1. トップページ
  2. ニュース
  3. 髙丸工業、新キャリブレーションで電研と協業

髙丸工業、新キャリブレーションで電研と協業

投稿日時
2026/05/21 09:00
更新日時
2026/05/21 09:00
アルマイト製ArUcoマーカーを手に髙丸工業・髙丸泰幸専務(左)と電研・桐島豊常務

クロムフリー電解研磨技術を活用

クロムフリー電解研磨技術を持つ電研と、産業用ロボット開発を手掛ける髙丸工業は、遠隔溶接システム「WELDEMOTO」の精度向上に向けた技術協力体制を構築した。単なる製品改良にとどまらず、ファミリービジネスの次世代を担う「アトツギ」同士による共創のモデルケースとして、新たなビジネスのあり方を提示する取り組みでもある。


髙丸工業が開発した「WELDEMOTO」は、カメラ画像とロボットの動作シミュレーションを組み合わせ、パソコン上のドラッグ&ドロップといった直感的な操作で、未経験者でも遠隔から溶接作業を行えるシステムだ。3次元データを必要とせず、実機の動作結果を事前に確認してから指令できるため、通信遅延に伴うオーバーシュートや干渉といった遠隔操作特有のリスクも回避できる。

一方で、開発過程では課題もあった。ロボット本体とカメラの位置関係を特定するキャリブレーションにおいて、「ArUcoマーカー」を用いた手法を試みたが、紙やシールでは汚れや欠損による精度低下のリスクが避けられなかったという。

「工業用途では安定性が最優先です。紙やシールでは再現性に課題があり、その手法は一度断念しました」(髙丸工業・髙丸泰幸専務)

こうした課題に対し、中小企業庁主催「アトツギ甲子園」を通じて接点を持った電研との連携が新たな解決策を生んだ。電研のアルマイト加工技術を活用し、高耐久かつ高認識性を持つアルミ製のArUcoマーカーの開発に乗り出した。

「意匠用途で培ってきたアルマイト技術が、ロボット分野で活用できるとは想像していませんでした。アトツギ同士の連携だからこそ実現できた展開です」(電研・桐島豊常務)。

 の技術の核となるのが、アルマイト前処理としての電解研磨だ。電解研磨は電気化学的に表面を平滑化するため、条件制御により均一で高品位な下地処理が可能になる。

一般にアルミの電解研磨には六価クロムが用いられてきたが、環境規制の強化により使用が制限されている。電研では、独自にクロムフリーの電解研磨技術を確立。特許こそ取得していないものの、複雑形状にも対応できる実用レベルの技術を持つ企業は極めて限られるという。

■アトツギによる新たな経済発展を

「クロムフリーの電解研磨を用いて、ArUcoマーカーのような精度と形状を両立させることができるのは当社の強みです」(同)

このアルミ製マーカーにより、キャリブレーションの安定性は大幅に向上する見込みだ。これが確立されれば、「WELDEMOTO」のポータブル化にも道が開ける。建設現場など高所・危険環境での溶接作業の遠隔化も現実味を帯びてくる。

さらに両社は、この高いロバスト性を持つ認識技術を、屋外環境や悪条件下でのカメラ認識基盤として、ある国家的プロジェクトでの応用も視野に入れている。

今回の協業のもう一つの特徴は、「アトツギ」という共通の立場にある経営層同士の連携だ。

「多くのアトツギは、自ら望んで家業に戻ったわけではありません。それでも、だからこそ新しい価値を生み出そうとする。こうした取り組みを発信することで、各地で同じような連携が生まれ、ビジネスが面白くなる流れをつくりたい」(高丸専務)



(日本物流新聞2026515日号掲載)