産業潮流
モバイルバッテリー発火防止に全固体電池
- 投稿日時
- 2026/08/10 09:00
- 更新日時
- 2026/08/10 16:36
可燃性液体電解質なしの次世代電池
カバンの中でほかの荷物とぶつかったとき、うっかり床に落としたとき︱︱「もしも発火したら」。スマホ、ワイヤレスイヤホン、ハンディーファンなど、バッテリー付製品を持ち歩かない日がない現代において、誰もが抱くこの不安は、決して杞憂ではない。消防庁によれば、リチウムイオン電池等から出火した火災は2025年に全国で1297件に上り、601件だった22年から4年で倍増した。

そうした中、電池そのものの「構造」から安全性を問い直す動きが広がっている。その最前線に立つのが、全固体電池をいち早く製品化したBigblue Techだ。
従来型のモバイルバッテリーが火災を起こす理由は、燃焼に必要な三要素(燃料・熱源・酸素)が、電池内部にそろってしまうことにある。電解液には有機溶剤系の可燃性の液体が使われており、これが燃料になる。落下や衝撃で正極と負極を隔てるセパレーターが破損すると、両極が接触してショート(内部短絡)を起こし、局所的に急激な発熱が生じる。さらに温度が上がると、正極材の結晶構造が崩れて内部から酸素が放出される。ここに外気を絶っても燃え続けるリチウムイオン電池火災の厄介さがある。
それに対し、Bigblue Techが手掛ける全固体電池は電解質を100%固体化し、減量率として測定される質量損失を1%未満に抑え込む。これにより、たとえ内部でショートが発生したとしても、熱暴走から炎上へと至る連鎖を断ち切る。実際、同社が行った釘を刺して内部短絡を強制的に起こす試験では、従来型製品が激しく発煙・発火するのに対し、全固体電池は穴が開いても発煙・発火しなかった。
「日本国内の第三者機関による解析でも、『直ちに発煙・発火に繋がるような異常は確認されなかった』『分解時の電池内部に(電解質の)液体は観測されなかった』と報告を受けている」(同社 代表取締役の陳力峰氏)
■用途で選べる3タイプ防災用途にも
もっとも、全固体電池に関する世界共通の明確な定義はまだ存在しない。この「1%未満」という数値は、現在開発が最も進んでいる中国の団体基準(中国自動車工程学会が25年5月22日に定めた『全固体電池判定方法』〈T/CSAE 434︱2025〉)を参照したものだ。そのため、日本の基準はないものの、現時点で国内市場に同団体基準にならう全固体仕様のモバイルバッテリーを供給している事業者は同社のみであるという。
同社の全固体モバイルバッテリーは、用途に応じて3タイプがそろう。名刺サイズの薄型軽量モデル「PF8」(8000mAh)は、ワイヤレスと有線の両方に対応し、ホワイト・ブラック・パステルブルーの3色を展開する。容量を高めた「PF10」(10000mAh、=写真)と「PF20」(20000mAh)は、背面にUSB︱Cケーブルを2本内蔵し、別売ケーブルと併用すれば最大4台まで同時に充電できる。残量は1%単位でデジタル表示され、外出先でも残りを正確に把握できる。いずれも自己放電率は月1%未満で、従来型の約3~5%を大きく下回る。防災リュックに入れて長く保管しても、いざというときに確実に使えるという安心感は、非常用電源としての適性も併せ持つ。
ソーラーパネルを中心としたOEM・ODM事業で世界100か国以上に製品展開してきた同グループは今年、創業20周年を迎える。その開発・製造ノウハウを生かし、今後は全固体モバイルバッテリーにおいてもOEM・ODM展開をさらに力強く進めていく考えだ。 国内でもすでに引き合いはあり、ファン付きウェアなど冷却衣類のような高い出力が求められる用途への応用も検討が始まっている。増え続ける電池火災に構造から挑む試みが、どこまで身の回りに広がっていくか。その真価が問われるのは、これからだ。

代表取締役の陳力峰氏
(日本物流新聞2026年8月10日号掲載)