インタビュー
オーケイエス 社長 大神田 佐敏 氏
壊れやすいワークの搬送技術が競争力に
- 投稿日時
- 2026/07/27 12:54
- 更新日時
- 2026/07/27 12:57
豊富な自動化ノウハウで治具からソリューションメーカーへ
自動車産業を中心に磨かれてきた独自の段取り技術や自動化システム。そこで積み重ねたノウハウは、次代のモノづくりにも生かされている――。自社を単なる治具メーカーではなく、加工におけるソリューションメーカーと位置付けるオーケイエスは、近年、半導体関連から航空宇宙、さらには海外市場へと幅広い領域をカバーしている。そんな同社を牽引する大神田佐敏社長に、事業の現在地と今後について語ってもらった。

日本の製造業が大きく変化する中、自動車向けの治具・専用機を主力としてきたオーケイエスも、その変化を一つの契機として事業領域を広げてきた。
「正直、以前は自動車分野への依存度が高く、既存のお客様との取引を中心とした、ある意味では受け身の営業スタイルでした。しかし、産業構造の変化を機に、『待つ営業』から『提案する営業』へと大きく舵を切りました。現在では、お客様が抱える課題に対して、治具の製作だけにとどまらず、工程全体の改善や自動化まで視野に入れた問題解決策を提案する、技術提案型の営業を進めています」
同社は、自動車分野で培ってきた技術と経験を基盤に、その適用領域を「半導体製造装置」「航空宇宙」「多品種生産を行う製造業」へと拡大している。長年蓄積してきた治具設計、自動化、工程改善のノウハウを武器に、それぞれの生産現場が抱える課題に応じた解決策を提案し、新たな市場での価値提供を加速させている。
オーケイエスの技術力を象徴するのが、自動化・段取り技術「ベビーカンガルーシステム」だ。多品種少量生産が主流となった現在、品種切り替えに伴う段取り時間の短縮は、生産性を左右する重要なテーマとなっている。
「私たちはこれを、単なる治具交換装置ではなく、工程全体を見渡し、生産ライン全体のバランスまで最適化する外段取りシステムだと考えています」

多品種生産、自動化を実現する「ベビーカンガルーシステム」
「以前は、『段取りに投資する必要はない』『機械をいかに止めずに回し続けるかが商売だ』という考え方が製造現場の主流でした。しかし、多品種少量生産が当たり前となった現在では、設備停止時間をいかに短縮し、段取り替えを効率化できるかが生産性と競争力を左右する時代へと変わっています」
「例えば、一工程目が1分、二工程目が5分かかる製品であれば、単純に設備を増設するのではなく、1台の設備で工程を組み替えながら効率よく加工できる仕組みをご提案します。設備投資を抑えながら生産性を高められる点を、多くのお客様から評価いただいています」
日本では、治具は個別の部品や付帯設備として捉えられることが少なくない。しかし、大神田社長は自社をあえて「ソリューションメーカー」と位置付ける。
「よく『治具なら自社で作ればいい』と言われますが、私たちは治具を単に製作する会社ではなく、生産現場全体の価値向上に貢献する会社でありたいと考えています。治具単体ではなく、外段取りシステムと組み合わせることで工程全体を最適化し、お客様の生産性向上や省人化、安全性の向上まで含めた価値をご提案したい。それが、私たちにしか提供できない強みだと考えています」
その考え方を具現化する新たな市場として、同社が近年力を入れているのが半導体製造装置分野だ。長年にわたり地道な技術提案を重ねた結果、試作案件が実用化に向けて動き始めている。
「セラミックスや樹脂は、金属とはまったく異なる特性を持っています。大型ワークは割れやすく、搬送時の振動や衝撃にも細心の配慮が必要です。そのため、素材特性に応じた治具設計と搬送技術が欠かせません。大型セラミックスワーク向けの自動搬送システムでは、お客様の生産ラインで約3年間にわたる検証を経て採用いただきました。壊れやすいワークを安全・確実に搬送する技術こそが、当社が長年培ってきた価値であり、他社には容易に真似のできない競争力になっています」
