ステージUPするパワーツール?電動・エアー・油圧工具
【画像1】タイトルイメージ(ボッシュ)
【画像2】不二空機・京セラ
【画像3】パナソニック・日東工器
【画像4】育良精機・東日製作所・西田製作所
【画像5】日東造機・マックス・ベッセル
国土交通省が5月下旬に公表した建設労働需給調査結果(2024年4月分調査)では、土木の型わく工やとび工、鉄筋工、電工や配管工など8職種全てで労働者が不足状態となっている。「残業・休日作業を実施している現場数」は前月、対前年同月比ともに上昇しているなど、現場の負担が増加。理由としては「天候不順」「前工程の工事遅延」「昼間時間帯といった時間の制約」。予測できない天候不順や、騒音問題や通行人の有無など制約が多い上、工期に間に合わせるために労働力不足のなか一人当たりの負担が増えている。
テクノロジーの進化により、現場のニーズである「負担軽減」「作業効率のよさ」に応える取り回しのよいコードレス工具の開発やボディの軽量化がはかられてきた。また過酷な現場でもフルパワーを発揮できるよう堅牢性や耐久性といったタフさも備えてきた。
格段に性能が向上したパワーツールで職人の作業効率を上げ、疲れにくく長く働けるようにすることと、経験の浅い作業者が「工具の使い方が難しい」「熟練工との精度のバラつきが出る」ということで現場を離れてしまわぬよう、作業の均一化を目指すことも重要だ。いまいちど身の回りの電動・エアー・油圧工具を見直し、新たに生まれたパワーツール活用をはかりたい。
■バージョンアップや振動障害軽減も
パワーアップを続けている西田製作所の油圧フリーパンチ「NC-TP-F3」シリーズは板厚3.2t×厚鋼104を1回抜きできるパワフルさで「業界トップシェア」の人気を誇る。ヘッド部がタテ180度、ヨコ180度に自在に回転でき、小さいボックスの穴あけ作業や既設配管を避けて作業可能。様々な現場で使いやすく、売上げを伸ばし続ける。また、配電盤のケーブル取り込み用などの穴あけ作業に使える、充電AC兼用の油圧パンチ「NC-EF-36Zシリーズ AIDER(エデ)」。HIKOKI製バッテリーを標準付属し、強力な36Vブラシレスモータを搭載。板厚3.2t×厚鋼104を1回抜きでき、「世界最速レベル」(同社)のハイスピードで穴あけを迅速に行える。新搭載のBluetoothバッテリーでは、スマホからスピードやスイッチの遊びなどの設定変更が可能。作業者によって異なる使いやすさを追求できる。
ボッシュのBITURBOシリーズは、ProCORE18Vバッテリーとの組み合わせでハイパワーを発揮
ボッシュの「BITURBO(倍ターボ)」シリーズは18Vのコードレス電動工具だが、「ProCORE18V」バッテリーを組み合わせて使えば、電圧を上げることなく「36Vと同等以上のパワーを発揮」(同社)。最新バッテリーセルテクノロジーとバッテリー管理システムにより従来比87%もパワーアップした。ハイパワーが求められる現場でもコードレス工具で快適に作業できる。
不二空機の高トルク対応ナットランナー
不二空機の低振動ツールシリーズは、圧倒的な低振動性で作業者の健康被害を防ぐ。ニードルスケーラーやチッパ等の振動工具は厚生労働省より、工具ごとの振動値によって1日の作業時間数が厳密に指定されている。同社は独自機構で振動を大幅に抑え、振動障害のリスク低減と共に、1日の作業時間も伸ばす。また、最大8100N・mまでの高トルクに対応する電動ナットランナー「CP86」シリーズは、スマホアプリで締付作業をレポートでき、作業の品質確保にも使える。「安全性が求められる大型車両や風力発電や、大型プラントで支持されている」(同社)という。
【京セラインダストリアルツールズ】
電動ドライバーとトルクレンチの1台2役
?インサート交換時間の大幅短縮へ
インサートの多いフェースミルカッタも電動ドライバーで素早く交換できる
切削工具に取り付けたインサート(チップ)の交換用として、京セラインダストリアルツールズは電動ドライバー機能とトルク管理を1台にもたせた、充電式インサート交換ドライバー「DTD500」を今春上市した。「発売前から展示会でお披露目していたが反響が大きく、想定していたより多くの先行予約をもらっている」(事業推進事業部広報デザイン課責任者・青木一夫氏)と話す。
インサート交換は、手工具でネジのゆるめ・締め付けを行い、道具を持ち変えてトルクレンチでトルク値を確認するといった手作業が今も行われている。刃先が多いフライス工具では定期交換や摩耗によるコーナーチェンジの時間はかかるが、「手でやるものという現場の認識があり、電動化ニーズが顕在していなかった」と背景を語る。
DTD500は電動でネジのゆるめと締め付けを行い、手動による増し締めで、トルクが設定値に達するとクラッチが作動し締め付けが完了。1?5N・mの範囲でトルク値の調整が可能だ。「業界初」の電動ドライバーとトルクレンチの機能を備えた1台2役で特許を取得した。
