1. トップページ
  2. 連載
  3. けんかっ早いけど人が好き Vol.121 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

連載

けんかっ早いけど人が好き Vol.121 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)

投稿日時
2026/05/25 15:03
更新日時
2026/05/25 15:05

わかりません!

クルマ業界というのは、男女比が圧倒的に男性に偏っている。このところの自動車メーカーには女性役員をはじめ研究開発にも女性がいるけれど、それでもメーカーもアフターマーケットも編集部も圧倒的に男性が多い。これで困るのは、顔が覚えられないということだ。

罪悪感は抹殺したので、まったく関係ないネモフィラを載せておきます。

業界の男性陣にとって女性ジャーナリストは数名しかいないので覚えやすい。年齢、身長、髪型という要素があれば判別できるため、一度お会いした方からは笑顔で話しかけられる。それはありがたいのだが、こちらは「だれだっけ?」状態になることが少なからず起こる。その場所がメーカーのイベントであれば、そのメーカーの人だとわかるので、なんとなく話をしつつ記憶をさかのぼってたどりつけることもあるのだが、困るのはモビリティショーのような場所だ。メーカー、代理店、編集部など雑多な人が集まる。そこで「こんにちは!」と明るく声をかけられても、私の頭のなかには、?マークしか浮かばない。よく見る芸能人の名前だって最近は思い出せないのに、数年前にちょこっと会った人の名前や所属をどうして瞬時に思い出せるというのだ。もっと高齢者(まだ違うけれど)を大事にしようよ。

先日、実家に帰ったときのこと。クルマを降りたとたん、高齢男性に声をかけられた。「久しぶり!」

もちろんかたまった。だれ? 相手は続けた。「え、わかんない?」そう言ったまま、じっと私の顔を見る。思わず言いそうになった。わかんねーよ! だめだと思った相手はここでやっと名乗った。「○○編集部の××」だれだっけ。困ったなあ、思い出せない。結局、思い出せないまま別れた。なんだか悪いことしちゃったなあと罪悪感が残る。

しかし、思う。○○編集部とは30年以上前に一度、仕事をしたくらいだ。相手も30年前とは顔も姿も大きく変わっているはずだ。しかも出版社での再会ならともかく私の実家の前でばったりと会って「わかんない?」ってそりゃないだろう。罪悪感は抹殺することにした。私、悪くないもん。

ちなみに私は、久しぶりに会った人に声をかけるときは、必ず名乗ることにしている。「こんにちは、岩貞です!」と。相手に気まずい思いをさせないための処世術である。



(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)