インタビュー
TOWA 会長 岡田 博和 氏
半導体の後工程装置で世界トップ
- 投稿日時
- 2026/07/24 15:19
- 更新日時
- 2026/07/24 15:23
4つのイノベーションで将来へ
半導体製造の後工程では、前工程でウエハに焼き付けたICチップや微細回路を熱や衝撃から守るため樹脂で覆い(封止し)、その後に切り出して製品にするプロセスが含まれる。画竜点睛。半導体の性能を左右する欠かせない最終の要だ。
TOWAはこの工程の装置で高い競争力を誇る。特にチップ等を樹脂で封止する「半導体モールディング装置」は圧倒的シェアで世界のトップランナーを堅持する。

TOWAの半導体モールディング装置は、後工程の世界の標準設備になっている。
――79年の創業時から半導体をターゲットにし、短い期間で特定装置が世界トップになりました。まずは成功の種明かしを(笑)
「創業時はコネクタやカメラ部品の金型を製作していました。ひと言でいえば、米国を視察した創業者の坂東(和彦=故人)が現地で半導体向け金型を見て、ひらめいたわけです」
――ただ後追いでは市場開拓がままならない。
「そう。半導体市場に魅力を感じるなか、我々は工程の不合理にも気づきました。品質を高める合理的工程へと変えるモールディング装置を生み出し、これが会社成長の原動力になったんです」
固定観念を捨てた4つのイノベーションで世界トップに。
――樹脂で封止するプロセスを改革する装置が将来を開いたと。
「3つのイノベーションを成せました。まず79年の創業時に、マルチプランジャー方式という、樹脂注入の新しい方法を生みました。樹脂の押し出し口をひとつから複数に変え、金型内の全チップを均一の厚みの樹脂で覆う装置です。これによりチップの歩留まりが上がり、樹脂の無駄は約4分の1に減らせました。続いて95年、モジュール化した装置の組み合わせでフレキシブルにニーズに沿った封止ができるシステムを開発。この頃に半導体製造の分業化(工程ごとの委託生産)が進みだし、OSATと呼ぶ後工程を受託する企業から広く採用されました」
――その後もイノベーションは続いた。
「ええ。これまでの樹脂を押し流す成形方式から、顆粒状の樹脂を溶かし、浸して封止する仕組み(コンプレッション技術)を生み出したのが09年で、チップの不良に繋がる封止時の圧力を大幅に減らすだけでなく、樹脂の使用効率100%を実現しています。現在、このコンプレッション技術は生成AIの高速処理に不可欠な次世代の超高速・大容量メモリであるHBM(高帯域幅メモリ)の製造にも活用されています。また、今年は4つ目のイノベーションとなる、INNOMS(イノモス)という新たな装置も開発しました。お客様の生産コストを半減できる画期的な製品になる見込みです」
ピラミッドの頂点だけでなくボリュームゾーンも狙う。独創性は他部門にも。
――狙いは最先端分野?
「それだけでなくボリュームの大きなミドルクラスも狙います。申し上げたコンプレッション技術などは普及価格帯の半導体にも広く有効に使えます」
――技術の陳腐化という心配はありませんか?
「進化のスピードが早い業界ですが、当社の主要顧客層であるOSATやIDM(デバイスメーカー)との対話を密にし、ニーズの変化を確認し、お客様が求める前にご提案できるよう努めています。この業界は非常に狭く、設備メーカーも材料メーカーも限定されていますから、技術トレンドはよくみえます。ただ今後も、イノベーションを起こし続ける必要はありますね」
――独創技術を重ねることができた背景は?
「創業時から続く『想いをもったモノづくり』かもしれません。どうすれば良くなるか、改善できるか。考えを止めず常に前を向いて社員が取り組んだ成果です。人材はとても重要で、昨年にはモノづくりの考え方を含めて技術を学ぶTOWAアカデミーを立ち上げました。失敗を重ねながらも、あきらめずモノづくりを追求したい。失敗は3回まで構わない、なんて言っていますが(笑)」
――御社の切削工具部門でもトンがった製品がありますね。独創性は広く現れているようです。
「金型加工で培った技術を応用しています。他に樹脂成形時の離型をよくする自社開発のコーティング技術を生かし、車のセンサー等の汚れ防止に使えないか…などと取り組みは活発ですよ」
取材+α
AIやデータセンター向けに半導体の旺盛な需要は長期に続くと見られ、同社の連結売上高は今期640億円への連続過去最高を見込む。「設備投資市場は前工程が大半」(岡田会長)といい、後工程向けの設備投資は限られていたが、近年、後工程の重要性が増しており、同社では32年に売上1000億円を目指す長期計画も。
岡田会長は「京都ブランド」のアドバンテージも強調した。「京都の会社は世界的企業になっても京都から離れない」点を指摘、京大にみられる反骨精神や自由闊達さ、距離の近さを活かした企業同士の自然な協業などを上げ、「京の地で将来を目指す」との意思を匂わせた。
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)