電動化により得られる大きな効果は作業時間短縮。フェースミルカッタのインサート取付けだと「付属レンチと汎用トルクレンチによる従来の交換時間に比べ、DTD500なら約半分」(同社)と大幅に削減。作業者の技量による作業時間や締め付け精度のバラつきも軽減し、初心者でも均一な作業を行える。
開発のきっかけは同社の前身であるリョービ電動工具事業が京セラに事業承継されたことだ。「工場向け工具はこれまでもラインナップしていたが、切削工具に関連した電動工具はなく、京セラの機械工具事業部とのシナジーから生まれ、協力しながら、開発・発売に至った」とし、「DTD500は初分野での取組みということもあり、ユーザー層に持ち込み評価をいただき、現場の声を特に多く取り入れた製品」だという。
「切削工具分野でも当社の認知度向上に繋げたい」とシナジーが生んだ新たな切り口に期待を寄せる。
【パナソニック】
電動工具のアタッチメント拡充
?建築現場の時短と負担軽減に
ワンタッチで取り付けられる振動ドリルアタッチメントを7月にラインナップ
パナソニックの電動工具ブランド「EXENA」のアタッチメントの拡充が続いている。
小さなヘッドで取り回しが良く独自機構による芯ブレ低減などで好評な充電インパクトドライバー「EZ1PD1」と、「同社史上最小・最軽量」という充電ドリルドライバー「EZ1DD2」はスペック面や作業性の良さから人気がある製品だが、とりわけ現場から厚く支持されているのは独自のアタッチメントシステムだ。
各種アタッチメントを交換すれば本体1台でケーブル切断や圧着作業、スミ打ちなどを行える。「専用工具の本体をそれぞれ準備することなく作業できるため、重くなりがちな荷物を減らせる。車と作業場の往復移動時間の短縮にもなり、アタッチメントの交換もワンタッチで効率よく作業できる。例えば盤施工時に従来必要な工具一式に比べ、重量は約36%減、物量(体積)は約30%減になる」(同社)と人材不足が深刻な建築現場の負担軽減をはかる。
現在6種類のラインナップに加え、7月には振動ドリルのアタッチメントを発売予定。ドリルドライバー本体に装着すると振動機能が付与される。モルタルやレンガ、タイルなどの割れやすい部材の穴あけができる。振動モードとドリルモードの切り替えができ、プラグ施工も本体1台で可能。
また、EXENAリリース時より「ATTACH8(アタッチ エイト)」としていたアタッチメントシステムの名称を「ONE ATTACH(ワン アタッチ)」と刷新。「本体1台とアタッチメントで様々な作業ができる」ことを分かりやすく訴求し、今後もラインナップを拡充させていく。EXENAの多彩なアタッチメントシステムが、現場にかつてない身軽さを届ける。
【日東工器】
軽量な充電式コードレスベルトン
?削りすぎ防止機能でムダ・ムラ低減
CLB-10
片手で使える18Vバッテリーのコードレスベルトン「CLB-10」を5月初旬に発売した日東工器。研磨用ベルト幅が10mmで、重さ1.4kg(バッテリー搭載時)と、金属部品の研磨や錠前の取り付け工事などの細かいバリ取り作業に向く。
HiKOKI製の軽量バッテリーが標準で付属しており20分の急速充電が可能。コードレスで電源やエア源のない場所でも取り回しがよく、ベルト交換を工具不要で行えるなど手間を省ける。ベルト回転速度は6段階、ベルトの回転方向は正転または逆転に切り替えられ、切粉の飛散方向も調整できる。
新しく加わったのは、過負荷検知機能と押し当て調整アラーム。研削中のモーター過負荷をLEDランプの色で知らせ、過負荷が続くとモーターが停止する。材料の削りすぎや研磨の使い過ぎを防ぐ。
押し当て調整アラームは、事前に押し当てレベルを3段階で設定すれば、研削中にそのレベルに達するとLEDランプが点滅。ムダな削りすぎを防ぐとともに、作業者の力加減や感覚、作業箇所によって異なる仕上がりのムラを防げる。
【育良精機】作業性向上の充電式穴あけ機
建物の修繕・改修などのリニューアル工事の増加で需要が増加している育良精機の「コードレスライトボーラーISK-LB30Li」は、シリーズ初の36Vバッテリー搭載のコードレス式。質量は8.8kgと軽量で、現場の穴あけ作業に力強さと利便性を両立する。
本体固定に永久磁石を採用することで、磁力を保持した状態でバッテリー交換を可能に。本体固定に電力を使わないためより多くの穴あけを実現し、磁石用スイッチを切るとモータも停止するなど作業性と安全性を追求した。さらに、工具レスでの刃物交換や、刃物の中心をLEDで照射できる便利な機能も多数搭載する。
【東日製作所】三位一体のデジタルトルクレンチ
東日製作所の「CEM3-BTシリーズ」は、Bluetooth搭載のデジタルトルクレンチ3機種(CEM3-BTS、CEM3-BTD、CEM3-BTAシリーズ)を1機種に統合したモデル。
