1. トップページ
  2. インタビュー
  3. 山善 TFS支社長 丸山 洋彦 氏 「扇風機の山善」から「ヒューマノイドの山善」へ

インタビュー

山善 TFS支社長 丸山 洋彦 氏 
「扇風機の山善」から「ヒューマノイドの山善」へ

投稿日時
2026/07/20 09:00
更新日時
2026/07/23 14:35

今年4月1日付で山善TFS(トータル・ファクトリー・ソリューション)支社の新支社長に丸山洋彦氏が就任した。丸山氏はグループのSIer企業である東邦工業の社長を務めた経歴を持つ。モノづくりの最前線から商社を見てきた独自の視点を強みに、同支社の新たな成長戦略を描く。2026年3月期の同支社連結売上高は前年比3・4%増の444億6000万円と健闘。今期(27年3月期)は連結売上高486億5000万円(10・4%増)、営業利益22億0400万円(23・1%増)の大幅な増収増益を見込む。さらに、売上高750億円、1000億円というロードマップを「数年単位で必達する」と意気込む同氏に、具体的な戦略を聞いた。

――前支社長の中山勝人参与が築いた礎の上で、今後どのように組織を成長させていくか。

「中山参与が推進してきたTFS支社の大きな方向性は不変であり、これをしっかりと引き継ぎ、育てていく。一方で、組織としての『役割の明確化』をさらに進める。当支社にはメカトロ機器など搭載部材を扱うME課、工作機械関連のMP課、製造・物流ラインの自動化・生産性向上を支援するFA課、建設・設備課、半導体ソリューション支店などがある。これらが『何でも屋』になってしまっては強みが薄れる。力点を絞り、各課の特徴をエッジの効いたものに再定義していく」

「例えば、MP課は工作機械及び周辺の自動化だけでなく、切削から樹脂成形までを含めた『加工技術そのもの』を極める。ロボット(協働ロボット『テックマン』など)の提案においても、単なるハード販売にとどまらず、我々だからこそ提供できる独自の自動化ソリューションとは何かを追求していく。物流分野であれば、まずはAMR(自律移動ロボット)やAGF(無人フォークリフト)の普及にリソースを集中させるなど、各領域で選択と集中を徹底する」

――注力する4カテゴリー(半導体、建機、物流、ヒューマノイド)の推進とも連動するのか。

「その通りだ。例えば半導体では、国内において参入障壁の高いインライン(製造ライン)ではなく、検査装置や顕微鏡などを対象とする『オフライン領域』から着実に需要を獲得していく。また、自動化が困難とされてきた建機などの大型ワーク(被削材)に対しては、例えば東邦工業と共同開発した移動式ロボットシステム『ロボこたつ』の実装を狙う。ここで大型ワーク自動化のノウハウを蓄積できれば、将来的には造船や航空機といった巨大構造物の分野へも横展開が可能になる」

「さらに、製造物流においては、設備から上位システム構築までを一気通貫で提案するソリューション力を武器に、大手食品メーカーのライン自動化に貢献するなどの実績が既に出始めている」

■価格競争を排する「コンセプトパートナー」

――上位システムから全体をインテグレートできる力は、大きなストロングポイントになる。

「自動化機器やAMRを単体で売り歩くビジネスは、最終的に激しい価格競争に陥る。ハードウェアの性能やコストパフォーマンスの差は、メーカー間で急速に縮まっているからだ。TFS支社が目指すのは、顧客企業の経営戦略から逆算し、最適な自動化・省力化の全体像を共に描き出す『コンセプトパートナー型トータルソリューション』である。システム全体を設計できる東海ソフトなどのパートナー企業との協業により、その提案力は格段に高まっている。どこで付加価値を生み出すかを常に見極めていく」

――ヒューマノイドロボットを用いた「PX(フィジカル・トランスフォーメーション)」への挑戦も注目を集めている。

「今年3月に民間4社によるコンソーシアム『J︱HRTI』を設立し、8月には『フィジカルAI・ロボットデータ収集センター』を開設する。40台のヒューマノイドを稼働させて膨大なデータを収集する計画だ」

「ヒューマノイドの本格的な社会実装には、果実が実るまで木を育てるような『根気』が必要だが、先手を打った企業が圧倒的な優位性を確保することは間違いない。将来的には、収集したフィジカルAIデータを分類・パッケージ化し、サブスクリプション(定額課金)モデルで提供するビジネスも視野に入れている」

「一般的に山善といえば『扇風機の山善』というイメージが強いかもしれないが、これからは『ヒューマノイドの山善』として認知される存在を目指す」

■SIerの繁閑を平準化する「プラットフォーマー」へ

――今期の売上高10.4%増という高い目標を達成するためのカギは。

「『山善FA・SIer会』の活性化に尽きる。私自身、SIerのトップを務めていたからこそ、彼らが商社に何を求めているかが痛いほど分かる。SIer業界の最大の課題は、繁忙期と閑散期の落差が大きく、人員手配と資金繰りが極めて不安定になりがちという点だ。個別企業同士で仕事量を融通し合うのは難しい。そこで、山善という商社が人のぬくもりのある『プラットフォーマー』となり、各SIerの稼働状況や顧客の需要をリアルタイムで把握・調整できるようにしていきたい。閑散期のSIerにタイムリーに案件を差配し、複数社での共同設計・製造ライン一式の共同受注を増やしていく」

「山善TFS支社が案件とリスクマネージメントのハブとなり、業界全体の平準化(アップサイクル)を実現したい。将来的にヒューマノイドが実用化された際にも、このSIer会が強力なエンジニアリング・保守網として共に未来を切り拓いていただけるのではないか」

――数年以内での売上高1000億円必達に向けた長期ビジョンは。

「規模の拡大に向けては、M&Aも重要な選択肢となる。また、単なる一方向の流通にとどまらない『経済圏(エコシステム)』を構築したい。例えば、ME課が機構部品を納めるユーザーに対し、その部品加工に必要な工作機械をMP課が提案する。さらに加工単価を下げるためにFA課が自動化システムを導入する。これまでバラバラだった当社の動きを繋ぎ顧客1社あたりの生涯価値(LTV)を最大化しつつ、顧客の収益にも貢献する強固な経済圏を再構築していく」

「そのために不可欠なのが、優秀なキャリア採用人材のナレッジ共有と、泥臭い営業教育の両立だ。システム提案などの高度なソリューション営業の土台となるのは、実は差別化しにくい単品を人間力と誠心誠意の姿勢で買っていただくという、最も泥臭い営業現場での学びだからだ。付加価値を高め、しっかり稼ぐ組織へと変革を遂げていく」

丸山02.jpg

国際ロボット展に出展した様子

(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)