インタビュー
(公財)京都産業21 常務理事 上田 雅人 氏
誕生25年「実装支援」でイノベーション創出
- 投稿日時
- 2026/07/24 09:00
- 更新日時
- 2026/07/24 15:29
誕生25年、次なるステージへ
2001年4月、(財)京都府中小企業振興公社、(財)京都産業情報センター、(財)京都産業技術振興財団の3団体が統合し誕生した公益財団法人京都産業21。今年で四半世紀の節目を迎えるにあたり、上田雅人常務理事に次なる戦略を聞いた。

――京都産業21の果たすべき役割と強みは。
一言で言えば、京都府内のモノづくり中小企業を中心にビジネスの継続・振興・拡大を推進する総合支援機関だ。「きめ細かな伴走支援」をモットーに、事業創業、事業継続・拡大、イノベーション創出、事業継承までワンストップで課題に対応できる総合力が最大の強みである。
まずは現有事業の基盤強化が第一の柱だ。その中核を担うのがビジネスマッチングである。府内事業者の多くは既存のサプライチェーンの中で受注活動を行っているが、当財団では既存ルートの深化と新規販路の開拓という2軸で受発注のあっせんを実施している。その象徴が企業同士の受発注を直接結びつける展示会「京都ビジネス交流フェア」であり、毎年確実な成果を上げている。
――既存事業の維持だけでは、事業拡大や劇的なイノベーションは生まれない。
ビジネスの持続的な拡大には「技術開発」と「市場開発」の融合が不可欠である。単に新しい技術への補助金を支給するだけでなく、財団内に「イノベーション統括本部」を設置し、AI、半導体、ロボティクスといった成長カテゴリーでの事業創出を戦略的に推進している。
京都府が推進する「産業創造リーディングゾーン」とも緊密に連携しているが、これまでは「箱(枠組み)」の整備を進めていた。これからは、いかに現場に技術を落とし込むかという「京都産業創造プロジェクト」へとフェーズを引き上げ、我々自身も提案力を進化させ、より踏み込んだ「実装支援」にてイノベーション創出を進めていく。
――足元の中小企業が直面する課題と、その対策は。
課題の一つは「人材不足」だ。これに対し当財団では、外部の人材紹介会社と提携して「プロ人材」の紹介を強化しており、昨年度の成約件数は前年比52%増と急伸している。さらに、副業・兼業人材の活用も非常に活発だ。通常雇用は固定費を長期的に押し上げるが、プロジェクトや課題ごとにスポットで外部の優秀な人材を活用すればコストを最適化でき、マッチング実績も前年比82%増と非常に伸びている。この副業等のマッチングで府の補助金(最大8割支給)を活用することで、極めて低コストで専門人材を確保できるスキームが整っている。
もう一つの課題が「価格転嫁」だ。下請け構造の強い中小企業では理想通りにいかない現実であり、利益確保のためには、生産性向上からコスト削減が必要である。財団では生産性向上支援センターを設置し、企業を訪問し現状把握から生産性向上を図る支援を進めており、また他社のコスト削減や生産性向上の成功事例の知見も共有することが重要になる。
――たとえば注目される「半導体」分野への今後のアプローチについての考えは?
また、京都の伝統産業とテクノロジーの融合事例は?
半導体企業を誘致するようなことは簡単ではなく現実的ではない。しかし、京都には優良な半導体製造装置企業や半導体関連企業、また豊富な大学・研究機関が集積している。この強みを活かし、半導体関連の「人材育成」というソフト面に力を入れることも重要。同時に、製造、製造装置、精密加工、AIソフト等の枠組みを構築し、半導体を使用する側ではたとえばフィジカルAIや次世代ロボティクス市場で地場サプライチェーンを活性化させる流れもある。
伝統産業との融合事例では、当財団が仲介したカシオ計算機とのマッチングも好例だ。
G―SHOCKなどの世界限定旗艦モデルへ、伝統技法の「鎚起」や京蒔絵を施し協業を実現。一過性のコラボにとどまらず、最上位製品の継続的な製品創出をした事例もある。

京都ビジネス交流フェア
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)