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産業潮流

JIMTOF2026開幕へ 最新トレンドと売れ筋工作機械に迫る

投稿日時
2026/10/08 13:07
更新日時
2026/10/08 14:02

史上初の2兆円の大台超えに突き進む工作機械市場。その好況期に開幕するJIMTOFは市場をさらに押し上げることになるのだろうか。勢いづく需要業種は少なくない。AI・半導体・データセンターに、エネルギー・インフラ向けはその筆頭だろう。低空飛行してきた自動車業界は上向く兆しを見せている。売れ筋工作機械とターゲットに注目してみた。


半導体、AI・DC向け加工機


旋盤が売れに売れている。日工会が9月発表した2026年1~6月期の機種別受注実績によると、NC旋盤の受注は3764億円。前年比153.9%という高い伸びを見せた。

売れている要因は複数ある。ひとつは半導体の検査工程で使われるプローブピンの製造向け需要だ。生成AI向けの巨大な半導体チップや、高密度な積層メモリを検査するためには、1つの検査装置に数万本〜数十万本ものプローブピンをびっしり並べる必要がある。その加工は精密加工が可能な自動旋盤が担う。

またプローブピンは数万回~数十万回通電テストを繰り返すと摩耗するため、定期的な交換が必要な消耗品だ。半導体の稼働率が上がるほどピンの消費量が増えるため、ピン製造メーカーは多数の自動旋盤を並べ24時間フル稼働で増産を続けており、それが工作機械の販売増に直結している。

このジャンルで好調なのがスイス式(くし刃型)精密自動旋盤メーカー。ツガミは「P013」、「P033」など、コンタクトプローブや時計部品などの超小径・微細部品の量産に特化したシリーズを展開しており、中国や台湾をはじめとする半導体サプライチェーン市場で高い受注を獲得している。

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プローブピン向けに好調なツガミ「Pシリーズ」

シチズンマシナリーやスター精密も、半導体検査用のテストソケット向けピン加工用として受注を大きく伸ばしている。1台の機械で、ピンの先端を尖らせる旋削加工から、スプリングを仕込むための微細な穴あけまでを一度に完結できる複合加工機能が評価されている。

もうひとつの需要はAI、データセンター向け需要だ。データセンターにおける大きな課題となっているのはサーバーの熱対策。その冷却システムに大量に必要となるのがバルブやポンプの金属部品、液体配管用の精密な金属製継手だ。その多くは削り出し加工によって製造されている。

これらの増産需要に対し、前出の3メーカーに加えヤマザキマザックやオークマといった大手の複合加工機が、北米市場をはじめ世界中で受注を大きく伸ばしている。

加えて為替というファクターも大きな影響を与えている。かつては「高性能だが割高」というのが日本製工作機械への評価だった。だが円安により「高性能かつ手に入れやすい」という状況が続いている。

多くの識者が「2030年までは伸長し続ける」という成長市場において、メイドインジャパンの旋盤への需要はさらに高まるだろう。




エネルギー、航空・防衛産業向け大型機


世界的な産業構造の変化と地政学リスクの影響を受け、大型工作機械の需要が高まっている。データセンター投資や半導体製造装置の需要爆発、国際情勢の緊迫化を背景とした防衛ニーズ、拡大するエネルギー産業からの需要が強力な追い風となっている。。

これらの航空宇宙・防衛、半導体、エネルギー分野では、数メートルに及ぶ巨大なギヤや軸受、あるいは重厚な金属の塊から3次元の複雑な形状を高精度で削り出すケースが多い。そのため、必然的に超大型・高機能な工作機械への特需が生まれている。

過去最高の受注残を更新し続ける航空機産業向けに好調なのが、牧野フライス製作所の「MAG」シリーズだ。同機種は熱による機械の歪みを完全に制御しながら超高速で削り落とす能力が高く評価されている。昨今は、この高速加工技術を応用し半導体製造装置向けの大型アルミ真空チャンバーなどの精密加工領域からの需要もキャッチしている。

チタンやニッケル合金といった難削材の重切削、風力発電向けなどの超大型加工の領域ではオークマの門形MC「MCR」シリーズが人気を博している。独自の強靭な主軸と機械自体の圧倒的な剛性によってブレを極限まで抑え、航空宇宙のエンジン部品や防衛装備品、風力発電機のギヤボックスや大型ベアリングといった重要保安部品を力強く正確に削り出す能力で市場を独走している。

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オークマの門形MC「MCR」シリーズ

エネルギー関連の巨大変速機や船舶・建設機械などの超大型・高剛性加工で不動の地位を誇るのが、芝浦機械の門形MCや大型横中ぐりフライス盤である。同社の機械は、日本のインフラを支えてきた歴史に裏打ちされた強固な鋳物構造をベースに、洋上風力発電用ギヤボックスのケーシングなど、数トンから数十トンに及ぶ重量級ワークの重切削で圧倒的な安定感を示している。

