インタビュー
イグアス、データセンター建設ラッシュで3Dプリンタ需要増
- 投稿日時
- 2026/07/10 09:00
- 更新日時
- 2026/07/13 13:42
執行役員 野澤 照幸 氏、部長 吉澤 岳明 氏
急拡大する国内データセンター市場。AI普及による電力需要の急増、冷却技術の革新、建設需要の爆発的増加──こうした変化のなかで、意外な形で脚光を浴びているのが3Dプリンタだ。IBMのディストリビューターとして知られるイグアスで、3Dプリンタ事業を牽引する野澤照幸本部長と吉澤岳明部長に話を聞いた。

【写真左】野澤 照幸 本部長
【写真右】吉沢 岳明 部長
――貴社の主な事業について。
野澤(=照幸本部長) 当社はもともとIBMのバリューアデッドディストリビューターとして2006年から事業を展開しています。IBM製品の国内流通シェアは約50%、パートナー企業は500社ほどいます。ただのディストリビューターではなく、IBMとのやり取りでパートナー企業様の手続きや業務を軽減できるようなサポートが、私どものビジネスモデルです。
現在は大きく5つの事業軸があります。IBMのハードウェア・ソフトウェアを扱うディストリビューション事業を中核に、ファーウェイのデジタルパワー(太陽光発電・蓄電池)、3Dプリンタ、インタラクティブボード、そして昨年7月に兼松エレクトロニクスから事業譲渡を受けラインプリンタ・ドットプリンタが加わりました。
――3Dプリンタ事業はいつごろから。
吉澤(=岳明部長) 2009年より3Dシステムズ社のパートナーとして販売提携し、事業をスタートしました。2016年には造形・検証や研修などが行える「イグアス3Dソリューションセンター」を開設し、法人向けのハイエンド機器から、学校や教育機関、個人向けのパーソナル機器まで幅広く展開しています。
――3Dプリンタの販売動向は。
吉澤 ローエンド機を中心に出荷台数は伸びています。昨今、低価格帯のプリンタでも造形精度・速度が向上し、「初めて使う」お客様による導入事例が増えています。一方でハイエンド機には、使い慣れた後に「もっとこうできないか」という要求が生まれてきますので、需要の高度化は続くと見ています。
――昨今、データセンターからも3Dプリンタが採用されている。
野澤 まず前提として、今の国内データセンター建設の勢いはすさまじいです。建設会社は着工まで3~4年待ちという状況で、材料費も高騰しています。そうした中で「コンテナ型データセンター」を並べるという手法も出てきているほど。
そのデータセンターの現場で実際に起きている課題が、配管・ダクトのカスタマイズ問題です。お客様が入るたびに空調や冷却の配管レイアウトが変わります。市販品では対応できない形状の樹脂製ダクトや、ケーブルを束ねるクランパーなどを、3Dプリンタでその都度製作するケースが出てきています。
配線・配管がとにかく複雑なので、市販にはない形状のジョイントやカバーをプリンタでその場で作ってしまえるのは大きな強みです。ボタンやパーツが壊れた際も、在庫を持たずに「壊れたら作る」と対応が可能になります。
■熱に強い素材も選択肢に
――設計の柔軟性という観点では。
吉澤 金型を作ってから「ここが違う、やり直し」となると、コストも時間も膨大にかかります。3Dプリンタならデータを修正して再出力するだけです。それがそのまま工期の短縮につながっています。厳密にはスピードが目的というよりも、「試作と修正を繰り返せる設計の柔軟性」がデータセンター建設の現場でも重宝されているという感覚です。
野澤 AIを使えば2Dの写真から3Dデータを生成することも今は普通にできます。たとえばデータセンター内の既存設備を写真に収めて3D化し、そのまま試作に持っていくといった使い方も今後は当たり前になっていくと思います。
――高温・高荷重の環境における素材面での対応は?
吉澤 かつては「樹脂でできるのは試作品まで」という感覚が強かったですが、今は耐熱素材、高剛性素材、ある程度の靭性を持った素材など、選択肢が大幅に広がっています。認証を取得した素材も出てきており、データセンターの過酷な環境への対応は十分に現実的な話になっています。
――空冷から液冷シフトが進んでいるが、3Dプリンタの出番は増えるか。
吉澤 増えると思います。液冷はパイプやジョイントの形状の自由度が重要になります。たとえば当社が販売している3Dシステムズの「Projet2500」は、インクジェット方式のプリンタですが、精密機器メーカーからの引き合いが非常に多いモデルです。コンパクトサイズでありながら、優れた表面仕上げ、高精度な造形が可能です。液冷化が進めば進むほど、既成品では対応しきれないパーツの需要が生まれ、3Dプリンタの出番が増えると見ています。
――ITディストリビューターの強みをデータセンター向け積層造形にどう活かすか。
野澤 たとえばGPUサーバーが発する熱量のスペックを理解した上で、「この冷却量が必要です」「ここに3Dプリンタでこういう部材を作ると効率が上がります」という提案はできます。ただ、大規模なデータセンター全体の設備設計は冷却設備や電力設備のスペシャリストが不可欠で、私たちはそこをサポートする立場です。
――今後、データセンター建設における3Dプリンタ活用はどうなる。
野澤 データセンターは、私たちが想定していなかった使い方でもどんどん3Dプリンタが活用され始めています。アイデアを持った人間がいれば使い道はいくらでも出てくる。そういう段階に入ってきたと感じています。
吉澤 シミュレーションだけでは最終的な「お墨付き」は取れない。実際にモデルを作って試して、実用化に漕ぎつける――そのサイクルを高速で回せるのが3Dプリンタの本質的な価値だと思っています。データセンターのような「カスタマイズの塊」の現場では、その価値がより鮮明に出てくるはずです。
3DSystems「Projet2500」
「高精度+仕上げレス」の3Dプリンタ

「Projet2500」は液状の樹脂をインクジェットで吹き付け紫外線を照射する方式により、CADデータに忠実な滑らかな曲面やシャープなエッジを再現できる。またワックスサポート材の採用により、温めるだけでサポートを短時間でキレイに除去できるため、後処理の手間を圧倒的に減らす。
豊富な材料ラインナップも見逃せない。エンジニアリングプラスチックをはじめ、透明度の高いクリア素材、エラストマーなど多彩な材料に対応。用途に応じた造形物の出力を実現する。専用の大型設備や大掛かりな排気システムを必要とせず、一般的なオフィススペースに設置できるコンパクトさも魅力だ。
(日本物流新聞2026年7月10日号掲載)