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人口減少時代の働き方改革

投稿日時
2026/10/22 14:18
更新日時
2026/10/22 14:29

「成長」と「持続」を使い分けよ

日本の「働き方改革」が抱える構造的機能不全の根本は、外需産業と内需産業の決定的な乖離を無視し、一律の成長モデルを当てはめてきた点にある。細る内需市場において、デジタル技術や無人化投資を、20世紀型の「薄利多売による数量拡大」や「無償の過剰サービス維持」に費やすことは、産業全体の首を絞める合成の誤謬になりかねない。

世間は深刻な「人手不足」という供給側の悲鳴ばかりを上げるが、消えた労働者は、同時に「消えた消費者」である。この絶対的な需要縮小を直視せず、限界費用がゼロに近づく技術で無批判に効率化を競い合えばどうなるか。待っているのは凄惨な価格破壊であり、企業の営業余力も賃金原資も、自滅的な過当競争のなかで摩耗していく。

■労働者不足は消費者不足

今後の働き方改革は、明確な「二元論」として再構築すべきではないか。世界80億人の成長市場を相手取る外需産業は、先端設備やAIへの資本投下を集約し、付加価値額そのものを非連続に伸ばす「攻めの生産性向上」を突き詰める。一方で、急激な人口減少に直面する内需産業に求められるのは、増産競争からの脱却であり、人手不足による供給崩壊を防ぎながら社会の軟着陸を支える「レジリエンス」の確立である。

本特集では、食品や建設など内需を支える産業の現場を歩き、省力化やアシスト技術を通じた「持続可能な働き方改革」の未来を探った。




オカムラ つくば事業所

工場向け空間ユニットを導入

暑さ対策起点に働きやすさ追求


オフィス家具・空間設計大手のオカムラは、オフィス空間における働きやすさや働きがいを追求してきた。4月、これまで培ったワークプレイスづくりのノウハウと、猛暑対策や人材採用・定着など製造現場が抱える課題を掛け合わせた空間ソリューション「Lives Room(ライブスルーム)」を発売した。同製品を初設置した同社・つくば事業所に行き、導入の背景や現場の反応を探った。


「ここ数年の夏の暑さには正直参っていた。工場の環境改善において『暑さ対策』は間違いなく最も重要な課題の一つだった」

そう話すのは同社 ワーク&ライフクリエイション事業本部 つくば事業所 事業所長の北川博一氏。1991年に稼働し、オフィス収納やワークブース、医療・研究施設向け什器などを手掛ける同事業所は、コロナ禍以降のワークブース「TELECUBE by OKAMURA」の需要急増を受けて2023年に新棟を建設した。

新棟には全館空調が導入されるなど快適な作業環境が構築された一方、既存棟との作業環境の差が目立つようになった。「既存棟でも大型の送風機やファン付き衣類などを導入してきたが、目に見える違いに不公平感やモチベーションへの影響が心配された」(同事業所 製造部部長の塚田研次氏)。

設置したLives Roomは床、壁、天井を備えたプレハブ式の空間ユニットで、一歩足を踏み入れると工場の熱気をシャットアウトする。エアコンも標準搭載しており、騒音を和らげる遮音性や明るい照明・内装と相まって、居住性を高める。

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オカムラ つくば事業所内に設置された空間ソリューション「Lives Room」

「簡易的な暑熱対策アイテムは身体を一時的に冷やすための機能に特化しているものが多い。Lives Roomはお昼などにしっかり休憩したい場面でも活躍する」(塚田氏)

■最適な空間提案

サイズは工場の遊休スペースにも設置しやすい2連モデル(外寸5625×2850×2500㍉)と3連モデル(8400×2850×2500㍉)を用意し、照明や換気設備なども標準で搭載する。ユニットはモジュール化されており、設置も1週間ほどで完了するため生産への影響も最小化する。

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定時の休憩やお昼休みだけでなく、執務や面談など、使い方は人それぞれ。構内の物流業務を行う女性従業員は「以前の休憩スペースは薄暗い感じだった。以前は現場近くで休みを取っていた者も、Lives Roomにわざわざ来るようになってコミュニケーションが増えた」と話す

