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インタビュー

ライスハウァー 日本法人社長 サンドロ・アマルカ 氏 
円安下の工作機械投資、長期価値で判断を

投稿日時
2026/07/13 11:42
更新日時
2026/07/13 11:45

デジタルと加工プロセスの一貫システムで差別化

圧倒的な高精度・高速研削技術で世界の自動車生産の高度化を下支えしてきたスイスの歯車研削盤メーカー・ライスハウァー。自動車業界が地政学的リスクや原材料高で投資を慎重化させる中、同社は独自の一貫システムとデータ活用による生産性向上を訴求している。同社の日本法人トップ、サンドロ・アマルカ氏に、日本市場における需要動向から円安下での戦略、今後のものづくりの展望を聞いた。

――現在の自動車市場をどう見る。

「現在の市場環境は地政学的な不安定さに加え、エネルギーや原材料価格の高騰が重なり、世界中で設備投資の延期や慎重化といった様子見の動きが目立ちます。EVシフトの進捗は依然として不透明ですが、電動化は今後間違いなく進んでいきますし、それに伴う歯車の精度や品質に対するニーズは高まっています」

――貴社から見た欧州の自動車産業の現状は。

「日本とあまり変わりません。欧州のメーカーも最終的に何が勝つのかを見極めながら、計画を立てては見直すという動きを続けています。投資があまり動いておらず、様子見の状態であるというのは、世界共通の課題ではないでしょうか」

――自動車以外の産業の需要は。

「当社の加工機械は量産向けに強いという特長がありますが、自動車産業に匹敵するほどの生産量がある業界はなかなか見当たりません。昨今、ヒューマノイドの伸長が著しいですが、まだ量的な需要が自動車産業には及ばず、技術的にも発展途上の段階です。ただし、当社の技術は将来的に確実に適用できると考えています。一方、歯車メーカーなど高精度加工を必要とされるお客様には、こうした厳しい状況下でも継続的に機械を使っていただいており、底堅い需要は確かにあります」

――日本市場や日本の顧客に感じることは。

「日本市場では、特に品質の安定性が極めて重視されています。このこだわりは、当社の高精度加工や、製品1個当たりのコスト削減という方向性と非常に相性が良いと感じています。ただし、足元では急速な円安の影響により、導入コストが膨らみ、お客様が意思決定を下すのが難しい時期になってきているのも事実です」

――日本のものづくりの現状をどう見る。

「日本のものづくりには長い歴史があり、非常に高い技術・知識レベルを強く感じます。一方で保守的な面があり、新技術に対してやや慎重で、導入が後手になる傾向があります。ただ、最近は中国メーカーの台頭という強いプレッシャーが高まったことで、日本企業の新技術への関心や導入スピードは確実に速まってきていると実感しています」

■生産の可視化と予防保全

――すべてを自社で一貫提供する「サークル・オブ・コンピタンス」とは。

「機械というハード単体ではなく、工具やソフトウェアも含めた『加工プロセス全体のシステム』を提供できることが当社の強みです。歯車加工はミクロン単位の精度が求められます。もし『機械はA社、砥石はB社、ソフトはC社』とバラバラに導入すると、トラブルの特定が非常に難しくなります。すべてを自社製品でサークル(輪)のように繋ぐことで、『この組み合わせなら、絶対にこの精度と稼働率が保証できる』というトータルソリューションを当社は提供できます。加えて機械データをリアルタイムで収集・解析するシステム『ARGUS(アルゴス)』によるデジタル化が加わることで、一貫システムのメリットはさらに大きくなりました」

――アルゴスの詳細を教えてください。

「アルゴスは機上で加工及びドレス工程を監視し、品質を保証します。また、機械データをクラウド上に集め、リアルタイムで生産状況を可視化・管理します。大量のデータをもとに、異常の早期発見、突発的な停止の削減、生産プロセスの改善などを実現します。将来的にはAIによる分析が加わることで、変化や異常パターンの把握がより速く、高精度になると考えています」

――多くの製造業はクラウドへの抵抗感が強い。

「クラウドにすることで『世界中の稼働データをもとに使用する機械の状態監視、分析がより正確に行うことが可能になる』という明確なメリットを示せれば、考え方は変わっていくと思います。当社は世界中に何千台もの機械を納入しているため、匿名化されたデータを集約して活用できる点が大きな強み。セキュリティには最新技術で対応しており、お客様と一緒に最適な方法を探していく姿勢で臨んでいます」

――ネジ状砥石を用いたポリッシュ仕上げ技術や新たに開発したスカイビング技術については。

「電動化によって自動車の静粛性への要求がさらに高まっており、ニーズは確実にあります。当社の技術の精度と品質は高く評価されています。ただし、コストが上がる側面もあるため、現在は各社が『すぐ採用するか、次世代機から入れるか』を検討している段階です。ただ、次世代のパワートレインでは必須の技術になると見ています。

また、当社ではハードギヤスカイビングにおいても大きな技術革新を実現しました。従来は工具寿命の制約から部品当たりの加工コストが高く、量産用途では経済性が課題となっていました。しかし、新たに開発した高剛性機械と、自社開発の新しい工具技術を組み合わせることで、工具寿命を大幅に向上させ、部品当たりの加工コストを大きく低減しました。その結果、EVやハイブリッド車のパワートレイン向け量産加工にも適した加工技術となり、当社の大きな差別化要因の一つとなっています」

――今年のJIMTOFではどのような出展を。

「昨秋のEMOで発表した内容を日本でも披露します。特に新機種スカイビング加工機『RS300』の実機展示を予定しており、当社にとって日本で新機種を展示できる待望の機会となります。電動化に対応するソリューション全体や、ハードフィニッシングがもたらす新たな可能性も広くアピールします」

――日本の顧客に向けたメッセージを。

「円安という非常に厳しい環境の中で、お客様が最新技術を導入しやすくするため、短期的な購入価格だけでなく、導入によって得られる長期的な経済価値に基づいて、購入しやすい環境を作っていきたい。ライスハウァーは日本市場と長く深く関わってきたからこそ、お客様に手厚いサポートをしつつ、これからも一緒に歩んでいきたいと思っています」

RS300.jpg

昨年のEMOショーで披露したハードスカイビング加工機「RS300


 MEMO


ヴィンテージ機にも真摯に対応

高精度かつ高剛性な設計により、長く使える耐久性と信頼性を備える同社加工機。だが、歯車への精度要求が飛躍的に高まり、古い機械では対応できない部分が出てきているのが実情だ。だが、アマルカ社長は 「日本には30~40年前の機械を大切にお使いのお客様も多く、できる限りサポートしていますが、部品の入手が難しくなるなど徐々に対応が困難になってきています。それでも日本法人としては部品在庫を可能な限り確保し、修理対応も粘り強く続けていきます」と力強く語る。





(日本物流新聞2026710日号掲載)