる』といった日々の変種変量に対応しようとすれば人の手に頼るしかない」(製造担当の平井名秀樹専務)

■「変種変量」と「償却速度」の壁

多種多様な形状の容器に対応しつつ、箱詰めして出荷する最終工程の人手不足も極めて深刻だ。さらに現場を悩ませるのが、和日配特有の低単価構造と、設備投資の回収に立ちはだかる「時間の壁」である。

加えて、食品業界の設備導入が容器や包材のディーラー、問屋経由で提案されるケースが多く、工場全体を俯瞰して最適化するロボットSIerとの接点が薄い点も、工程間をつなぐ作業が人手に依存し続ける一因となっている。

「根底にあるのは製品単価の安さだ。我々の業界の設備投資は10年償却を基本とする。仮に高額なロボットを導入し、推奨通り5年で早期償却しようとしても、工場を24時間フル稼働させることはできない。10年償却と言いながら実際には半日(1シフト)しか動いていないのが実情で、5年で採算を合わせようにも物理的に不可能だ。結局、稼働できる『時間』と求められる『償却速度』の計算が根本から合っていない」(平井名専務)

仮にあらゆるコストや技術条件をクリアしたとして、「では、仮に24時間稼働は可能なのか」と問うと、恩地宏昌社長は「量(需要)がない」と即答する。

金属加工をはじめとする一般的な製造業であれば、ロボットやAIで生産性を引き上げ、海外輸出などグローバル市場へ展開してスケールを追う道も拓ける。しかし、賞味期限が短く作り置きができない和日配製品は、人口減少の直撃を受ける国内市場がすべてだ。

ロボットやAIは生産効率を劇的に高めることはできても、従業員と違い、自ら製品を消費して需要を生み出してくれる「口と胃袋」までは持っていないのである。

「人が集まらないのは事実だが、目指すべきは24時間運転ではなく、8時間という基本シフトの中で少人数がいかに高い生産密度を出せるかだ。需要が落ちて生産密度が低くなる時間帯でも社員の給与は発生する。だからこそ昼夜体制を見直し、効率の低い夜間稼働を半減させるアプローチを進めている」(恩地社長)

同社が目指すのは、人間を工場から排除する「完全ロボット化」ではない。「社員の生活を守ることも経営の大切な役割」と語る恩地社長の言葉通り、過酷な夜間労働を減らし、日中の1シフトで高密度に稼働する「人間主体の省力化」こそが、内需型食品製造の現実解といえる。

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補助金を活用してオーバーラップ包装機を導入。写真は稼働前のテストライン