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オピニオン

全国鐵構工業協会 永井 毅 会長(永井製作所社長)

投稿日時
2024/12/11 11:26
更新日時
2024/12/11 11:29

全国を1つにまとめ「品質と価格の安定を目指す」

1973年に創立し、全国2千社以上の鉄骨加工業者が加盟する(一社)全国鐵構工業協会。永井毅会長は「製鉄所から受け取った鉄鋼に息吹を吹き込み、構造物を構成する高品質な鉄骨を造るのが我々業界の使命」と言う。現況や課題を聞いた。

ながい・たけし 9代目の会長。プライベートでは最近は出張が多くて数は減ったが、休日に穏やかな有明海での釣りを自分の船で楽しむ。「運転するのが楽しいのであまり釣りをしている時間はありませんが」と笑う。

――貴協会の役割は。

「当協会が出来る前の時代は見よう見まねで造られることが多かった鉄骨製作の技術を確立し、それを広めるという役割でスタートしました。加えて全国組織として業界が1つになることで品質と価格の安定を目指してきました。工場認定制度については、以前は自主認定でしたが、現在は『鉄骨製作工場の大臣認定制度(使用鋼材の板厚16㍉以下のJから無制限のSの5段階)』となり、これにより品質の信頼性は大幅に上がり、鉄骨製作工場の地位向上に繋がっています」

――鉄骨業界には(一社)鉄骨建設業協会(鉄建協)さんもありますね。

「鉄建協さんは元々、橋梁を対象にスタートされ、建築もカバーされてきました。我々はその組織下で活動するのでなく、建築専門の企業だけで集まり専門性を高めようと独立しました。47都道府県の各地に47の組合があり、それをまとめる9の支部があり、我々はそれを取りまとめる組織になります」

――日本の鉄骨業界の強みは。

「日本は海外と比べると地震が多いため、建築物は非常に頑丈だと思います。大きな地震を経て法律が変わり、我々はそれに対応する形で鉄骨づくりに改良を重ねてきました。強度に対しては設計事務所さんからのニーズが高く、検査も義務づけられています。海外に行くと、よくこんな構造が成り立つなというくらい細いものを見ることがあります。結局、建築のスペックは設計事務所さんが作り、最終的に製品検査も設計事務所さんが行い、建物としてはゼネコンさんが保証する形です。なのでPL法(製造物責任法)は我々を対象としていません。そういう事情もあり、我々が納める建築部材の受け入れ検査はむしろ非常に厳しいです」

――鉄骨業界の最近の業況は。

「過去最も需要が高かったのはバブル期です。その頃は年間約1200万㌧を我々が供給しました。その後、バブル崩壊とともに建設業は全般的に落ち込み、リーマンショック前でおよそ700万㌧に、リーマンショック後で400万㌧を切りました。それから少し盛り返し、500万㌧強に増えましたが、ここにきてまた400万㌧割れを起こしました。新聞報道にあるように都内の大型物件の計画見直しや、東北の半導体関係の工場も建設が止まったりしています。建築費が上がっていることに伴う計画の見直しなどが響いていますし、背景には働き方改革も関係していると思います。我々も今までは残業でこなしていた部分がありますが、それができなくなり供給量が減っています。現在の供給能力はおそらく500万㌧前後だと思いますが、以前の様な瞬発力はなくなっていると思います」

■ピークの4割の組織に

――貴協会の会員構成企業数は2152社に減りました。

「そうですね、ピークは5千社近く。年間約1200万㌧造ったバブル期です。建設業自体それだけ減っているということです」

――小規模の企業からどんどん廃業されるような感じですか。

「いや、そうとも限りません。けっこう老舗のところも減りました。当時のHグレードの会社で今でも残っているのは、およそ3分の1くらいでしょうか」

――永井会長が社長を務める永井製作所さんはHグレードとその上の最高位・Sグレードの認定を受けています。Sグレードの認定は相当難しいですか。

「難しいですね。全体の1~2%くらいです。HグレードからSグレードへのハードルが非常に高いです」

――鉄骨業界の課題はありますか。

「やはり人材不足があります。工場で働く人、事務所で管理する人、図面を書く人、いずれも人材不足にあり、採用募集をかけてもなかなか集まりません。今春、ようやく鉄骨製造業も特定技能外国人の業種指定が内定し、海外人材を受け入れられるようになったので少し胸を撫で下ろしているところです。正式には10月以降に特定技能外国人が採用できるようになりました」

――どの業界も人手不足ですね。

「もっと女性が働けるような職場にしていかないといけません。我々の業界は鉄を扱うので危険だと認識され、女性が入りづらい業種ではあります。だから当社もそうですが、まず女子トイレを作るところから始まります。あと、自動化がなかなか難しい業種でもあります。建物はほとんどすべて形が違いますから、それを構成する部材も違います。その部材である梁や柱、受け材の長さ、サイズが違えば、組み付ける位置も変わります。けっこう複雑です。私の持論ですが、これだけ融通のきく工場をもっているのは我々の業界だけだと思います。同じ部品を何万個も作るのならオートメーション化できますが、そうはいきません。形鋼・パイプの切断、穴開け、開先加工といった機械の自動化は進みますが、それを組み合わせて使いこなすのはやはり人になります。そういう人材の確保を含め、人手不足に対応していく必要があります」

――鉄の将来性についてはいかがですか。

「建築材として木材に光が当たりがちですが、鉄はリサイクル率が高く、およそ9割を誇ります。鉄骨で建てられたビルは解体してほぼリサイクルできます。長期的な視点での環境負荷を考えれば、リサイクル率が高い鉄をもっと使ってくださいと言いたいところです。世界で見れば、東南アジア、南米、アフリカなど1人あたりの鉄の使用量が先進国にはるか及ばない国がまだまだたくさんあります。将来においても、鉄は社会のインフラを支える重要な材料であり続けると考えていますが、必要な量を賄っていくためには、スクラップを使った電炉の鋼材だけでは足りず、環境負荷を減らしつつ高炉でつくらないと追いつかないと思います」

(日本物流新聞2024年12月10日号掲載)