単方向通信のBSTシリーズと双方向通信のBTDシリーズ、角度センサー搭載のBTAシリーズをBTシリーズに統合することで、機能ごとに別の機種を追加購入する必要がなくなった。
3機種の機能は設定で切り替えられ、既存システムの流用も可能。統合後の価格(税別)も従来機種の18万9千円?と据え置き、新規導入コストを低減する。
この統合に合わせ5月21日からBluetooth製品のプロファイルのデュアルモード化(SPPとGATT)も行い、OSに依存せずiPadなどの機器にも対応する。
【西田製作所】素早く切断できるメッセンジャーワイヤーカッタ
西田製作所のイチ押し製品は、充電AC兼用のメッセンジャーワイヤーカッタ「DMC-135HR」。135平方mm(φ15)のメッセンジャーワイヤーも2秒で切断可能だ。「作業時間を短縮でき、撤去作業に最適。トロリー線も切断できる」(同社)という。
ヘッドとモーター部は360度回転構造で、取り回しがよく狭所作業でも使いやすい。国内生産で高品質を確保しているのもポイントだ。
充電時間は約25分、1回のチャージで90平方mmのワイヤーを380本、135平方mmメートルだと250本切断できる(目安)。100VのACアダプタ(別売)を使えば連続作業も可能。
【日東造機】金型交換不要のアングル加工機
日東造機の小型アングル加工機「FM-30」は、標準セットだけでステンレスアングル75mm×板厚6mmの加工が可能。Vノッチやコーナーカット金型、ベンダー金型が組み込まれているため、レバーの切り替えだけで5種類(Vノッチ・アングルベンダー・90度コーナーカット・スミ切り・穴あけ)のアングル加工ができる。クランプベースを調整すれば位置あわせが簡単に行えるなど、作業の簡素化・効率化に貢献する。
本体と油圧ポンプが分かれているため作業頻度に応じてユニットを選定(高速型ポンプ〈450W〉、超軽量型ポンプ〈350W〉)でき、工場内設備としてだけでなく解体現場などにも持ち運びやすい。
【マックス】結束速度0.5秒の鉄筋結束機
マックスの充電式鉄筋結束機「ツインタイアRB-442T」は、2017年の発売以来、鉄筋結束作業の効率化に寄与してきた充電式鉄筋結束機「ツインタイア」シリーズを、昨年12月に初めてフルモデルチェンジした。
従来から好評の十分な結束力とミミの高さ低減などの性能はそのままに、内部構造を見直すことで1回の結束スピードを0.5秒にした(従来比1.4倍)。「ワイヤ装てんアシスト機能」を搭載することでより簡単・スムーズなワイヤ交換が可能。また、トリガ操作部をショートストローク化することで、作業者の負担をさらに軽減する。「建設業で深刻になっている人材不足に対応したい」(同社)考えだ。
【ベッセル】エアーニッパーADVシリーズ
?加圧力アップ EV製造に対応
ベッセルは、自動車のEV化で軽量化のため硬質樹脂材料の使用が増え、能力の高い機種の要望が増えてきたことを受け従来機種に比べ加圧力をアップしたエアーニッパー「ADV」シリーズを充実させている。
丸型レバーなしのGT-NR20Aや角型のGT-NS20Aでは、従来機種比で加圧力が約20%アップ。GT-NR30AやGT-NS30Aで50%アップ。さらに増圧ユニットもリリースしさらに約20%アップさせることが出来る。企画部の長田吉生次長は「能力に余裕が出ればブレードがより長持ちする」とも話す。
従来品と外形寸法は全く同じなので(ハイパワータイプは青色にして識別)、置き換えが容易であり、樹脂材料の硬質化や大径化に治具を変えずに対応できる。また従来機種のブレードがそのまま使用可能となる。
長田氏は「従来機種は30年以上前に設計されたもので、現在の技術で見直すと設計に余裕があった。ただ、机上の空論で攻めた設計をしても、運用で問題が出かねない。30年間の経験や実際の運用の蓄積で、摩耗や割れの問題がないことを確認したうえで『余裕』を見出した。また検証機を実際にユーザーに試験導入してもらいノウハウを確立してきた。いきなり設計してポンと出せる製品ではない」と自信を見せる。
従来機種も並行して販売しているが、価格差はわずかに抑え、EV化の進展とともに、今後の置き換えでニーズを掴む考えだ。
ここまでのラインアップは樹脂成型の仕事を想定した仕様だが、モーターコイルや電線をカットする需要も増えてきている。こうしたものに対応するため、小型タイプの開発に着手している。金属向けのブレードも同時並行的に充実させ、金属向け市場でのシェアやプレゼンスを今後アップさせていく戦略だ。
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☆ロブテックス モノづくり事業本部 技術開発部 商品企画チーム 担当責任者 管田 剛史 氏
(日本物流新聞 2024年6月25日号掲載)