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AM EXPO東京、デザインから突破口を

投稿日時
2025/05/01 09:00
更新日時
2025/05/01 09:00
会場の様子

SUBARU コンセプトカーに採用

AM EXPO 東京」が416~18日にかけて東京ビッグサイトで開催され2627人が訪れた。主催する日本AM協会の澤越俊幸専務理事は「工業製品だと、面粗度や品質保証、耐久性などAMが不得意とするところを問われがちだ。デザイン・意匠であれば、AMが得意とする設計の自由度などが発揮できる。消費者に受け入れられればそれが成功例になり、別の角度から突破口が開ける」とし、それらを体現するSUBARUやデジタルハリウッド大学の紹介を積極的に行ったほか、造幣局が将来の通貨への適用も視野にマスター金型「種印(たねいん)」の破損部の肉盛修理の実施例を展示していた。


SUBARUは東京オートサロンに出展した「OUTBACK」のコンセプトカーで採用したグリルとオーバーフェンダーの一部でのAM活用事例を紹介。デザインごとに射出成形(インジェクション成形)用の金型を用意するのは難しく、現在は選択できるグリルが一種類しかない。AMを活用すればデータをサーバーに置いておき、ユーザーが選択した好みのデザインを3Dプリンターでその都度、セミオーダー的に製造できる。また、完成車メーカーが用意したデザインだけでなく、ユーザー自らが3Dプリンターのデータをアップロードして造形する時代が来る、と考えオーバーフェンダーにその部品を取り付けられるスペースを用意。ユーザーは自分で作った意匠部品をそこに設置できる。

これがSUV部門で最優秀賞に輝いた。同社クリエイティブ・ディレクターの須崎兼則氏は「製品が均一でないといけない、表面は平滑でないといけない、量産意匠部品に3Dプリンターは使えない」などという固定概念は「呪いであり、その呪いを解きたい」と訴える。「今の設計基準やテクニカルスタンダードはインジェクション成形時代のものだ。これをAMに合わせて変えていかないといけない」と話した。デジタルハリウッド大学では、拡大するエンターテインメント産業でのAM活用を模索。ドラゴンボールやワンピースといった作品であれば、市場規模が大きくフィギュアやコスプレグッズなどの関連商品を、金型を作って量産できる。「金型を作るだけの市場規模はないが、コアなファンがいるコンテンツはこれまで同人という市場が吸収してきたが、我々はAMを使って形にしていけないかと考えている」(星野裕之教授)と話す。同大学の生徒が3Dプリンターで制作したコスプレグッズを身に着けたコスプレーヤーが会場を練り歩き、注目を集めていた。

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デジタルハリウッド大学の学生が3Dプリンターで作ったコスプレグッズを身につけたコスプレーヤー

■造幣局、マスター金型の修繕に

造幣局では、マスターとなる金型「種印」を作り、それを転写した金型「極印(こくいん)」で貨幣を量産する。種印はマシニングで大まかに作ったのち職人の手で2カ月程度かけて仕上げる。種印が破損すると、大きな時間とコストのロスが発生する。破損の発生した「史跡名勝天然記念物保護100年記念2020プルーフ貨幣セット」の種印でAMによる肉盛補修を実施。極印への転写を成功させた。同局研究所研究開発課係員の關根陸斗氏は「通常貨幣の場合は、種印も複数個作っているのでカバーは出来る。まずは一点ものメダルで試し成功した。種印を少なくできる可能性もあり、通常貨幣でのAMの活用も視野にいれ、機械の選定なども行っている段階」とした。

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造幣局  AMで肉盛修理した「種印(たねいん)」

重工業でも活用事例があり三菱重工業ではガスタービン発電機の一部に使用された。ガスタービンは水素、アンモニア、天然ガスなど使用するガスが異なっても多くのパーツや機構は共有で使えるが燃焼器はガス毎に形状を変えないといけない。構造も複雑ゆえに、AMが活用された。

ティーケーエンジニアリングはパウダーベッド方式の金属3Dプリンターを設備し、自社部品の製造を従来加工から積層造形に切り替えている。高周波焼入れ用コイル、切削工具のホルダーに続き、今展では内面研削加工用のクーラントノズル「AMノズル」を目玉にした。AMノズルには上部と下部に細かな穴が曲線に沿ってあいている。クーラントはノズル上部から冷却用として吐出し、下部からは砥石洗浄用に吐出する。ノズルは円筒形の砥石をぴったり覆う形で、「加工領域の全体の冷却と砥石の目詰まり抑制を確実に行える」と言う。現在テストしながら、研削盤メーカーやユーザーに提案している。ジェービーエムエンジニアリングはマスターキャムのアドオンで同社オリジナルの「LUNA」を訴求。異種材の接合が可能になるため、金属製品の補修や既存物への付加造形でコストダウンや納期短縮を実現する。大同特殊鋼は積層造形用ワイヤで新たにラインナップされた硬化肉盛用DHW450HVクラスCo非含有・ダイカスト補修)を提案。担当者は「自動車メーカーから、まずは試してみようという引き合いは増えている。積極的なメーカーもあれば、まったく興味のないところもあり自動車産業も手探り状態だ。だが動き出したら大きな潮流になる」(担当者)と期待感をにじませた。

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ティーケーエンジニアリングの「AMノズル」(中央上部)



(日本物流新聞2025425日号掲載)