用途広げる3Dプリンティング
【画像1】トルンプが自社機で造形した純銅誘導加熱コイル(写真はいずれも2024年2月に東京で開かれた3Dプリンティング・AM技術の総合展「TCT Japan 2024」から
【画像2】オノックスエムティーティーが造形した純銅サンプル(厚みは実測で0.7mm前後)。
【画像3】キャステムが金型をつくらずに鋳造したアルミ合金やプラスチックの部品。
AM(Additive Manu facturing=積層造形加工)は市場のある欧州のメーカーが先行し、用途も広がっている。銅材の積層に有効なグリーンレーザーを業界で唯一扱うトルンプは、パウダーベッドおよびパウダーノズルの2種の金属3Dプリンターをもつ。純銅は光を強く反射するため加工しにくいが、熱伝導に優れるため誘導加熱コイルや冷却水管部品、熱交換部品などに使われる。パウダーベッド方式については同社は小型(最大ワーク径100×高さ100mm)を廃盤にし大型の「TruPrint 5000 Green Edition」(ワーク径300×高さ400mm)に一本化して昨春発売。「難しい純銅の積層ができるので、機械価格は従来機より2、3割高いがお薦めしている。売れ行き? 海外を含めてまだ数件だが、話は出てきている」と言う。
トルンプが自社機で造形した純銅誘導加熱コイル(写真はいずれも2024年2月に東京で開かれた3Dプリンティング・AM技術の総合展「TCT Japan 2024」から
板金加工のオノックスエムティーティー(静岡県浜松市)はそのトルンプのグリーンレーザー小型機を昨夏導入した。青嶋亮治社長は「電気をよく通す純銅部品を加工できることが強みになると考えた」と採用した理由を話す。同社はほかにトルンプ製のファイバーレーザーを使った3Dプリンターを2台もち、使い勝手はそれほど変わらないという。
「ファイバーレーザーを使ったステンレス造形に比べると、ややもわっとした表面に造形されるが、精度を求めても仕方がない。後加工するので」
同社は現在、自動車や白物家電以外をターゲットに小ロット部品を受託加工しており、「注文品の用途はわからないが試作品だと思う。(客が)量産するようになるには10年以上かかるのでは」とゆったりと構える。
オノックスエムティーティーが造形した純銅サンプル(厚みは実測で0.7mm前後)。
3Dプリンターを多数設備
一方で自動車駆動部品などを製造するティーケーエンジニアリング(愛知県弥富市)はクロムとジルコニウムが含まれる銅ライクな素材(C18150)を積層する。輸入商社の愛知産業が扱うNikon SLM Slutions AG製のパウダーベッド方式「SLM280 PS」を2020年から導入し始め、現在は4台をもつ。合屋純一常務取締役は「誘導加熱コイルを純銅でつくろうとすると分割して加工しろう付けが必要になる。C18150なら一体型にできるので、部品の性能や加工効率などを総合的にみると純銅部品と遜色ない」と考える。ニコン製を選んだ理由については「これくらいのワークサイズ(最大ワーク280×280×365mm)が必要だったし、どこも難色を示す銅の造形に愛知産業さんだけが当初から協力的だった」と話す。
樹脂3Dプリンターの活用を本格化させているのは精密部品製造のキャステム(広島県福山市)だ。5年ほど前から金型をつくらずに鋳造まで行う「DIGITAL CAST」に取り組み始め、1m角のワークが扱えるチェコや中国製のマシンを30台以上設備するようになった。使い方はまず3Dプリンターで樹脂モデルを作成→セラミックスを付加→1000℃の炉で樹脂を除去して鋳型に→アルミ合金などを流し込む、といった具合。「小ロット部品の注文に対応でき、3Dプリンターは10?20万円と安価なのでもっと増やしていく」と勢いがある。
キャステムが金型をつくらずに鋳造したアルミ合金やプラスチックの部品
(日本物流新聞 2024年3月10日号掲載)