また、技術的優位性を支えるのが、理化学研究所との共同研究から生まれた独自の「予圧サポート技術」だ。
「2005年頃に理化学研究所と小型宇宙望遠鏡の高精度加工に取り組んだのが原点です。予圧によって固有振動数のピークを高周波側に逃がし、加工時のビビリ振動を抑制する手法です。この技術は今、鋳物の高速加工や薄肉部材の加工補正など幅広い分野に応用しています。小型の機械でも、条件次第で本来難しい加工ができるようになるのです」
■世界で通用するエンジニアに
国内では、自動車産業の転換期を迎え、設備投資の動向も大きく変化している。一方、アジア市場では新たな設備投資が活発化しており、オーケイエスは海外展開にも力を入れている。
「近年は、生産拠点のアジアシフトに加え、エンジン関連では既存設備の活用、EV分野では次世代技術を見据えて設備投資を慎重に判断する企業が増えています。その結果、国内では新規設備案件が減少し、競争が厳しくなっています。だからこそ私たちは価格ではなく、生産性向上や工程改善、設備投資の最適化につながる提案力で評価していただける会社を目指しています。一方、ベトナムをはじめとする東南アジアでは製造業への投資が活発で、新たな製造拠点の整備が進み設備需要も拡大しています。日本で培った技術や品質への期待も高く、新たなビジネスチャンスが広がっています」
一方で、海外展開では国ごとの商習慣にも対応する必要がある。
「例えばインドでは、構想段階の図面やアイデアをもとに『自社でも製作できる』と判断され、商談が進まなかった経験があります。そのため現在は、商談の進捗に応じて技術情報を開示するようにしています。一方、ベトナムやフィリピンの日系企業では品質や技術力を高く評価していただくことが多く、安心してお付き合いできています。同じアジアでも商習慣は大きく異なるため、それぞれの市場に合わせた提案を心掛けています」
同社の成長を支えるのは、20代・30代を中心とした若いエンジニアたちだ。大神田社長は「世界で通用するエンジニアになろう」を合言葉に、人材育成へ積極的に投資している。
「先日、日本とフィリピンの設計者へ同じ指示を出したところ、それぞれ異なる考え方で設計を進めていました。改めて感じたのは、技術だけでなく『なぜその設計になるのか』という考え方まで共有することの大切さです。私自身、若い頃は大手企業で経験豊富な先輩方にいつでも相談できる恵まれた環境で多くを学びました。一方、OKSで実務に携わるようになってからは、自ら考え、お客様にとって最適な答えを導き出すことの難しさを数多く経験しました」
「その経験があるからこそ、若いエンジニアには安心して相談できる環境を整え、技術だけでなく考え方まで着実に身に付けてもらいたいと思っています。『ここで学べば世界でも通用するエンジニアになれる』と自信を持って伝えられる環境を用意したいのです」
そこで同社では、長年蓄積してきた設計データベースとAIの融合にも取り組んでいる。
「AIを活用することで、技術継承の精度はさらに高められると考えています。ただし、企業のノウハウを守ることも重要です。将来的には自社サーバー上でAIを運用し、機密性を確保しながら設計支援に活用できる環境を目指しています」
今後の展望について大神田社長は、「私たちが大切にしているのは、自分たちの価値、お客様が得る価値、そして社会に貢献する価値、この三つです。技術で付加価値を生み出し、お客様の課題を解決することが、私たちの使命だと思っています。これからエンジニアがますます貴重な存在になる時代だからこそ、この想いに共感し、ともに成長してくれる仲間を増やしていきたい。そして、日本で培った技術を航空宇宙や半導体などの先端産業、さらには海外市場へ広げ、日本のものづくりの価値を世界へ届けていきたいと考えています」と力強く語ってくれた。
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)