このように、ハード面のこだわりも多くあるが、最大の特徴は従業員の働き方や働きがいを追求してきたオカムラならではの「空間提案」にある。20色ものカラーバリエーションと、同社の多彩なオフィス家具を組み合わせることで、現場に合った使い方や空間まで一貫して提案する。

つくば事業所でも従業員の声を元にカフェのような空間づくりを意識。机と椅子をただ並べるのではなく、ハイカウンターやソファなどを用意し、休憩のほか、執務や面談などでも使えるように工夫した。実際、休憩に来たスタッフは、他の従業員と雑談をしたり、スマホを触ったり、デスクワークしたりなど、思い思いの時間を過ごしていた。

「オカムラはパーパスとして『人が活きる社会の実現』を掲げている。オフィス空間に限らず、働く全ての人々が活き活きと活躍できる場を整えることは全社的なテーマ。Lives Roomは、そんな当社が人手不足や人材定着に悩む製造現場に対し提案する、ありたい姿の実現を支援するための手段の一つ」(同事業本部 開発創造本部の髙井諒介氏)

考えてみれば、働く空間や設備に従業員自身が主体的に関われる機会は意外に少ない。ましてや工場では、安全性や生産性の観点から、そうした余地はさらに限られる。Lives Roomは、設置して終わりではなく、使い手の声を聞きながら変化していける。暑さ対策から始まった休憩室は、現場が自分たちの職場を自分たちでつくっていく、その入り口になる。

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左から、同事業所 人事総務課の檜山課長、塚田製造部長、北川事業所長、製品担当の髙井氏






フジタ、四足歩行型ロボット「Spot」に独自ペイロード

若手社員の意欲向上も


「Spotは走破性に優れるが、ただ歩くだけでは現場で仕事にならない。『何をどうすれば現場の省人化が叶うか』という目的から逆算して開発をスタートした」と、開発を担当したDX推進研究部の千葉拓史部長は振り返る。

具体的には、360度カメラを活用して工事の進捗を可視化。建設施工管理プラットフォーム「OpenSpace(オープンスペース)」と連動させ、図面と現場写真をセットで自動記録する。さらにBIMモデルと写真を紐づけて記録することで、工程管理やスケジュール調整ともスムーズに連動させている。

「実は、施工管理の業務で大きな割合を占め、負担となっているのが、こうした現場の進捗管理や写真撮影だ。しかも、これは若手社員にとって決して『やりがいを大きく感じる作業』ではない」と千葉部長。こうしたルーティンワークをロボットに代替させて、社員の負担軽減やモチベーションの向上を図るとともに、より高付加価値な企画・施工管理業務へとリソースをシフトさせる狙いがある。

技術センターの高森直樹所長は、「国土交通省の掲げる2040年までに少なくとも省人化3割、すなわち生産性1.5倍を目指して、労働時間規制に対応した残業削減も急務。その手段として、今後もロボット活用の場を広げていきたい」と意気込む。

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独自開発の付属機器(ペイロード)を搭載した「Spot(スポット)」を紹介する高森直樹技術センター所長(右)と千葉拓史部長

市販のカメラ等を単に後付けする事例は他社にもあるが、独自ペイロードを開発し、自社のクラウドサービスと連携させて「定期巡回から複数台の集中管理まで」を一気通貫でシステム化した点が同社ならではの特徴となっている。

■建設プラットフォームも見据え

さらに、このシステムはSpotにとどまらず、他の建設ロボットへの水平展開も可能だ。同社は将来的に、次世代のヒューマノイド(人型ロボット)への搭載・応用までも見据えて開発を進めている。「ドローンや自動搬送、溶接、ボード張り等のロボットも開発を進めており、群制御(群れ化)も視野にある」(高森所長)。

