インタビュー
岡本工機 社長 菊地 正人 氏
超音波研削技術を使いロボットの増産に備える
- 投稿日時
- 2026/07/13 11:25
- 更新日時
- 2026/07/13 11:41
岡本工機はロボット向けの歯車を中心に工作機械や半導体製造装置も製造する。広島県内に4つ、中国に1つの工場をもち、近年はロボットの増産に備えて自動生産ラインを構築。日本歯車工業会の多数の会員が見学に訪れるほどの自動化先進企業と言える。

岡本工機 代表取締役社長 菊地 正人 氏(日本歯車工業会理事)
趣味はお酒とカラオケでサザンオールスターズを歌うという菊地正人社長
――歯車を中心に研削盤なども製造されています。
「当社の第1の柱である歯車(直径10~600㍉)は国内で月におよそ35万個、中国工場を含めると計70万個つくっています。第2の柱はアングルヘッド、減速機、刈払機ギヤヘッドなどのギヤアッシー製品。第3の柱は内外端面複合・両頭・内面研削盤、スライシングマシンなどの工作機械。ここ本社工場にあるベベルギヤ(かさ歯車)の歯切り盤およそ100台は自社製です」
――国内4工場で役割をうまく分けていらっしゃいます。
「本社工場はベベルギヤの前工程を、府中第二工場(2023年3月竣工)は平行軸歯車の前工程を担い、府中工場はその両工場の後工程である熱処理、研磨、検査、出荷を行います。尾道工場は工作機械・半導体製造装置・自動車ギヤを製造します。3年前はロボット業界が忙しかったからそれに応えられるよう各工場の役割を大シャッフルしました。30億円ほど投資し、50台ほどの加工機とロボットを入れて12の自動製造ラインをつくりました。ところがロシアのウクライナ侵攻などがあってロボット市場はむしろ落ち込み、欧州での設備投資も止まっています」
――そのロボット向けの仕事は増えていますか。
「ロボットに多く使われる平行軸ギヤを月産15~20万個くらいまでなるべく早い段階でもっていきたいと考えていますが、現状は9万個弱です。全体の売上は一時期よりは増えていますが、ピークの9割。いやここにきて8割にまた落ちました。やはりホルムズ海峡の影響があり、石油製品が不足すると加工できなかったり塗装ができなかったりするから最終製品になりません。またデータセンターの建設ラッシュで半導体チップの奪い合いになっているようです。半導体はロボットや精密機械にも使われるので当然、当社にも影響があります。ただ、半導体チップは今年末には流通するとの見通しで、それに伴ってロボットの生産も増えると期待しています」
――府中第二工場に導入されたギヤスカイビングマシン(カシフジ製「KPS30」初号機)は活躍していますか。
「加工効率がギヤシェーパーを使った場合の4~5倍くらいありますから、できるものはすべてこの機械に回します。マシニングセンタ(MC)でも歯切りからその他の加工まで行うことはできますが、やはり時間がかかるし、専用機ほどの剛性もありません。10個、20個単位の加工ならMCでもいいのですが、当社のロットは100だと少ない方。500くらいを3連続で流したりします。もっともギヤスカイビングマシンは万能ではなくて、径の異なるギヤが近接する2段ギヤでギヤ間が狭い場合はカッターが干渉するため使えません」
――ヒューマノイドロボット用のギヤの受注はありますか。
「減速機の引合いが当社にも来続けています。中国でなく日本企業から。テスト加工などに対応しているところです。大口の受注になるのはもう少し先でしょうね」
――人型ロボット用のギヤにPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのスーパーエンジニアリングプラスチックも使われるそうです。
「当社は金属を使っています。ギヤの形状や材質はロボットメーカー各社により変わります。小さく細かい形状のギヤをスムーズに動くようにするのは難しいのですが、世界で当社だけの『超音波援用歯車研削』(特許取得済み)が使えます。超音波を利用して歯面に微小な凹凸をつくり、そこに油が入り込みます。潤滑性が増し振動・騒音を抑制し、耐摩耗性も向上します。この技術は歯すじを打ち消す加工として評価され、砥粒加工学会さんの2025年の技術賞を受賞し、これを使った歯車の出荷額は年に1・5億円ほどに増えました」
――新たな需要開拓の方針は。
「当社の主力はロボット向け歯車ですが、航空機向けも受注しようとこの7月に動き出しました。下請けとして関わったことはありますが、直接納められるような体制を築こうと。JISQ9100(航空機や宇宙機器などの製品において高い安全性と信頼性を確保するために策定された日本工業規格の一つ)を取得するのは1年後になりますが、当社にはパイプがあるので柱の1つにしていきたいと考えています。歯車工業会の会員のなかには航空機分野だけで70~80億円の売上があるところもあります。当社はまずはその1%、1億円でも受注できたらと考えていますよ」

本社工場にはロボットを使った自動製造装置が随所にある一方、ベベルギヤの歯切り盤が100台ほど所狭しと並ぶ。1ライン20数台を1人で操作する。
MEMO
岡本工機株式会社
1975年設立、社員約350人
広島県福山市金江町金見2050
平行軸歯車とかさ歯車を月に約70万個生産(うち日本で35万個)
研削盤大手の岡本工作機械製作所から分離してできた。事業は歯車製造を軸に、歯車製品(アングルヘッド、減速機、刈払機ギヤヘッド)、工作機械(内外端面複合・両頭・内面研削盤、スライシングマシン)を製造する。製造拠点は広島県内に本社工場(福山市、かさ歯車の前工程)、尾道工場(尾道市、工作機械・半導体製造装置・自動車ギヤ)、府中工場(府中市、歯車の後工程=熱処理・研削・検査・出荷)、府中第二工場(府中市、平行軸歯車の前工程)の4つと、中国・常州市に100%出資の子会社(日系および現地企業向け歯車)をもつ。
(日本物流新聞2026年7月10日号掲載)