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インタビュー

カシフジ 副社長 樫藤 剛司 氏 
人型ロボ見据え小径歯車加工に新たなホブ盤・ギヤスカイビング盤開発

投稿日時
2026/07/13 11:20
更新日時
2026/07/13 11:53

「新たな時代が動きだした」と樫藤剛司副社長は言う。自動車の電動化を契機に求められる歯車精度や面粗さの等級はより高い水準へと移行しており、焼き入れ前の加工機であるホブ盤やギヤスカイビング盤にも「歯研なみ」の加工精度が要求されている。同社はその要求に応えることで受注を確保。一方でロボット産業向けの受注も急拡大している。そうした経営環境の中で、ユーザーの様々なニーズに応えるべく、機種のバリエーションを広げ、オプション機能の充実を行ってきた。10月のJIMTOF2026では、小径歯車の加工に対応した新たなギヤスカイビング盤を披露する予定だ。

カシフジ 取締役副社長 樫藤 剛司 氏

――副社長に就任され、現時点の情勢をどう捉えていますか。

「自動車という主幹産業の安定的な投資が見込めていた時代から一変しました。契機は電動化の流れです。自動車だけでなく『動くもの』が電動化へシフトしています。足元では自動車の電動化のスピードが緩やかになりましたが、自動運転には電動化の流れが必要で、歯車への機能的な要求として静粛性や伝達効率アップが求められています」

「今年3月頃から国内の引合が増えているものの、特定分野が突出しているわけではなく、減速機、半導体装置に使用されるタイミングプーリ、小型建機、造船、産業用ロボットなど多方面に分散しています。現在は『明確なトレンド』が存在しておらず、さまざまな技術者が理想の性能を求め、先鋭的な歯車加工を要求されるケースもあります。今までにない歯形や新素材が出てきてもおかしくありません」

――その環境下でどう立ち回りますか。

「ユーザーの要望を取り入れ、実現していく泥臭い姿勢こそカシフジの生命線。これまで、ホブ盤の高精度化はもちろん、歯車の面取り加工の複合化にも取り組み『フレージング』『チャンファーミル方式』『チャンファーバイト方式』など多くの要望を形にしてきました。しかし電動化を境に、我々もホブ切りという生(荒)加工だけでは今後は生き残れないという危機感を抱きました。その中で着目したのが『焼き入れ後、高精度な歯車に仕上げたいが生産コストは抑えたい』というニーズ。当社はホブ盤でハードホビング後、ポリッシュ加工で歯車を高精度に仕上げる『KE180F』を提案しています。高額な歯車研削盤を導入せずとも、歯研なみの精度に加工できます。今後も開発には力を入れ挑戦を続けます。すべてが製品になるかどうかは未知数ですが、社内には経験が残ります。そこからさらに新しいものを生み出せればと考えます」

■止まらぬロボット需要

――貴社は近年、中国などのロボット市場に向けた歯車加工機需要を開拓しています。

「中国の産業用ロボット分野は非常に好調で、足元でもその勢いは増しています。波動歯車装置は特に高精度な加工がホブ盤に要求され、この要求を満たせる『KN80CNCホブ盤』が好調です。ホブ盤で加工した歯車と噛み合う内歯車の加工では『KPS21型ギヤスカイビング盤』が、かつてない出荷台数に達しています。最近は様々な国から波動歯車装置用の歯車加工に関する相談を受けます。同分野で先行して市場を開拓してきたこと、また国内の減速機市場で豊富な実績を築いてきたことが強みになっています」

――ロボット向け減速機はやはり波動歯車装置が主流ですか。

「実用レベルでは波動歯車装置と薄型の遊星減速機、サイクロイド減速機が主流です。そして人型ロボットに向けた投資も積極的に行われています。人型ロボットの指関節の機構には現在、有力な選択肢がいくつかあり、何が主流になるかは不透明です。ただより小径の歯車が必要とされる可能性が高く、そうした歯車の加工では現在の機種ラインナップでは機械が大きくそぐわない。そこで『KPS10型ギヤスカイビング盤』と、『KF40CNCホブ盤』を開発しました」

KF40はモジュール0.5まで、KPS10はモジュール1.5まで加工可能にしました。いずれも小径歯車に対応します。将来的に電動車用のパワーユニットに使用されるステップドピニオンの小歯車加工の需要が寄せられることも想定しました。KPS1010月のJIMTOF2026でも披露する予定です」

――これまでの話で、今は歯車加工機の業界にとって先が見通しづらい時代だと再認識しました。副社長として就任時に社内へどのような方針を示しましたか。

「あまり大それたことは言っていません。品質を重視する姿勢、対応力と現場力が我々の強み。こうした良い部分は伸ばし、『変えていく部分』は勇気をもって変える前向きな組織にしたいと話しました。同じことをずっと続けるだけではダメで、業界から積極的に外に出て、視野を広げる必要もあります。次に『臨機応変に対応してほしい』と伝えました。トレンドが見えない時代ですから、指示がコロコロ変わることもある。現在、中国からの受注案件に対応するため、生産計画の見直しを状況に応じて適時実施しています。現場が多能工化を進めてくれていて、この激しい変動に追従できているのは、以前の当社の生産に対する意識が変わっている証です。将来不安がないわけではないですが、社員一丸となって進んでいけば、どんな波も乗り越えられると思っているので、心配はしていません」

KF40_1.jpg

モジュール0.5の小径歯車にも対応する「KF40CNCホブ盤」を開発した


MEMO


株式会社カシフジ

1913年創業、1943年設立。従業員225

京都市南区上鳥羽鴨田町6番地

ホブ盤やギヤスカイビング盤、歯面仕上げ盤、歯車面取盤など各種歯車加工機を製造

創業113年、1918年に初の国産ホブ盤を開発した老舗歯車加工機メーカー。1982年に世界初のNCホブ盤を開発・販売を開始した。ギヤスカイビング盤は2012年にJIMTOF2012に初出展し、販売を開始した。ギヤスカイビング盤は波動歯車装置などの内歯車加工向けに採用されている。人型ロボットの指関節に用いられる小径歯車にも対応した、より小型のギヤスカイビング盤をJIMTOF2026で出展する。





(日本物流新聞2026710日号掲載)