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インタビュー

ハイオス 社長 戸津 勝行 氏 
締結の常識をねじから変える

投稿日時
2026/10/01 16:55
更新日時
2026/10/01 17:00

デジタル化が進む製造現場に対し、「ねじを起点とした締結のデジタル化」を提唱する産業用電動ドライバーのパイオニアメーカー・ハイオス。ねじ締結におけるトレーサビリティやカムアウト等の物理的課題を解決する自社開発ねじ「インタトルク」の強み、そして製品の解体や再利用までを見据えた持続可能なモノづくりについて戸津勝行社長に語ってもらった。

――足元の景況感は。

「売上自体は順調ですが、ドライバーに使用されるあらゆる部材の調達価格が上昇しています。特に中国による希土類の輸出制限もあって、モーターや磁石といった部品の価格が高騰しています。かといって製品価格には簡単に転嫁できないのが悩みの種です」

――インドの展示会に出展するなど、グローバルにセールス展開されているが、海外で製品を売るうえで何が大切か。

「当社の電動ドライバー『熟練工シリーズ』は欧米、アジアのみならず南米、中東でも使われるようになってきています。性別や年齢、経験値に関係なく『誰もが簡単に使える製品』であることが最も重要だと考えています。これは当社が創業以来大切にしているモノづくりへの考え方でもあります」

――世界中のモノづくりにおいてデジタル化が進む中、「ねじを起点とした締結のデジタル化」を提唱している。

「当社が大切にしているのは、ドライバーという工具の性能を高めることだけではありません。最も重要なのは、ねじによって締め付けられ、組み立てられた部品や製品が、長期間にわたって本来の機能を維持できることです。品質を本当の意味で担保するために、私たちは『工具』ではなく、『ねじそのもの』から締結のあり方を根本的に見つめ直しています。これが、私たちの進めるデジタル化の核心です」

――ねじが製造におけるカギを握っている。

 「ものづくりの現場において、ドライバーやトルク計測器、ねじ供給器などは、確実な締結作業を支えるための機器に過ぎません。締結において最も重要な主役は、あくまでも『ねじ』なのです。ドライバーに求められる本当の役割とは、製品ごとに要求される最適な締め付け条件を、ねじ一本一本に対して忠実に再現することにあります。工具の都合に合わせるのではなく、締結を担うねじを主役として捉えることこそが、ハイオスの基本姿勢であり、すべての製品開発の出発点となっています」

■アナログな課題の解決へ

――ねじの締結データはどのように役立つのか。

「工場で組み立てられた製品に、将来もし何らかの問題が発生した場合、その原因を正確に突き止めるためには、締め付けた瞬間の状態を確認できることが極めて重要になります。これまでのものづくりでは、ねじを締めて作業が終わればそれで完了、というアナログな管理が一般的でした。しかし私たちは、一本ごとの締め付けデータをしっかりとデジタルで残し、後からいつでも検証・確認できるようにする必要があると考えています。締結の『高い再現性』と『確かな記録』の両方を重視することこそが、製品品質への信頼へとつながるのです」

――デジタル化を進める上での課題は。

「ドライバーや生産設備をどれほどデジタル化しても、ねじ締結のプロセスにはまだアナログな要素が潜んでいます。その最たる例が、締め付けの最中にビットがねじ頭から浮き上がるカムアウトです。これが発生するとビットが摩耗し、締結の品質にバラつきが生じます。また、これを自動機で防ぐために無理に押し付ける力を制御しようとすると、設備の側で余計な工夫やコストが必要になってしまいます。デジタルな管理体制を作っても、こうした物理的・アナログな部分に課題が残っていては、完全な自動化や品質保証は達成できません」

――アナログな課題に対し、どうアプローチしていくのか。

「当社はこの課題を解決するために、インタトルクねじをはじめとする自社開発ねじを通じて、ねじ側から構造を見直すアプローチをとっています。ねじとビットのかみ合いを徹底的に安定させ、設定された条件通りに確実に締め付ける。その結果をデータとして正しく捉えられる環境をつくることに注力しています。こうした物理的な課題をねじの設計から見直し、『ねじを起点としたデジタル化』を推進しています」

――インタトルクねじは大手メーカーなど多くの現場で採用が進んでいる。

「近年では、自動車業界をはじめ幅広い製造業でインタトルクねじの採用が広がっています。特に中国では、自動車業界での導入が大きく伸びています。当社は中国にねじ工場(ハイオス東洋精密螺絲)を持っていますが、近年は同工場の受注も急増しています。製造現場で自動化が進む中、安定したねじ締結への要求が一層高まっており、インタトルクねじの特長がそうしたニーズに合っているのだと考えています」

熟練工.jpg

デジタルドライバー「熟練工BLG-BC2シリーズ」


ねじが導く持続可能なモノづくり


ハイオスは「組み立てるだけでなく分解することまで」という未来を展望している。戸津社長は「将来的には、組み立ての自動化だけでなく、リサイクルのための分解・解体の自動化も非常に重要なテーマになる。今後は製品ごとに個別の都合だけで設計するのではなく、設計段階からあらかじめ解体のしやすさや部品の共通化を考慮しなければなりません」と語り、ねじがサステナブルなモノづくりの一翼を担っていることを強調する。




執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。


(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)