インタビュー
京都信用金庫 理事長 榊田 隆之 氏
産学金の共創ハブを28年開設
- 投稿日時
- 2026/07/24 09:00
- 更新日時
- 2026/07/24 15:40
京都の産業&起業家支援に努める
京都のモノづくりに金融機関としてどう貢献するか。京都の産業をどう展望するか―。そんな質問を胸に京都信用金庫を訪ねた。設立から100年を超す同庫は地域密着の「コミュニティ・バンク」を標榜し、地元製造業や起業家らの支援を多彩に進めている。榊田理事長に聞いた。

――京都を軸に滋賀、大阪で事業展開されています。「コミュニティ・バンク京信」がブランド名ですね。
地域密着を重視し、各支店で地域にあった事業の在り方をボトムアップで進めています。一例、工業地域では社員が「工場作業着」で勤務する支店もあります。預金などのノルマはなく、地域のパートナーと認めてもらうことで成長する京信を目指しています。
――京都の産業をどう見てこられた?
21世紀の主要要素部品がこの地から様々生産されていることを大変心強く感じています。これは千年を超す京都の歴史とも深く関係し、友禅染や清水焼などの技術が形を変えて先端で開花しています。半導体も電子デバイスもセラミックスも。いわばストーリーが深く高レベル。有望な中小製造業が数多く生まれるのも深く頷けます。
――京都ゆえに。
ええ。京都の特色との関係は大いにあるでしょう。「ホンマモン」を大事にする文化。自由で異能を認める風土。反骨精神やオンリー1志向。これらが高品質なモノづくりにつながっているはずです。
■製造業のマッチング会や、「産学金」の新規事業も
――そんな製造業との取引きが多いようです。
対製造業の貸出金割合は昔に比べ減りましたが、地元産業に貢献したい思いは基軸にあり続けています。
――製造業の背中を押す具体的な取り組みも進められています。
製造業同士、あるいはバイヤーを含めて受発注や連携を促す「製造業商談会」は以前から精力的に行っています。また「京信・地域の起業家アワード」を2013年から毎年実施しています。多士済々の地域の産業に、新たな風を吹かせる創業5年内の地域企業を、顕彰を通じ応援するものです。
■「共創HUB京都」(仮称)、28年オープンへ
――産・学・金による21世紀の価値創造に向けた新施設建設も注目されますね。
はい。大阪ガス都市開発と龍谷大学、そして私ども3者が運営体となり、価値創造に向けたコミュニティ施設「共創HUB京都」(仮称)を京都駅近くで28年に開設予定です。学生が学びあう場であり、企業連携の拠点であり、事業支援を行う場として機能させます。
――まさに「共創」。
施設は共創スペースとともに上層階をレジデンスにします。学生や起業家らがともに暮らしあう中で交流を深め、異能を認め合うオープンな交流が価値創造を生むことに期待します。
インドと京都
京信は地元企業を対象に「インド進出セミナー」も定期重点実施中。榊田理事長自身、インドとのパイプは太い。日本との違いを聞くと「労働人口の中心層が若く、スピード感もダイナミズムも全く違う」と、日本への危機感もにじませた。「ただ京都は学生が多く、若い人のチャレンジも活発。このアドバンテージを伸ばすことに貢献したい」。
FingerVision、フィジカルAIの社会実装を加速

研究開発を続けるR&D拠点(京都市下京区)
京都市にR&D拠点を置くFingerVision(東京都江東区)は昨年2月、京都信用金庫が創業5年以内で事業の独創性や成長性に優れたスタートアップを表彰する「第12回京信・地域の起業家アワード」の最優秀賞に選ばれた。同社は触覚センサーを生かしてロボットハンドの開発を手がける。濃野友紀社長は「当社のハンドは形が定まらず扱いにくい食品を直接保持することができる。食品工場や外食店などに導入を広げていきたい」と話す。
R&D拠点は同社設立から約1年後の2022年9月にできた。そこで研究開発を続ける山口明彦CER(最高研究責任者)兼CTO(最高技術責任者)は京都を選んだ理由について「当社ハンドの機器部品やシリコンパーツなどをつくるパートナーの製造業が京都、大阪にあり、また東京にもアクセスしやすい」と話す。最近では触覚スキンを使って「すべり」を認識し、粘液をまとう山芋を掴むハンドを開発した。
同社を含む5社・大学はこのほど、経産省・NEDOが公募した補助事業GENIACに採択された。フィジカルAIの実装を促すため視覚、触覚、言語、動作に関するデータを統合的に扱えるVTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルの開発を行う。山口氏は「食品以外にもタスクのドメインを広げられる」と意欲を示す。

京都大学工学部卒業、奈良先端科学技術大学大学院情報科学研究科博士課程修了後、カーネギメロン大学在籍時に視触覚センサー「FingerVision」を開発した山口明彦氏
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)