インタビュー
コンバム 社長 佐藤 穣 氏
半導体と物流需要が追い風
- 投稿日時
- 2026/10/01 17:01
- 更新日時
- 2026/10/01 17:04
AI・データセンター需要の伸長に伴い、拡大する半導体関連需要。コンバムはその波に乗り、高水準の受注を記録している。加えて、かねてより注力しているロボットハンド事業も着実に成長。同社の佐藤穣社長は「他社では真似出来ないカスタマイズ品」キーワードに、顧客の困りごとに応える技術力と独自素材の開発を武器に、真空機器メーカーとしての新たな領域を切り開く構えだ。

――足元の業況は。
「大きく変わってきたのは2025年の秋頃からです。それまで半導体関連の案件がずっと遅れていたのですが、一気に動き始めました。当社の製品は完成したチップを検査するテストハンドラーなど、後工程の装置で使われています。そうした装置向けの注文が急激に増えました。以前は月数百個単位だったものが、昨年10月ごろからケタがひとつ増えているなど、高い水準での受注が続いています」
――供給面の不安は。
「今のところ混乱なく供給できています。大きな設備投資や人員増強だけで対応しているわけではありません。今年4月から生産部門にもフレックスタイムを導入しました。これまでは管理部門だけでしたが、生産部門にも広げました。朝7時から働くことができ、コアタイムは午前11時から午後3時です」
――生産部門のフレックスは珍しい。
「導入までに1年ほどかけて準備しました。岩手の工場では女性従業員も多く、子育てなどの事情から夜の残業が難しい人もいる一方、朝早い時間なら働けるという人もいます。そこで、働ける時間帯を前倒ししてもらうことで、会社としても生産能力を確保できるようになりました。受注は増加しましたが、今のところ納期でお客様に迷惑をかけることなく対応できています。今の体制なら、人員を大きく増やさなくても、5割程度の増産までは対応できるのではないかと考えています」
――半導体関連以外の動向は。
「ロボットハンド関連が好調です。お客様ごとに仕様が違うため、かなり手間がかかる分野だと思っていましたが、最近では指名買いに近い形で注文が入るようになってきました。現在は、底を打った2023年ごろと比べて3割以上伸びています。用途としては圧倒的に物流関係が多いですね。人手不足を背景に、重量物のロボットで搬送ニーズが拡大しています。段ボールだけでなく、紙袋や米、水、食品など、対象物も広がっています。特に5㌔、10㌔、20㌔といった中型から大型のワークを扱う案件が増えていますが、他社のハンドではうまくいかない形状や重量物に対応できるのが当社の強みです」
■顧客ニーズを柔軟に捉える
――ロボットハンドは国内外のライバルが多士済々だが。
「他社では真似のできない『ニッチの中のニッチ』を狙いたいと考えています。真空機器そのものがニッチなマーケットですが、その中でもさらにニッチな部分の『ここしかできない』という領域を押さえていきたい。誰でもできる製品で大手と価格競争をしても、当社が勝つのは難しいですから」
――カスタマイズ対応が強みになる。
「お客様にはまず汎用品をテストしていただきますが、実際に使ってみるとさまざまな要望が出てきます。そうした要求に社内で設計から試作までできる体制を整えています。3Dプリンターの活用による試作のスピードアップや、スポンジやパッドを自由形状に切り出せるデジタルカッティングシステムもこの7月に導入しました。以前は外注していたため、図面ができてから試作品が完成するまで1~2週間かかりましたが、今は図面ができれば、すぐに試作できます。カスタマイズにおいてはこのスピードが大きな武器になります」
――電動吸着にも取り組んでいる。
「ロボットがさまざまな場所に実装されるようになると、圧縮空気を使えない場所も増えてきます。ロボットやその周辺から電源を取れるのであれば、電動の吸着ユニットが必要になります。最終的には、トラックなどの荷台に電動ロボットを搭載し、荷物の積み降ろしをロボットが行うような未来を描いています。製品はほぼ完成しており、今後、ロボットメーカーなどにも試してもらう予定です」
――今後の方向性は。
「産業機器だけではなく、自分たちが持っている技術を別の分野でも使っていくことが重要です。真空機器の仕様そのものは、何十年も大きく変わるものではありません。その中で成長していくには、機器や部品だけでなく、ゴムなどの材料も含めて提供できるハイブリッドなメーカーを目指す必要があります。半導体、ロボット、物流など現場の『困った』に応えていく。その積み重ねが、当社ならではの事業につながっていくと考えています」

ペットボトルのシュリンクケースや袋体など重量物搬送に対応可能なロボットハンド「SGPシリーズ」
素材開発にも注力
半導体や電子部品製造の静電気対策が可能な吸着素材「Elec-Con」は、「もともと素材メーカーに発注していましたが、歩留まりが悪く自社開発に踏み切りました」という。一方食品・医薬品向けの『ハイジェニックパッド』は、「抗菌真空吸着素材を採用し、製造はクリーンルームで行っています。これら素材そのものの技術を高めることで、従来の真空機器とは違った価値を提供できるようになってきました」と佐藤社長は自信を見せる。
執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)