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産業潮流

日本郵船、データセンターは「浮かべる時代」に

投稿日時
2026/07/23 17:23
更新日時
2026/07/23 17:27

海水冷却で運用コストを圧縮

日本経済浮揚のカギを握るとされるデータセンター(DC)と造船分野。しかし、いずれにも課題がある。DCであれば用地や電源は既にひっ迫状態だ。山積する課題を、DCを「海に浮かべる」という大胆な発想で一挙に解決しようとするのが日本郵船だ。近未来のDC、その構想を追った。

2030年前後に実現を目指す大型の「洋上浮体型グリーンデータセンター」

「建てる時代から、浮かべる時代へ」

生成AIやクラウドサービスの需要拡大で、DCの必要性が爆発的に増している。一方、莫大な電力消費による環境負荷の増大、建設工事のコスト高騰や長期化、用地不足など、陸上でのDC建設には課題がある。

そんなデジタルインフラの常識に一石を投じるプロジェクトが動き出した。仕掛け人は創業141周年を迎える日本郵船だ。同社のイノベーション推進グループは「海」という未開拓のフィールドを活かし、DCを「海に浮かべる」次世代モデルの確立に挑んでいる。

洋上浮体型DCの強みは「安さ」と「早さ」にある。 まず、陸上のように広大な土地を確保する必要がない。さらに、液状化対策などの地盤改良や深くまで杭を打ち込む基礎工事が不要なため、初期費用が大幅に抑えられる。系統電力の拡張を待つ必要もないので、構築のリードタイムも劇的に短縮できる。

そして、最大のブレイクスルーが「冷却」だ。DCの消費電力の多くはサーバーの冷却に使われる。特にAI向けサーバーでは発熱量が飛躍的に高まっており、効率的な冷却が最重要課題となっている。洋上浮体型DCでは豊富にある自然冷熱の「海水」を活用することで、高い省エネ性能を実現する。

「実証実験の結果、運用コストが圧倒的に安くなることが分かってきている。これは単純に海水を使ったからというわけではない。当社が全世界で900隻以上の船を日々運航し、海水でエンジンを冷却する技術や設備を24時間365日維持・管理する体制を構築してきたノウハウがあるからだ」(同グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 洋上データセンターPJ担当の森福将之氏)

波による揺れや塩害についても、同社にとっては「想定内」だ。実際の船上でも長年サーバーや精密機器が問題なく稼働しており、実証実験でも揺れは「震度1以下」の非常にゆっくりしたものであることが確認されている。

■海事産業全体の浮揚の起爆剤に

一方、同社は自前主義にこだわらない。3月に横浜港で稼働させた再エネ100%で運用する世界初の洋上浮体型DCでは、NTTファシリティーズやユーラスエナジーホールディングス、三菱UFJ銀行、横浜市など、各分野のトップランナーと強力なパートナーシップを結んだ。同チーム 課長代理の大東鷹翔氏は「当社には長年培ってきた海技力がある。一方で、DCの知見はない。だからこそオープンイノベーションを大切にしている」と率直に語る。

こうした姿勢は、洋上浮体型DCの商用化をスピード感をもって実現していくための戦略でもある。同社は2030年前後に、洋上風力発電に近接させた大型の「洋上浮体型グリーンデータセンター」の実現を目指す。こうした取り組みが実現すれば、DCの供給課題の解消に加え、地方創生など国を挙げて取り組んでいる社会課題の解消にもつながるとみる。

「広大なスペースや安価な再エネが調達できる『地方・遠隔地』のポテンシャルは高い。さらに、浮体構造物の継続的な需要は国内造船業の活性化にもつながる。我々の業界は波が激しい側面がある。洋上浮体型DCが造船所に安定した仕事を提供することで、海事クラスターの持続可能な発展に寄与したい」(森福氏)

最終的には洋上浮体型DCというパッケージを海外にも売り出す構想だ。大東氏は「陸上インフラが脆弱な国・地域にも市場ニーズがある」とみる。海洋大国・日本発の新たなイノベーションが、今まさに出航の時を迎えている。

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左から日本郵船 イノベーション推進グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 洋上データセンターPJ担当の森福将之氏と同チーム 課長代理の大東鷹翔氏

(日本物流新聞2026725日号掲載)