Thinker、JR東日本プログラムで最高賞
- 投稿日時
- 2026/07/02 11:09
- 更新日時
- 2026/07/02 11:13
「器用なハンド」で鉄道保線を自動化
ロボットハンドの開発を手掛けるThinkerは6月4日、東日本旅客鉄道とJR東日本スタートアップが開催した「第13回JR東日本スタートアッププログラムDEMO DAY」で、最高賞の「スタートアップ大賞」を受賞した。鉄道保線現場の省力化・自動化に向けた技術力と、インフラの持続可能性への貢献が総合評価された。
同プログラムはベンチャー企業の技術とJR東日本グループの経営資源を掛け合わせ、社会課題の解決や新事業創出を目指すオープンイノベーション事業。Thinkerは採択企業として、レール交換時に一晩で約1300個を手作業ではめ込むレールクリップ再設置作業に着目しソリューション案を提示した。
対象となるレールクリップはサビや熱変形で形状がばらつくうえ、暗所での屋外作業という過酷な環境が重なり、従来型のロボットには難易度が高いとされる現場だった。同社は人の手のように柔らかく手探りができるロボットハンドに、エッジAI搭載のセンサーを内蔵。不均一な形状のクリップを瞬時に認識・把持し、所定の向きに修正したうえで線路の穴にはめ込む一連の作業を自動化するとした。
登壇した中野基輝CTOは「今回の取り組みを先駆けとして屋外インフラ市場でのロボットの活用を広げ、鉄道保線全体の自動化を支える中核的な存在を目指したい」と述べた。
miniインタビュー
Thinker 代表取締役 CEO 藤本 弘道 氏

――貴社技術の核心は。
柔軟な手首と指先を活かした『手探りピッキング』技術だ。カメラで大まかな位置を把握した後、対象物に軽く触れながら人間のように手探りでつかみ取っていく。接触力は約40㌘で、人間が訓練してやっと到達する水準。これにより、環境のばらつきが多い現場でも、事前の綿密なティーチングが不要になる。ハードウェアが器用であれば、AIの学習データが少なくて済む。
――なぜロボットではなくハンドに取り組んでいる。
長年、多様な形状を扱えるロボットハンドの開発は業界の『鬼門』とされてきた。コストが合わないから。しかし、AI側がいくら発達しても、フィジカル側の手の能力が低いと現場では活躍できない。世間でいうフィジカルAIは大量のデータを事前に学習させる手法が主流だが、現場はパターン通りにはいかない。現場の状況にあわせて、指先が考えて器用に動くロボットハンドがあれば、ロボットがもっと使いやすくなる。そもそもデジタル技術のコモディティ化が進んでおり、ソフトだけでは差別化が難しくなっている。日本が世界で勝負できる領域はハードウェア、モノづくりの力しかないと信じている。
――5月には新しいハンドを出したが。
これまでのThink Hand Fは指先の柔軟性を高めることで、バラ積みピッキングを中心に活躍してきた。新発表の「Think Hand proto-2」は手首に柔軟性を持たせることで、人間のように探りながらグリグリとはめ込む「手探りコネクティング技術」を実現している。これにより自動車のワイヤーハーネスのコネクタ差し込みなど、繊細かつ力強く押し込む必要のある工程の自動化が実現できる。
――連携会社・SHIN-JIGENとの協業も深めている。
狙いはロボットを現場に実装し、日々の作業を通じて自ら成長していく「オンサイト学習AI」の実現。事前に大量のデータを用意する大規模学習は予定調和の環境でしか機能しない。当社の器用なハンドで得た良質なデータをSHIN-JIGENのAIで現場学習させることで、今日より明日、明日より明後日と環境に合わせて賢くなるロボットを目指している。
――将来の構想は。
作業員が工具袋から工具を出し入れするように、ロボット自身が用途に合わせてハンドを付け替えながら作業する姿を描いている。当社のハードをプラットフォームとして様々なシステムAIや他社ロボットと接続できるようにし、ティーチング不要で家電のように誰もが気軽に使えるロボットを世に広めていきたい。
(2026年7月2日MonoQue掲載)