北米市場では三井精機工業の「HU」シリーズや「Vertex」が好調だ。ジェットエンジンのブレードやインペラー、あるいは高精度なスクリュー加工において防衛・宇宙大手サプライヤーからも絶対的な信頼を獲得している。

 これら旺盛な需要に対し、各社に求められているのが「納期の短縮」だ。大型機はともすればオーダーメイドに近い機械づくりが求められ、必然的に納期も長くなりがちだ。大型機の生産現場では、これまで以上に営業、技術、現場の高度な連携が求められている。




AMは万年元年を打ち破るか

ドローンからうどん自販機まで活用拡大


「VR元年」と「AM元年」は、もはや製造業・IT界隈における“2大・終わらない元年”である――。

毎年のように「本格普及へ」「試作から量産へ」と謳われながらも、いざ現場に持ち込めば、高価な材料コストや後工程の壁にぶつかり、「結局、切削のほうが早いし安い」とため息をつかれる。それが、日本のモノづくり現場におけるAM(金属積層造形)の偽らざるリアルだった。

しかし、日本AM協会の澤越俊幸専務理事は「表立ってPRされてはいないものの、現場では着実に実用化が進んでいる」と明かす。防衛強化で急伸する国内ドローンの一体構造筐体をはじめ、生産終了したレトロな「うどん自販機」の補修部品、さらには自動車のアフターパーツ(社外品)など、大手企業以上にユーザーに近い現場で「実部品」としての採用が拡大しているからだ。「試作やデザイン確認の域を脱し、水面下では普及爆発に向けたマグマが着実にたまっている」(澤越氏)。

こうした現場の熱量に呼応するように、「JIMTOF2026」では有力工作機械メーカーがこぞって実用的なAM複合機を解禁する。

ジェイテクトが世界初出展するレーザークラッド複合研削盤「LC2000」は、表面処理から仕上げ研削までを1台に集約。最大2ミリ程度の肉厚被膜を形成することで摩耗・欠損部の肉盛り再生(リペア)に対応し、部品の廃棄を防ぐ。また環境規制が厳しい六価クロムを使わずに高密着な金属皮膜を形成でき、脱クロム対策にも貢献する。

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ジェイテクト・レーザークラッド複合研削盤「LC2000」

■2012年のブームのトラウマ

ホーコスは、金属積層と切削加工を1台に融合させたAM複合加工機「NX70 DUO version AM」を発表。独自の「水溶性iMQL加工」により、切削油剤のベタつきや異臭を抑え、作業環境を劇的に改善しながら加工プロセスを高効率化する。

ヤマザキマザックのハイブリッド複合加工機「INTEGREX i-450S NEO AM」は、高精度なレーザー式金属積層造形技術を採用。複雑形状や薄肉・微細構造の造形において高い性能を発揮する。

長年続いた「万年元年」がついに幕を閉じる予感を抱かせるが、澤越氏はあえてこう釘を刺す。

「2012年のAMブームの際、安易に導入した中小企業で『使い物にならない』と機械がホコリをかぶってしまった苦い経験がある。これが『AMはまだ早い』という固定概念を生んでしまった」

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ヤマザキマザック・ハイブリッド複合加工機。写真は「INTEGREX i-350 NEO AM」

高市政権下で産業振興予算が大きく拡充されている今だからこそ、かつての反省を生かす必要がある。「単なる盛り上がりで導入するのではなく、本当に効果があり、確実にもうかる用途へ地道に適用していくことが不可欠だ。2012年の轍を踏めば取り返しがつかない。普及爆発の直前だからこそ、冷静かつ慎重な社会実装が求められている」(澤越氏)。




半導体・航空宇宙成長市場へ軸足

素材別の加工提案が相次ぐ


北川鉄工所が「脆性材・難削材加工の課題解決」ゾーンを、山善が「脆性材加工コーナー」を設けるなど、JIMTOF2026では改めてガラスやセラミックスなどの脆性材加工がクローズアップされそうだ。半導体製造には欠かせないこれらの素材は、硬いうえに割れやすく、加工難度が高い。従来から様々なソリューションが提案されてきたが、AIデータセンターの盛り上がりや国の戦略17分野などを受けて、半導体領域を成長の柱に据えるプレーヤーの動きが活発となっている。

北川鉄工所は3つのゾーンに「脆性材・難削材加工の課題解決」を設け、低把握力チャック「VSPシリーズ」などを紹介する。3爪から6爪にアップグレードし、工作物を傷つけずに優しく掴めるのが特長で、薄い円盤形状ワークの研磨や磨き工程に適する。一方、山善はガラスやセラミックス、SiCなどの脆性材加工向けに、高性能濾過フィルターや超音波ホルダを紹介。自動化セルの実機展示のほか、脆性材の悩みにも応える構えだ。

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北川鉄工所の低把握力チャック「VSPシリーズ」

機械メーカーからの提案も活発だ。「(先端パッケージ向けの開発を)前倒しで展開しようとしている。設計人員の増強や生産体制の拡充も進めている」と伊藤暁社長が話す岡本工作機械製作所は、脆性材加工における多工程の段取りレス化に対応したグラインディングセンタを出展する。

