二九精密機械工業、仏具製造から府内屈指の金属加工サプライヤーに
- 投稿日時
- 2026/07/24 15:40
- 更新日時
- 2026/07/24 15:42
京都の伝統工芸品である仏具製造に端を発する二九精密機械工業は、今や府内屈指の金属加工サプライヤーだ。5代目の二九直晃社長に同社の歩みと今後をたずねた。
「祖父が製造、祖母が営業を担っていました。祖母がリアカーを曳いて納品に向かっていたと、父や伯父からよく聞かされました」二九精密機械工業の5代目、二九直晃社長は創業当時の苦労話を語る。
創業109年目の同社の原点は“おりん”、つまり仏具用真鍮鋳物だ。戦後、直晃氏の祖父・二九保長氏が産業向け精密金属加工に舵を切る。ある日、後に世界的企業になる京都の会社の購買担当が同社を訪れた。用件はステンレスの難加工。彼は「こんな加工、できませんよね?」と言ったという。焚き付けられた保長氏は「ワシならできるわい!」と答えたのかどうか、細部の記録はないが見事に加工したのは確かだ。この企業は60年超を経た今も取引が続く。
今の同社は京都有数の金属加工サプライヤーだ。主に医療・分析・半導体へ精密部品を提供。社員は280人に及ぶ。飛躍の契機は09年、世界に先駆け十年がかりで工業化したβチタン製極小径パイプだった。
特徴は弾性と復元性で分析機器のノズルに使われる。丸棒に深穴をあけ3本のローラーで圧延し、引き抜き加工で径を絞り製造する。外径0.5ミリ、内径0.3ミリだが、内面が粗いと注入する液の量がブレるため独自装置でツルツルに磨く。この販売が軌道に乗り12年に京都工場を設立。以降も積極投資で部品加工需要を呼び込み、20年八木第二工場の新設など目覚ましい成長を遂げた。
成長の裏には貪欲な探求心がある。フェムト秒レーザー加工機は黎明期の18年に導入。元々外径1㍉以下の微細加工を得意とし、レーザー接合や表面改質、微細なはんだ付けなど切削以外の技術を数多く育ててきた。「切削屋というよりデパート。様々なレシピがある」。単独で無理なら協力先を探すのが“文化”だ。行政や大学と共同研究も重ね、京都府と共同開発した世界初の極細パイプ用内面粗さ検査装置はβチタンパイプの量産工程の確立に大いに役立った。
同社では顧客から寄せられた課題を「テーマ」と呼び、中長期軸で腰を据えて技術開発する。幾つものテーマが並行して研究され、いつか日の目を見る時を待っている。「マニアックなことばかりやってる」と二九社長は笑うが、この尖りっぷりが同社の価値だ。
「今後は部品+αの価値を提供しなければ」。二九社長の目は鋭い。医療・半導体業界は近年、品質に加え製造工程の妥当性を客観的データに基づき担保するよう求め始めた。切削の妥当性は保証しやすいが、接合や組立も含めると話が違う。良品を作り、その背景情報も提供せねばならない。「そうできる会社に変えたい。百年先も続く会社であるためにも」。同社の目線は先を向いている。
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)