開発で苦労した点として、建設現場特有の不規則性への対応があるという。「建設現場は日々変化し、新しい階段や壁ができる、仮通路が撤去される、資材が急に搬入され置き場が変わるなどロボット運用の観点から不確定要素がある。そこを安定運用させることこそが開発の難所だった」(高森所長)。

先行投入したペイロードから得られる現場のリアルデータを基盤化すれば、新しい可能性も広がる。「ペイロード自体の外販は今のところ考えていないが、得られるロボットデータはフィジカルAI等での活用ができる。建設現場の学習データは現在非常に希少であり、この活用も併せて考えていきたい」(千葉部長)。「工場を建設した施主企業から、維持管理で使いたいという要望もあるため、柔軟に検討したい」(高森所長)と、単なる現場作業の代替を超え、プラットフォームとしての将来を見据える。


■関連情報 


なお同社は、京都フードテックエキスポ(みやこめっせ・2026年10月27日〜28日)に出展予定。南田辺西地区で開発を進めるフードテックをテーマにした次世代型産業団地をアピールする。






ルネセイコウ、姿勢自在なテンポラリーチェアで座り方改革

立ち仕事の疲労を軽減


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高さ5段階調整機能を備え、多様な作業姿勢に対応する「テンポラリーチェアEX」

働き方改革の波はデスクワークにとどまらず、製造現場や店舗などの「立ち仕事」にも波及している。ルネセイコウは、多様な現場にフィットする最新型「テンポラリーチェア」の提案を強化している。

労働安全衛生規則第615条では立ち作業者への椅子設置が義務付けられているが、「座ることへの心理的抵抗感やスペース制限から導入が進みにくい課題があった」(同社)という。同製品はこうした現場の葛藤を解消すべく開発された。

特長はシート部の角度調整機能。ハイポジションでは顧客や作業対象と目線を合わせたまま着座でき、角度を変えれば身体を預ける「スタンディングサポート(チョイがけ)」として足腰の負荷を大幅に軽減する。ラインナップは5段階の高さ調整が可能な「EX」と、高さ固定の「Z」の2種類。

業界問わず労働力不足が深刻化する中、作業者の疲労を最小限に抑える環境づくりは離職防止や生産性向上に直結する。現場の「座り方」を見直すテンポラリーチェアは、負担を減らし、労働環境改善を叶える有効な選択肢となりそうだ。






フコク、重量物搬送を変える真空吊り具


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鋼板を搬送するJVDバキュームリフト

重量物の搬送は肉体的負荷が高く、労働災害のリスクもつきまとう。この課題をクリアし、省力化・省人化の切り札として多方面から高く評価されているのが、フコクの真空吊り具「バキュームリフト」だ。

バキュームリフトは、駆動方式の違いによって大きく3つのタイプに分かれる。

「無動力式(JVDシリーズ)」は、クレーンの昇降操作の力だけで内部に自動的に真空を創出する完全電源不要の吊り具である。配線コードに邪魔されない優れた取り回しと、エネルギーコストゼロという圧倒的な経済性を両立する。

「電動式(DVDシリーズ)」は強力な真空ポンプユニットを搭載したタイプで、5㌧を超える超大型鋼板や長尺のワークでも安定した吸着力で安全・確実に搬送でき、自動搬送装置と連携した全自動ラインの構築にも威力を発揮する。

「エア式(クイックシリーズ)」は、工場のエア源を利用する。無動力式では吸着が難しかった、バンドソーの切断跡があるような表面の粗い材料や、薄く軽い材料もスピーディに搬送できる。

実際の導入現場でもその効果は顕著だ。

「定尺鋼板を頻繁に扱う精密板金加工やレーザー切断の現場では、材料の補充や製品の取り出しで活用されている。従来なら薄板1枚を傷つけずに運ぶために複数人で慎重に行っていたハンドリングが、わずか1人のクレーン操作で完結するようになった。また、造船所や橋梁、建設機械メーカーといった超大型の素材を扱う製造現場や、長尺鋼板を取り扱う鋼材販売業ではDVDシリーズが活躍している」(同社)

(日本物流新聞2026年10月25日号掲載)




執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。