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岡本工作機械製作所のグラインディングセンタ「UGM64GC」

牧野フライス製作所もレーザー、研削、放電の3種類によるセラミックス加工事例を提示。10月30日13時からは会議棟6階でワークショップ「半導体製造装置部品への最新ソリューション」も開く。アルミやステンレスを含む多岐にわたる加工事例や生産性向上機能を紹介する。このほか、ホーコスやニデックオーケーケーも脆性材料向けの5軸・複合加工機を出展し、精度と生産性を両立した加工ソリューションを提案する。

■複合材の加工に向けた提案も

半導体市場は顕著だが、新たな成長産業を捉えようとする動きは他にもある。その一つが、航空宇宙分野であり、機体の軽量化を支えるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の加工ニーズに応える提案も広がる。SHODAは樹脂加工専用NCルータ「NCP5000」を出展。樹脂やCFRP、生セラミックなどの切削を提案する。

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SHODAの樹脂加工専用NCルータ「NCP5000」

PCD工具のカネックス刃物工業は、CFRPやスーパーエンプラなど加工が難しい材料が増えているとし、ねじれ溝のない独自形状のダイヤモンドドリルなどを訴求する。バリが出ない工具を取り扱うギケンも、CFRPやCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)などの複合材向けの専用ドリルをそろえる。

こうした動きをコーティング装置メーカーも捉える。独・CemeConは複合材料の加工向けに、ダイヤモンドコーティング「CCDia AeroSpeed/FiberSpeed/MultiSpeed」を提案。マイクロ結晶による強固な密着力で厚膜化し、高パフォーマンスや長寿命化など特長ある工具製造の実現を後押しする。

人手不足や人件費・原材料費の高騰など、課題が山積する製造業。モノづくりの現場を守るためにも、成長市場へ軸足を移す動きが活発化している。そうした流れを後押しする素材別のソリューションがJIMTOF2026では随所に打ち出されそうだ。




歯車加工――弱点克服するスカイビング


前回展で注目を集めた歯車加工がここにきてまた注目が集まりそうだ。その理由の1つはEVの静音化ニーズがある。自動車は近年、開発の方向性が定まらず業界で設備投資が進みづらかったが、ハイブリッド車が本命とされ投資が動き出したという声を聞くようになった。

もう1つはヒューマノイドロボットの生産拡大にともない歯車需要の急拡大が見込まれる。この分野に詳しい歯車加工機メーカー、清和ジーテックの達俊彦社長はロボット1体につき数百の歯車が組み込まれると言う。モーション技術企業のシェフラ―は8月、複数のヒューマノイドメーカー向けに成形波動ギヤボックスの量産を来年始めると発表した。このギヤボックスはヒューマノイド製造コストの約半分を占めるアクチュエーターの主要部品で、小型化と高い減速比、精密な動作伝達などが求められるという。

こうした歯車の量産にスカイビングマシンが有効となりそうだ。カシフジ製「KPS30」初号機を活用しロボット向けギヤを製造する岡本工機の菊地正人社長は、その採用理由に生産性の高さを挙げる。

「加工効率がギヤシェーパーを使った場合の4~5倍くらいあるので、できるものはすべてこの機械に回している」

複合化が進むマシニングセンタ(MC)でもギヤ加工はできるが、「専用機ほどの剛性がない。10個、20個単位の加工ならMCでもいいが、ロット500くらいを3連続で流すのでギヤスカイビングが重宝する」と話す。

もっともスカイビングマシンに弱点はある。径の異なるギヤが近接する2段ギヤでギヤ間が狭い場合はカッターが干渉する。また高価な専用カッターは消耗が激しい。

その後者の課題を克服したのはライスハウァーだ。「新たに開発した高剛性機械と、自社開発の新しい工具技術を組み合わせることで工具寿命を大幅に向上した」と日本法人のサンドロ・アルマカ氏は話す。JIMTOFに出品する、昨年のEMOショーで披露したハードスカイビング加工機「RS300」はアジア初公開だ。

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アジア初公開となるライスハウァーのハードスカイビング加工機「RS300」

カシフジは今展で神崎高級工機製作所とタッグを組み、ホブ切り→ギヤスカイビング→歯車面取り→焼入れ→歯車研削→ホーニング→ポリッシュの流れを提案する。人型ロボット指関節を想定し「KPS10型ギヤスカイビング盤」(モジュール1・5まで加工可)と「KF40型CNCホブ盤」(同0.5まで)を開発した(KPS10は今展で披露予定)。どちらも小径歯車に対応し、「将来的に電動車用のパワーユニット使用されるステップドピニオン(2段ギヤ)の小歯車加工の需要が寄せられることを想定した」(樫藤剛司副社長)と言う。

今回出展しないが、グリーソンアジアもロボットの小径歯車加工を睨んだパワースカイビング盤「80PS」(同1・5まで)を上市しており、スカイビングマシンは小型がトレンドのようだ。

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カシフジの「KPS10型ギヤスカイビング盤」