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インタビュー

臼杵造船所 社長 山本 勇一 氏 
建造量強化へ大規模投資

投稿日時
2026/09/30 09:31
更新日時
2026/09/30 09:33

良好な受注環境は当面続く

造船業界に追い風が吹く中、ケミカルタンカーを主力とする臼杵造船所(大分県臼杵市)が大規模投資に踏み切る。クレーン能力を強化するなどして年間建造量を増やす予定だ。投資の狙いとその背景を山本勇一社長に聞いた。

――貴社を含めた造船業界の設備投資が大きな注目を集めています。業界への注目の高まりをどう感じていますか。

「入社して30年来、造船がこれほど注目されるのは初めてです。リーマンショックからコロナ禍にかけ苦しい時期が長く続きましたが、コロナ明けに物流が活発化し、円安や国際情勢の変化も伴って船舶需要が高まりました。そこへ政府が『戦略17分野』の1つに造船を定め、10年で日本の建造量を倍にする目標を掲げた。現状は元より市場環境が改善傾向にあったところに、国の支援という一押しが加わった結果と捉えています」

――過去にも投資計画は検討されていたのでしょうか。

「計画自体は浮かんでは消えを繰り返してきました。かつて業界が人員や規模の縮小を進めた時期もあり、10年前にこの話があればという思いもあります。しかし、今回は支援体制も含めて機が熟したと捉えています。これを逃せばもう(次は)ない、計画を具現化できる好機が来たと捉えて投資を決めました」

――投資内容は。

「柱はクレーンの新設あるいは更新で、現在内容の詰めを行っています。従来は150㌧クレーン1機にブロックの反転や搭載、資材搬入が集中し工程が停滞する原因でした。こうした作業を分担し、場内の物の流れを整える計画です」

――建造工程はどう変わりますか。

「1日あたりのブロック搭載数を増やし、足元で年間4~5隻の建造能力を増強したいと考えています。今後、アンモニアや水素燃料などの環境対応船が増えると搭載機器も増加するため、積み込みの効率化は優先度の高い課題でした。工事は順次着手しますが、大型クレーンを新設する場合は輸送船のための臨海工事も必要ですから、稼働までは数年の時間がかかります」

――投資効果が表れる時期まで良好な受注環境は続きそうでしょうか。

「手持ち工事はすでに29年までほぼ固まっており、30年の案件の商談をこれから進めていくところです。『日本の船は日本で造る』機運も高まっており、楽観的かもしれませんが良好な受注環境は当面続くとみています」

――増産を進めるうえで、クレーン以外の課題感は。

「人材・労働力不足が業界の共通課題です。ただ臼杵市の人口も減少しており、1社で頑張って雇用を広げるのは限界があります。協力会社も含めると、当社工場で約120人の外国人実習生が働いています。幸い大分県内の同業他社とは横の連携も強く、よく集まって認識や悩みも共有できています。今は県下の造船全体が前向きで『この機を活かそう』というムード。必要に応じて力を合わせ、今後は研修施設や宿舎のインフラ整備などを、地域や行政も巻き込んだ大きな枠組みで進められればと考えています。また今後は省人化設備、特にロボット溶接の導入も検討していきます」




執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。




(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)