連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.129 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2026/09/28 10:38
- 更新日時
- 2026/09/28 10:40
贅沢すぎる経験
前回、ジュニアシート(チャイルドシートの学童用)をいつまで使うべきかがわかる「5ステップテスト」というチラシ/ポスターを作ったと紹介した。作るにあたり私の鼻息は荒かった。鼻の前に風車を置いたらぶんぶんと回るほどだ。なんたって子どもの未来がかかっているのである。

見た瞬間、悶絶するかわいさ。しあわせ。
チラシはむずかしい。まず、ぱっと見たときに、あら、なにかしら? と興味をもってもらわなければならない。ゆえに、イラストとデザイン(レイアウトともいう)が勝敗を分ける。まずは、かわいい絵。そして今回は、安全に関わる内容ゆえに、シートベルトの位置やジュニアシートが正しく描けるデッサン力のある人でなければならない。さらに作るにあたっては「ここ修正して」という細かなリクエストにもイヤな顔をせずにすぐに対応してくれる性格の持ち主でなければならない(ここすごく大事!)。
となると私のなかでは一択だ。手塚かつのりさんである。アイルトン・セナが活躍していたF1第二期に「ピットレポーター川井ちゃん」という四コマ漫画がバカ売れしたのは、彼の絵の愛らしさとオチのうまさ、そしてマシンを正確に描く力量があったからにほかならない。私は密かに「天才手塚」と呼び、一度お会いしたときの彼のやわらかい雰囲気に魅了され、ずっとお慕い申し上げていた方である。私は即座に連絡をした。
快諾! 感激!
そこからは夢のような時間だった。なんたって打合せの時は目の前でさらさらとイメージデッサンを描いてくれる。こ、こんな贅沢、いいのだろうか。その後も、ここをこう直してくださいと伝えると数時間後に伝えたとおり、いや、その3割増しの絵が送られてくる。ラフ案、ペン入れ、色付け。天才手塚の手から放たれたばかりの絵を誰よりも先に見ることができるなんてファン垂涎の貴重な経験。これぞ役得、神様のご褒美にほかならない。
このイラストの魅力を最大限引き出してもらうために、チラシのデザインは、児童書を手掛けるこれまた私の一押しのデザイナー脇田明日香さんにお願いした。そうして出来上がったのが、前回ご紹介したチラシである。子どもたち、これを見てちゃんとジュニアシートを使い、安全にクルマに乗るんだよ。
(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)
岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)